ホーム野生生物ニュース薬用動植物ニュース>野生の種を守る。ビオファ(BioFach)にて:野生の植物調達の持続可能性について産業界が討論

野生生物ニュース

野生の種を守る。ビオファ(BioFach)にて:野生の植物調達の持続可能性について産業界が討論

2013年04月03日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
フェアワイルドのブース:ビオファ2013の会場にて ©TRAFFIC

【2013年2月】

 トラフィック、フェアワイルド・ファウンデーションの代表、パートナー、そして後援者たちが、2月のはじめに、ドイツのニュルンベルクで開催されたビオファ(BioFach:有機製品専門の展示会)で一同に会した。

 「オーガニックな人々が出逢う場所」として知られるビオファは、野生の植物の原料取引に関わる生産業者、製造業者、貿易業者、仲介業者、NGO、基準を定める機関や認証機関のために毎年開催されている重要なイベントである。今年は、野生採集についてが、参加者の注目点であった。

 「Keeping it wild: Taking action for organic wild plant ingredients(野生の種を守る:有機の野生植物原料のために行動をおこそう)」

 野生採集に関して生態学および社会的な問題に取り組むことは難しい。取引経路は長く複雑で、製品が野生資源からつくられるときに、そのことを産業界や消費者が知ることさえ難しい。企業が野生採取の植物から栽培植物へと転換する場合、しばしば、土地転換への脅威にさらされたまま、野生植物が資源としての価値を失うと同時に、採集者に不可欠な利益の損失という結果を生む。このような問題や関連した課題を議論するために、ビオファで特別に開催されたセッション『Keeping it wild: Taking action for organic wild plant ingredients(野生の種を守る:有機の野生植物原料のために行動をおこそう)』に70名以上が参加した。

 フェアワイルド事務局が開催したこのイベントは、ビオファで開かれる会議のテーマである、『Shared Values. Action for a Future World(価値の共有。未来の世界のための行動)』に則したもので、多様な利害関係者グループの専門家を迎えておこなわれた。

  ● ブライオニー・モーガン(フェアワイルド・ファウンデーション)は、自発的な取り組み
    における持続可能な協調関係の重要性を強調し、関連する枠組みとして、
    フェアワイルド基準と認証制度を紹介した。

  ● ジョセフ・ブリンクマン(米国、トラディショナルメディシナルズ社)は、2020年までに製品
    ラインの100%を環境・社会の認証を受けられるものにすることを保証するための自社
    の取り組みを紹介した。これは、取引先との強固な関係や、採集者や地域社会との利益
    の共有に支えられている。

  ● Kasia Treszczotko(ポーランド、Runo sp. z o.o.社)は、ポーランドの
    オーガニック認証の先駆者としての歴史と、2009年以来フェアワイルド基準を実施する
    ためにおこなっている取り組みについて説明した。フェアワイルド認証は、採集者が通常
    よりも5%高い価値を受け取り、野生採集の伝統が存続するためのインセンティブを提供
    する。

  ● アントニア・シュナイダー(スイス、インスティテュート・フォー・マーケテコロジー:IMO)は、
    野生採集の認証機関であり、フェアワイルドと有機の野生作物の収穫の制度の監査を
    おこなう役割について紹介した。

  ● スーザン・カーティス(英国、ニールズヤードレメディーズ社)は、持続可能性の懸念から、
    いくつかの原料の利用を中止した過去の決断について解説した。フェアワイルド基準は、
    企業が計画する持続可能な調達の枠組みを提供しており、ニールズヤードレメディーズ社
    では、これを人気の化粧品に利用されているニュウコウジュ Boswellia carteii で試行
    することにしている。

  ● アナスタシア・ティモシャイナ(トラフィック)は、市場を基盤とした保全のための取り組みを
    支援する知見について語った。NGOは、バリューチェーンの繋がりを構築するために
    中立な立場をつくることができ、情報を共有し、協力者を探すことができる。また、技術的な
    専門性により貢献することもでき、啓発活動を通じて、消費者を引き込むこともできる。
    フェアワイルド基準は、貴重な参考資料とツールを提供するが、前提条件として、変革を
    起こすこと、自由で誠実な信頼関係の構築に投資することを共通の目的とすることが
    求められる。

 専門家の発表に続き、聴衆者との議論がおこなわれた。白熱した議論のひとつは、フェアワイルド基準や、認証制度の適用を通して得られる良い影響(生態的、社会的)や、付加価値の証明だった。参加者はまた、持続可能性について消費者へ伝えるための異なるアプローチについて議論した。

 トラフィックは、ベトナムと中欧での活動など、最近のフェアワイルド・プロジェクトをビオファで紹介した。具体的には、食品とハーブ製品メーカーなどに向け、中欧でのプロジェクト(地域開発基金(ERDF)の共同融資により中欧のプログラムに沿って実施された)「Traditional and Wild(伝統と野生)」の成果が強調された。多数の企業が、プロジェクトで取り上げられている重要な野生植物種のいくつか-セイヨウネズ Juniperus communis 、セイヨウスノキ Vaccinium myrtillus 、スギナ Equisetum arvense 、カニナバラ Rosa canina -に興味を示した。

 フェアワイルド・ファウンデーションのエクゼクティブ・オフィサーであるブライオニー・モーガンは、「ビオファのオーガニックな人々の集まりが、持続可能で公平な野生植物採集の実現を助けるために、環境活動の最前線であり続けることを願っています」と言う。

【付記】
ビオファ(BioFach)は、2013年で24年目となる世界最大級の有機製品専門の展示会である。

2013年は、2,396の展示と129カ国から41,500名が参加した。自然化粧品部門の展示は、自然なパーソナルケアと健康についてをテーマとしたヴィヴァネス(Vivaness)が、ビオファと並行して開催された。

フェアワイルド・ファウンデーションのビオファへの参加は、トラディショナルメディシナルズ社とWWFドイツの温かいご支援により実現した。

フェアワイルドとは

 

2013年04月03日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
関連キーワード フェアワイルド 薬用植物

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

170710_elephant.jpg

楽天がオンライン店舗での象牙製品販売を停止

2017年07月10日

楽天株式会社が楽天市場での象牙製品の販売行為を今後認めないことが明らかになった。現在、日本国内で合法的に販売されている象牙製品は、近年のアフリカゾウの密猟とは因果関係がないとされている。しかし、トラフィックの新たな調査でも、急成長を続けるeコマースを通じた象牙取引については、法律の整備が追いつかず、対応しきれない状況が続いていることが明らかになっており、トラフィックとWWFジャパンも厳しい措置を求めていた。日本のe-コマース企業の判断としては、大規模な今回の楽天の決定が、他企業にもより厳しい対応を迫るものとなることが期待される。

©Steve Morello / WWF

関連出版物

15_Hard_to_bear_Malaysia.jpg

Hard to Bear: An Assessment of Trade in Bear Bile and Gall Bladder in Malaysia

発行:TRAFFIC Southeast Asia【2015年6月】 著者:Lee, S.L., Burgess, E.A., Chng, S.C.L.【英語】50pp

14_Traditional_and_Wild-1.jpg

Traditional and Wild: Revitalizing traditions of sustainable wild plant harvesting in Central Europe

発行:TRAFFIC and WWF Hungary【2014年4月発行】 著者:Kristina Rodina, Anastasiya Timoshyna, Andreja Smolej,Darijan Krpan, Elena Zupanc,Éva Németh,Gabriela Ruzickova,Gergő Gáspár, József Szántai,Malgorzta Draganik, Péter Radácsi,Stanislav Novák, Szilárd Szegedi【英語】40pp