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米国政府が押収象牙在庫を処分

2013年11月15日
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処分されようとしている押収象牙 ©USFWS Mountain Prairie

【米国、デンバー発 2013年11月15日】

 米国政府は、過去25年以上に亘り国の法執行活動により蓄積されたアフリカ/アジアゾウの押収象牙6tを、公の場で処分した。全形象牙および彫刻品、装飾品やその他多種の象牙製品は、コロラド州デンバーのロッキーマウンテン・アーセナル国立野生動物保護区(Rocky Mountain Arsenal National Wildlife Refuge)で粉々にされた。連邦政府の高官、州政府の役人、米国議会の代表者、有名人やジャーナリストが、立会人として参加するために招待された。

 違法な象牙(押収象牙)を処分するという行為は、米国が、特にアフリカのゾウの個体数に影響を及ぼしている象牙の取引やその利益を認めない、という明確なメッセージを発信することを意図している、と米国魚類野生生物局は語る。

 トラフィックアメリカのシニアダイレクターであるクロフォード・アランは、この断固たる行動を示した米国を称賛し、「この行動は、象牙の国際取引を終息させるための活動が、最も緊急性のあるものであり、そのための対策に米国が関与していることを、他の国々に強くアピールした」と言う。

 処分する象牙について、完全に独立した監査体制が理想的ではあるが、米国魚類野生生物局は、押収象牙の在庫の記録、その保管場所と記録の管理に関する政策と手続きの書類を、提供した。さらに、米国魚類野生生物局は、保管過程を動画で記録するほか、保管施設と記録システムの確実性を確認するために、多くのNGOやメディア、他の政府機関の代表者がその記録を閲覧することを許可し、開かれた透明なプロセスを構築している。

 押収象牙在庫の処分は、処分される総量と合致する保管量を証明するために、保管している押収象牙の厳格な書類の明示が先行されなければならないと、トラフィックは考えている。象牙は、世界中の政府が保管している在庫(押収象牙)の多くが姿を消したことで知られている。無秩序な当局が、汚職を隠蔽する(密輸出を隠す)ための手段として、押収象牙在庫の処分を口実として使っている。「押収象牙在庫の監査は、象牙の処分が今後、違法取引の温床となる前に、違法な市場でこのような手口は通用しないことを示すために不可欠なものである」とアランは言う。「米国は、押収象牙の在庫管理システムの強化のための、助言と支援の提供を以て、『漏出』を防ぎたい他の国々を助けるためによい立場にいる」

 アランは、「象牙の主要な供給国と(米国のような)消費市場のある国々が、より良い規制や、法執行を強化し、アフリカゾウに対する違法取引の影響についてより広く普及啓発することによって、象牙取引を管理のもとにおくこと」への期待を述べた。さらに、「押収象牙の処分という、米国によって示された行動は、大義の表れであるが、取引のために密猟をおこなっている犯罪ネットワークを打倒するために協調している多数の国々を巻き込むだろう」と、語った。

 米国は、この歴史的な行動に続き、押収象牙の処分を、世界的な密猟の危機に対する認知度を上げるための最良の方法としてどのように活かすか、引き続き保全団体や多くの組織と協力して活動していく。それは、象牙の国際取引を終息させるという米国の責務を示すためである。

 2012年6月、トラフィックとWWF、ガボン政府による独自の監査によって、ガボンは、押収象牙の在庫が、違法取引にひとつも流出していなかったという保証の下、象牙の処分をした最初の国となった。

 国際的な象牙取引は、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の下、1989年に禁止となった。ワシントン条約の第16回締約国会議に提出されたゾウ取引情報システム(ETIS)の報告書によると、ゾウの密猟は、増加しており、2012年は、過去10年間で最悪の記録であった。

2013年11月15日
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