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南アジアの野生生物法執行ネットワーク設立に向けたコンセンサス作り

2010年06月14日
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100519SAWEN.jpg ネパールで押収された動物の皮:南アジアの野生生物法執行ネットワークは、法執行当局を野生生物密輸者より進んでいる状態にしておく手助けとなる© Jeff Foott / WWF-Canon

【ネパール、カトマンズ 2010年5月19日】
南アジアの専門家が、違法な密猟や密輸と闘うための地域連携の対策として南アジア野生生物法執行ネットワーク(South Asia Wildlife Enforcement Network (SAWEN))のための土台を築いた。7つの参加国が事務局の設立や、ネットワークのための活動計画策定に同意した。

 違法な野生生物取引に関する南アジア専門家グループ(South Asia Experts Group on Illegal Wildlife Trade)の歴史的な最初の会議は、野生生物法執行機関が犯罪組織以上によく組織化されるよう手助けするという目標を掲げ、5月19日に終了した。連携および協力の仕組みに向けた重要なステップとしては、新しく結成されたSAWENのもと、行動に基づいたアプローチが遅滞なく進められるべきであることに専門家グループは合意した。

 アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、ネパール、パキスタン、スリランカからの専門家たちは、SAWENの構成・機能・作戦の範囲について合意をし、その合意内容には、国レベルでの機関間の強固な協力体制を基盤とした多国間の活動を展開させるアイデアも含まれている。

 「この地域における違法な野生生物取引と効果的に闘うためには、各国からの国際的な支援を受けた政府機関間の協力や連携がもっとも重要なことである」とネパールのボハラ森林土壌保全相は閉会の挨拶として述べた。

 ネパール政府は、このプロセスをさらに推し進めようと、ネットワークを主催し、ネットワークのための暫定的な調整役をかって出た。今後6ヵ月の間に、主要な情報の調整や、さらなる資材の特定や、共同事業・トレーニングプログラム、普及計画を発展させるため参加国からの助言、ネットワークが主要な密輸活動の阻止が開始できるような資金調達などに重点的に取り組む。ブータン政府は次のSAWEN参加国の会議を主催すると申し出た。

 「WWFは会議の結果を歓迎している。この極めて重要な取り組みの成功を確かなものにするべく、今後数ヵ月、ネットワークと共に活動できることを心待ちにしている」とWWFネパールの野生生物取引マネージャーのDiwakar Chapagainは言う。「ネパール政府が示したリーダーシップやこの会議を開催するにあたってのトラフィックインターナショナルの支援があったことに感謝している。」

 違法な野生生物取引に関する南アジア専門家グループの最初の会議はネパールの森林土壌保全省によって開催され、WWFネパールおよびトラフィックインターナショナルも支援をおこなった。また、この会議開催にあたっては米国務省による多大なる資金提供があった。

■詳細に関するお問い合わせ
Trishna Thapa, Marketing Officer, WWF Nepal, trishna.thapa@wwfnepal.org
Richard Thomas, Communications Co-Ordinator, TRAFFIC International, richard.thomas@traffic.org


注:
 南アジアは、トラやその他アジアの大型ネコ科動物、サイ、ウミガメ、淡水ガメ、センザンコウ、レッドサンダー(コウキシタン、紅木)といった比類のない多くの動植物種を支えている世界的にも重要な地域である。しかし皮肉なことに、この生物多様性が非常に豊かであることで、この地域が野生生物の密猟や密輸のターゲットとなっている。

 南アジアの国々は、非常に真剣にその生物多様性を守る約束をした。しかしこの歴史的な違法な野生生物取引に関する南アジア専門家グループの最初の会議においては、生物多様性に対する脅威の多くは政治的境界を越えて広がっているという共通認識があった。

 違法で、持続可能でない野生の動植物種の密猟・採取および取引は、明らかにこうした大きな脅威のひとつである。これには、国境をまたがった地勢や生息域、侵入しやすい国境地帯を通る人や物の動きがしばしば関与している。そしてこれが複数の国で活動をおこなっている組織化された犯罪シンジケートとして特長づけられていく。

 各国のワシントン条約の管理当局、税関、警察およびそのほかの機関より50人以上の参加者が会議に招かれ、目前の課題となる問題の優先順位を決める際に役立つ野生生物の法執行活動に関する専門的な知識を共有した。

 専門家グループはまた、国際刑事警察機構(インターポール)、国連薬物犯罪事務所、International Consortium on Combating Wildlife Crime (ICCWC)からも情報を得られる。近隣の東南アジア地域がASEAN-WEN(ASEAN野生生物法執行ネットワーク)の活動を通じて得た経験もまた、違法な野生生物取引に対抗する政府間活動の同じようなプロセスからの教訓を提供する意味で有益である。

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