ホーム野生生物ニュース違法事例・法執行ニュース>台湾で大量のトラの骨が押収され、依然密猟の脅威が続いていることが浮き彫りになった

野生生物ニュース

台湾で大量のトラの骨が押収され、依然密猟の脅威が続いていることが浮き彫りになった

2005年08月18日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
050808tigerskull2.jpg ©Kaohsiung Customs, Taiwan

【2005年8月8日 台湾、台北発】

 先月の台湾でのトラの骨(虎骨)の大量押収事件は、野生での密猟が大きく減少しているという証拠がほとんどないことを示している。またトラの生息国と潜在的な消費国の双方が強い執行行動を迅速にとる必要があることを示唆した。台湾でのトラの骨の単独の押収事件としてはこれまでで最大であり、2000年以来アジアでも最大規模である今回の事件は、台湾の高雄の税関当局が7月4日に、インドネシアのジャカルタからきた積荷のなかから、24の頭蓋骨を含む140kgを越えるトラの骨を押収した。これらの密輸品は伝統薬としての利用のために台湾に輸出されるシカの角のコンテナの中に隠されていた。また400kgのセンザンコウの鱗(うろこ)と、5個の象牙の彫刻計1kgも押収された。

 ワシントン条約ではトラやゾウの部分や派生物の国際取引を禁止している。またこれらはインドネシアでは完全に保護されている。しかしトラフィックサウスイーストアジアが昨年発表した報告書では、完全な保護にもかかわらず、インドネシアのトラの密猟や取引は衰えないままであることがわかった。トラフィックサウスイーストアジアの地域プログラムオフィサーのクリス・シェファードによれば、報告書では、1998年~2002年の間に年間少なくとも50頭のトラが殺され、インドネシアの自然から姿を消している。「台湾で先月差し止められたこの積荷だけで、年間の数字の半分近くに相当する」 シェファードは言う。「仮に、これらすべてのトラの部分がスマトラから来たものだとすれば、もしトラの部分の違法取引の広がりを止めなければ、インドネシアは本当に、この最後に残されたトラの亜種「スマトラトラ」を失ってしまう危険がある。」

 かつて3亜種のトラ、ジャワトラ、バリトラ、スマトラトラがいたインドネシアには、現在わずか400~500頭の野生のトラがスマトラに残されるのみとなった。ジャワトラやバリトラはともに、主に取引のために違法に殺され、生息地を失ったりして絶滅してしまた。

 スマトラでのトラフィックの調査の間、取引業者は、韓国、中国、日本、シンガポール、マレーシアと同様、台湾へもトラの部分を売っていることを示唆していた。「われわれは、この違法積荷を差し止めた台湾税関当局の努力を評価する。また他の潜在的な消費国に同様の警戒と強く執行するよう後押しする。」シェファードは言う。「市場によっては、取引の対象が骨からトラの皮や他の製品に移行しているという早い段階での兆しにもかかわらず、この 押収によって、アジアの伝統薬用の利用が野生のトラへの脅威でありつづけていることをはっきりと示している。

 トラフィックはまた、骨を取引するためにこれ以上トラが密猟されないようよりいっそう執行努力をしっかりおこなうようインドネシアに 強く促す。「スマトラトラを守るためには、執行が強化され、改善されていくことは非常に重要な意味を持つ」シェファードは言う。「特にスマトラ北部では、 市場や取引中継地や小売店に対し対策をとるべきである。より専門的な対密猟部隊もまた緊急に組織される必要がある。違法に野生生物やその部分・派生物を取 引する業者は、法律で最大限に処罰されるべきである。」

 「最近数ヵ月のインドの保護地域でのトラの個体数の減少について報告されたことによって、特に南アジアで、国際的な保護の連帯の注目がトラの密猟に再び力強くあつまった。しかしこの押収事件は、ワシントン条約の常設委員会の数日後に起きた。委員会では、アジア産大型ネコ種のすべての生息国に対しアジア産大型ネコ種の標本の不正取引と対抗するための活動や、法律や執行、対密猟努力、公教育などへの努力、そして他の国内規制に取り組むためのワシントン条約の勧告の施行について翌年報告するよう求めた。「もしトラの取引を止めたいのであれば、またもし最終的にトラが野生で生き残らせたいのであれば、保護活動は世界規模で取り組まなければならない」とシェファードは言う。

 この押収はまた、東南アジアから多くの保護種が、台湾や他の東アジアの国々と、大規模に取引されつづけていることを明白に示唆している。センザンコウはアジアでもっとも大量に取引されているもののひとつである。センザンコウもまたインドネシアやアジアの生息域にわたって保護されている。しかし鱗や肉への東アジアでの需要は、残された野生の個体群を脅かす市場の原動力であり続けている。

2005年08月18日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170830ivory.jpg

国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年08月30日

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。

©Martin Harvey / WWF

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

関連出版物

17_Online_Ivory_Trade_in_Japan_JP.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引 アップデート

発効:トラフィック【2017年8月】 著者:北出智美【日本語】Briefing Paper

17_Briefing_CHI-World_Rhino_Day.jpg

Chi Initiative BRIEFING PAPER World Rhino Day 2017

発行:Chi Initiative【2017年9月】 著者:TRAFFIC【英語】24pp