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インドネシアでのオランウータンとテナガザルの違法取引を止めるためにより効果的な法執行が必要

2005年06月30日
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050617birdmarket.gif インドネシアの一般的なバードマーケット
©Chris Shepherd / TRAFFIC Southeast Asia

【2005年6月17日 インドネシア、ジャカルタ発】
トラフィックの新しいレポートは、インドネシアではオランウータンとテナガザルを、1931年以来法的に保護しているにもかかわらず、ジャワやバリではこれらがいまだにペットとして取引され、飼われていると報告した。WWFインドネシアと共同で発表されたこのレポートは、司法、執行機関、一般の人々に対し、絶滅のおそれのある霊長類を取引することは深刻な犯罪であることをより強く認識するよう求めている。

 トラフィックサウスイーストアジアのレポート「In Full Swing, An Assessment of Trade in Orang-utans and Gibbons on Java and Bali, Indonesia (インドネシアのジャワとバリにおけるオランウータンとテナガザルの取引の評価)」では、ふたつの島にわたる22都市の野生生物市場35ヵ所から集めた情報にもとづいた1994~2003年のデータを分析している。トラフィックの調査員は、調査期間中に合計559頭のオランウータンとテナガザルをみつけた。その多くは売りに出されているか、あるいは地元ではパサール・ブルンとして知られている「バードマーケット」で違法に取引されていた。

 しかし、その「バードマーケット」から売られていった動物の実際の数はほとんどわかっていない。「野生生物市場をよりしっかりとモニタリングしていくことによって、これらの市場で売られつづけている他の野生生物種と同様、霊長類の取引をより正確に分析することが可能になる」とトラフィックサウスイーストアジアの事務局長のジェームス・コンプトンは言う。「このことはまちがいなく法執行の効率をあげる手助けとなるだろう。」

 
050617OrangUtan.gif 押収されたオランウータン、インドネシアのジャワのチカナガン救護センター
©Julia Ng / TRAFFIC Southeast Asia.

 オランウータンとテナガザルはワシントン条約の附属書 I に掲載されており、これらの動物のいかなる国際取引も禁止されている。インドネシアの法律の下、オランウータンとテナガザルは「保護種」に分類されており、これらの種の捕獲、殺すこと、所有、取引は禁じられている。この法律に違反した際の罰則は、罰金100,000,000インドネシア・ルピア(約112万円)および懲役5年の刑にもなる。

 しかし、トラフィックのレポートによって、オランウータンやテナガザルを狩猟したり、飼ったり、取引する人が処罰されることはほとんどないことがわかった。標本が押収された人々のうちの10%未満しか実際に起訴されていない。裁判官や検察官を含む多くの法執行官は、保護されている種をペットとしての取引したり所有したりすることを深刻な罪だとはみていないのである。

 「野生生物の保護の状況への理解を得るため、そして現場での法執行の効果を高めるために、一般の人々や法執行官をターゲットとした大規模な意識の向上あるいは教育のプログラムを整えるべきである」とWWFインドネシアのCEOであるムバリク・アハメド博士は言う。「取引については、特にボルネオとスマトラの、オランウータンとテナガザルの生息地を形成する低地林の生態系の保護強化と併せて取り組んでいかなければならない。」

 インドネシアのワシントン条約管理当局であるPHKAの生物多様性保護官のアディ・ススミアントは言う。「インドネシアは、スマトラやカリマンタンから、他の国やジャワやバリなどのインドネシア内の他の地域に、野生生物が密輸されないようにするために必要な、主要出入口地点での執行を強化するために十分に尽力している。もっと重要なのは、そのような絶滅のおそれのある種の密猟を阻止するために、オランウータンやテナガザルの生息地が保護されていなければならないことである。」

 
050617Hylobatesmuelle.gif ©Chris Shepherd / TRAFFIC Southeast Asia

 オランウータンとテナガザルはともにペットとしての根強い需要を満たすために捕られ、取引されている。オランウータンはインドネシアの市場で売られている中でもっとも高価な霊長類であり、ステータスシンボルとして家庭で飼われる。オランウータンはまた、娯楽産業のためにも取引されている。2003年11月に、タイの当局はバンコクのサファリワールド施設から115等のオランウータンを押収した。これらのオランウータンの出所はインドネシアだと報告されていた。この事件は続いていて、インドネシア政府は頻繁にタイからのオランウータンの送還を要請している。

 「また、一般の人々がオランウータンやテナガザルをペットとして買ったり、飼育したりすることが野生個体群を減少させてしまう一因となることを理解する必要がある」とコンプトンは言う。「インドネシアでそれらの動物を購入したり飼ったりすることが法に触れるというだけではなく、国の貴重な自然遺産を破壊していることになるのだ。」

●レポート「In Full Swing, An Assessment of Trade in Orang-utans and Gibbons on Java and Bali, Indonesia」の全文がダウンロードできます。(個人コピー用)トラフィックサウスイーストアジア作成

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