
ホーム>野生生物ニュース>違法事例・法執行ニュース>中国と東南アジアでセンザンコウの違法取引相次いで発覚
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最近、センザンコウ類Manis が中国や東南アジアで相次いで押収されている。トラフィックネットワークが集めた各国の情報からみると、船で輸送中のトン単位の大規模なものからトラックで輸送中の十数頭など、状況はさまざまであるが、東南アジアから消費地である中国などに運ばれる途中で押収される事例が目立つ。
センザンコウ類として知られているのは有鱗目センザンコウ科のセンザンコウ属に属する8種である。全身を覆っているうろこが特徴的で、アリやシロアリを食べるため長い舌を持つ。インドから東南アジアにかけてアジア地域に生息しているのがミミセンザンコウManis pentadactyla、インドセンザンコウM. crassicaudata、マレーセンザンコウM. javanica、M. culionensis で、アフリカ大陸に生息するのがキノボリセンザンコウM. tricuspis、オオセンザンコウM. gigantea、サバンナセンザンコウM. temmincki、オナガセンザンコウM. tetradactylaである。2007IUCNレッドリストの中でキノボリセンザンコウ、オオセンザンコウ、オナガセンザンコウの3種はLR(lc)(低危険種)*、M. culionensis以外の4種がLR(nt)(近危急種)*に分類されている。
(*IUCNレッドリストの旧カテゴリーによる1994年の評価結果。2007年のレッドリストでもこの結果を用いている。その後、生息状況が変わっている可能性があり、今後の評価の更新が期待される。M. culionensis については、最近までM. javanica の亜種とされていた。)
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センザンコウ類の肉は食用に、うろこは中国などで伝統薬の原料に、皮は皮製品に利用される。人間による狩猟・密猟がこの種の存続に対する主な脅威となっている。1975~76年にはワシントン条約の附属書IIまたはIII に掲載されたが(サバンナセンザンコウは附属書 I )、その後95年にセンザンコウ属全種が附属書 II に移行され、センザンコウ類すべての国際取引が規制されるようになり現在に至る。野生から採取され、主として商業的目的で取引されるインドセンザンコウ、マレーセンザンコウおよびミミセンザンコウ、M. culionensis については、毎年ゼロの輸出割当が設定されており、輸出入は認められていないことになる。
最近のセンザンコウ類の、各国メディアから集めた押収事例をいくつか紹介する。(詳しくはトラフィックネットワークのLatest seizuresをご覧ください。)
中国では、2005年9月から2006年5月に2,849頭と68tのセンザンコウの肉と900kgのうろこなどを密輸した2人に執行猶予付き死刑判決が下った事例がある。
![]() © Viet Nam Customs |
日本の合法的な輸入を示す、ワシントン条約掲載種の輸出入記録(UNEP-WCMC CITES trade database)によればセンザンコウ属の輸入については、1980年代に皮や皮革製品を輸入していたが、90年代に入る頃には輸入は大幅に減少した。 2001~2005年の5年間では、80年代のような大量の革製品の輸入はほとんどない。一方中国を見ると、これほどの密輸が押収されているにもかかわらず、正規の輸入の記録は少ない。1994年と1996年にそれぞれ 2t と 5.6t のうろこと、1999年に2 t の皮の輸入があった。
アジア産のセンザンコウ類は現在輸出割当がゼロに設定されているため、原産国からの商業的な輸出はないはずである。にもかかわらず東南アジアで押収される数がもっとも多い哺乳類としてセンザンコウがあげられる。このような状況を踏まえ、トラフィックは今年7月頃にシンガポールにおいて国際ワークショップを開催する。「南・東南アジアを原産とするセンザンコウの取引と保護(仮)」と題したワークショップでは、原産国と消費国から、政府関係者をはじめNGOや研究者など関係者を一同に集め、センザンコウの違法取引をめぐる問題などについて話し合われる。
■参考資料
トラフィックネットワークウエブサイト(Latest seizure & Other reports)
IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species. <www.iucnredlist.org>. Downloaded on 12 May 2008.
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