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野生生物犯罪に取り組む国際努力を輸送・物流セクターが支援

2015年01月28日
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大きな課題:港に積まれる輸送コンテナ
© Daniel Foster / Creative Commons

【タイ、バンコク発 2015年1月28日】

 サプライチェーンの強化を図り企業理念を高めると同時に、野生生物の密輸行為を防止するべく実用的な解決策を探ろうと、税関職員、サプライチェーンの専門家、および野生生物の専門家たちと協議をおこなうワークショップのために、輸送・物流セクターの代表者らがバンコクに集合した。

 主要な物流企業、航空企業、航空貨物企業や輸送関連企業の代表者らは、米国国際開発庁(USAID)、野生生物の不正取引に関する分析と対応措置の優先順位設定(TRAPS)プロジェクトの支援を受けた、トラフィックと世界税関機構(WCO)による2日間にわたるワークショップに参加した。

 輸送は国際取引の根幹であり、野生生物および野生生物製品の密売人は、違法な商品を密輸するために物流、陸上、空輸、および海上運送業者に大きく頼っている。その点から、輸送・物流セクターの企業はサプライチェーンにおける重大な危険要因を見極め強化する重要な役割を担うことができる。

 象牙の取引は、不正取引が種にどれだけ悪影響を与え得るかというほんの一例に過ぎない。アフリカゾウの生息国では、2万頭以上のゾウが毎年殺されている-違法な象牙を取引する組織的なネットワークの貪欲さが招く大量殺戮である。このような環境犯罪は、法の支配を損ない、世界の自然遺産を破壊している。また、これら貴重な資源に依存して暮らす地域社会にとって多くの経済的機会を奪っている。

 「トラフィックとWCOは共に、野生生物製品の不正取引を防止・抑止するため、輸送セクターと思い切った新たな取り組みに先陣を切り着手している」と、TRAPSのプロジェクト・リーダーであるトラフィックのNick Ahlers(ニック・アーラース)は言う。

 「ゾウ、トラ、サイやその他象徴的な種の横行する密猟は世界的な非難を浴びており、今や輸送セクターは、絶滅危機にある野生生物や野生生物に関連した製品の輸送を全世界で防止するべく、その結集された力を使うときである」

 WCOは野生生物犯罪を食い止める国際努力における主要な機関であり、不正貨物の検出・検査において最前線にいる輸送・物流企業(民間セクター)の橋渡し役としての役割も担っている。

 「国際取引の膨大な量を考えると、税関は野生生物の不正取引に対抗するために情報や諜報が頼みの綱です。そうした中、増大している危機に対する協調的国際努力を支える上で、公正な輸送セクターが最大限の力を発揮できるような手段を私たちは講じる考えです」と、WCOの施行・順守官(Deputy Director for Enforcement and Compliance)、Leigh Winchell(リー・ウィンチェル)は言う。

 日々、何百万もの貨物コンテナが陸上や海上運送サービスを使用し輸送されていることを考えれば、課題の大きさは相当なものである。報告によると、2014年にはおよそ3,800万tの航空貨物が輸送されており、2018年までに世界のコンテナ港での20フィートコンテナ取扱量は、8億4,000万個を超えると予想されている。

 世界中を行き交う山のような貨物を前にして、税関、その他の法執行機関や関係機関は難しい課題を抱えている。現在、禁制品を積んだコンテナの差し押さえのほとんどは、信頼できる情報と合わせた標的リスク評価と無作為抽出の併用で実施されている。

 トラフィック/WCOによるワークショップは、英国王室ウィリアム王子が掲げる「United for Wildlife(野生生物連合)」の下、輸送セクターとの連携を目的にタスクフォースを設立した、との発表直後に開催された。バンコクでのワークショップの成果は、この新設されたタスクフォースと共有される予定である。

 「野生生物の不正取引を撲滅する道を模索している密猟危機に対し、国際的な輸送業界がいかにして協調的国際対応の一助を担っていくのか期待を寄せています」と、W. Patrick Murphy(W. パトリック・マーフィー)駐タイ米国代理大使は語った。

2015年01月28日
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