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南アジア野生生物法執行ネットワーク(SAWEN)が正式に始動

2011年02月08日
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110130SAWEN.jpg 左から右に: 国内トラ保全当局の共同ディレクター兼インド代表団長のS.P. Yadav氏、ブータンのペマ・ジャムツォ農林大臣閣下、トラフィックインドのリーダー、サミール・シンハ
©TRAFFIC India

【2011年1月30日、ブータン、パロ発】

 南アジア野生生物法執行ネットワークが、ブータン政府主催の政府間会議の場で、正式に始動した。これにより、野生生物に関する法執行強化のために南アジアが地域協力をおこなう新たな時代の幕開けとなる。また、SAWENの事務局がネパールに設置されることが合意された。

 違法な野生生物取引は、国を超えた組織犯罪の形で、世界中で多くの象徴的な種を脅かしている。南アジアは、自然の生態系や豊かな多様性がさまざまな形でつながって存在している場所である。トラやゾウ、サイといった主な種の他にも、多種多様な薬用植物、木材、海産種、鳥や爬虫類が違法な採取や不正な取引に脅かされている。

 そうした脅威に対抗するため、南アジアの8ヵ国が一同に会し、組織的な連携機関である南アジア法執行ネットワーク(SAWEN)を立ち上げた。

 「SAWENは、密猟者や不正取引者を捕まえるため協力し、連携し活動をおこなう上でのグッドプラクティスや資源を共有するために、ブータンが、南アジア地域の当局や担当官が連携して動けるよう手助けしてくれるだろう」と専門家グループ会議の開会の際にブータンのペマ・ジャムツォ農林大臣(Lyonpo (Dr) Pema Gyamtsho, Honorable Minister for Agriculture and Forests)は言う。

 2010年5月に、ネパール政府主催で「南アジアの違法な野生生物取引に関する専門家グループ(the South Asia Experts Group on Illegal Wildlife Trade)」の最初の会議が開催された。その会議は、SAWENの立ち上げのための運営にあたってのロードマップを作成した。ネパールの会議中に特定された優先事項については続けられ、ブータンは暫定的なSAWEN事務局と協力して2011年1月29日~30日にブータンのパロにおいて「違法な野生生物取引に関する南アジア専門家グループ」第2回会合を開催した。

 加盟国や、ワシントン条約事務局やインターポール(国際刑事警察機構)といった政府間組織や、WWFやトラフィックといったNGOから、関連する重要な人物や専門家らがこの2日間の会議に出席した。会議の中で専門家グループによって決定された重要なポイントは以下のとおり。

•共同活動のための合意に基づく行動重視の活動計画。活動計画の中には、即座に始められるものやネットワークが強化されるまで続けられるものなど含まれる。
• SAWEN事務局を設置。これはネパール政府が主催することになる。
• 合意を得たSAWENの管理・運営構造
• 広報および資金調達のための戦略的な協力関係の必要性

 「ワシントン条約では、SAWENの誕生を喜んでいます。私たちがネットワークを支援をできることを待ち遠しく思います」とワシントン条約事務局の法執行チーフのジョン・セラー氏は言う。「加盟国は今、この地域から貴重な自然資源を奪っている犯罪者たちに裁きを受けさせようという責務感を見せている。」

 「犯罪者たちは、縞々の囚人服を着て刑務所に入るべきだ。これが、何千ものトラが近年殺されていることを犯罪者達に思い出させる唯一の方法だ」とセラー氏は言う。

 この会議は、トラフィックやWWFブータンが技術的な支援をし、ブータン政府の農林省が主催し、開催された。野生生物取引のモニタリング・ネットワークであるトラフィックはSAWENの始まりから技術的な支援をおこなってきた。そして米国務省の資金的支援に感謝したい。


■詳細に関するお問い合わせは:
Vijay Moktan, Conservation Director vmoktan@wwfbhutan.org.bt
P.O Box 210, Thimphu, WWF Bhutan Program Office
Tel: +975 2 323528 Fax: +975 2 323518
Samir Sinha, Head, TRAFFIC - India ssinha@wwfindia.net
James Compton, Asia-Pacific Senior Programme Director, TRAFFIC
james.compton@traffic.org

背景:
 SAWENは、南アジアの8ヵ国の環境大臣がインドのジャイプールに集まった2008年に端を発する。この時の8ヵ国とは、アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカである。その際、メンバー国の代表がSAWENと「違法な野生生物取引に関する南アジア専門家グループ」の結成に対する不朽の支援を宣言した。「野生生物保全および野生生物および生物資源の違法な取引」への地域協力はまた、2009年10月にインドで開かれた環境大臣会議の中でインドから提案された「南アジアの環境における協力に関する条約(the Convention on Cooperation on Environment in South Asia)」の下、活動範囲に重要な要素として含まれている。これは2010年4月にブータンのティンプーで開かれた第16回南アジア地域協力連合会議の中で承認された。

 違法な野生生物取引に関する南アジア専門家グループ第2回会合の時に、南アジアの国々の代表が、地域協力や連携の流れの中で、SAWENが正式に着手された。

 野生生物取引のモニタリング・ネットワークであるトラフィックは、野生の動植物の取引が自然保護への脅威とならないよう活動している。トラフィックはIUCNとWWFの共同プログラムである。トラフィックは、世界規模で違法な野生生物取引に対抗すべくアジアの法執行ネットワークの政府機関を支援している。アセアン諸国や南アジアの野生生物法執行ネットワーク、中国や差し迫った状況の隣国への要求に応じて、法執行のつながりを越えた技術的な支援をおこなっている。こうした技術支援には、政府間の 対話の促進、司法分野との連動、現地に基盤をおいたレンジャーと国レベルの機関とのつながりの改善にWWFとともに取り組むことなどが含まれている。

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