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Are youフェアワイルド?

2012年11月13日
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121017SebastianPole.jpg フェアワイルドについて話をするセバスチャン・ポール氏
(パッカハーブス社の共同設立者) ©TRAFFIC

【インド、ハイデラバード発 2012年10月17日】

 フェアワイルド基準の利用が、政府の政策立案者を手助けし、野生植物の持続可能な利用を保証するために、民間部門に働きかけるためのツールとして、インドのハイデラバードで開かれた生物多様性条約(CBD)の締約国会議2週目に開催されたサイドイベントで取り上げられた。

  40名以上の会議出席者が、野生植物の持続可能な利用にむけた効果的な政策立案について、精力的な議論に参加するために集まった。トラフィック、フェアワイルド・ファウンデーション、英国のパッカハーブス社、インドのマディヤ・プラデーシュ政府、インドのサバンドゥルガ村森林委員会(Savandurga Village Forest Committee)からそれぞれの代表が講演し、経験を共有した。

  『Going wise(賢い道とは):野生植物の持続可能な利用における、植物由来のビジネスと国の政策立案者の双方に役立つ仕組み』と題されたこのイベントは、トラフィックが主催し、フェアワイルド・ファウンデーションとIUCN薬用植物専門家グループが協力し、WWFジャパンによる資金支援により開催された。

  このイベントでは、生産者、NGO、ビジネス界および政府の視点が一堂に集められ、フェアワイルド基準のようなツール-野生植物資源の持続可能で公平な取引のベストプラクティスのためのガイドラインのセット-が、どのように生産者と世界的な市場との間での取引関係を具現化することに役立つか、という議論を促進した。

  トラフィックの薬用植物プログラムのリーダー、アナスタシア・ティモシャイナは、フェアワイルド基準の紹介によってイベントの口火を切り、「これらの優れた実績の提供が、持続的に野生植物を利用することの可能性について、政策立案者の間での理解を促進することを期待しています」と強調した。

  「フェアワイルド基準は、世界植物保全戦略(GSPC)の目標11,12と13を施行する上で、CBD締約国政府や民間部門を手助けするツールとして利用することができます。このツールは13ヵ国語で利用可能であり、真の世界的ツールといえます。フェアワイルド基準が、民間部門が目標を達成するための最良の実行手段として、日本の生物多様性国家戦略の中でふれられることとなったのを報告でき、嬉しく思います」と彼女は言う。

  パッカハーブス社の共同設立者、セバスチャン・ポールは「フェアワイルドは、持続可能な採取とはなんなのか、ということをまさに具現化しています。わたしたちが地域コミュニティから得たものから生じる利益が、彼らに還元されることを保証しています。課題は、持続可能な採取に関する採取者への教育と、消費者へ効果的に持続可能性のメッセージを伝えることです」と語る。

  さらにポールは、「フェアワイルドの施行は挑戦であるが、パッカハーブスは、野生採取と取引の持続可能性を保証する上で、進むべき道であると確信しています」と加え、「フェアワイルドの適用は、ビジネスを通して保全をもたらし、供給そのものと供給者の未来を保護する」と語った。2012年の初めにパッカハーブスは、英国でフェアワイルド認証を取得したお茶の第一弾を発表し、さらにフェアワイルドの製品を増やしていくことを視野に入れている。また、英国市場以外への拡販も検討している。

  植物保全の民間部門の関与は、非常に重要で、欠かせないものである。50,000種以上の薬用・アロマティック植物(MAP)は、健康、食品や化粧品、多くの国の経済と地域コミュニティの重要な収入源を提供するものとして、世界的に利用されている。それと同時に、薬用・アロマティック植物種の1/5が、過剰な採取と土地利用の変化によって絶滅の危機にさらされている。

 

 
121017Karnataka_demonstrating.jpg 植物の見本を見せながら発表するカルナータカ州のメンバー ©TRAFFIC

 インドのサバンドゥルガ村森林委員会の代表、Sri Jayadevaiah氏は、カルナータカ州のフェアワイルド基準実施地域の経験を共有した。「わたしたちのコミュニティで使われている多くの薬用植物種において、持続可能な採取の方法を開発しました。現在は、他のコミュニティに研修をしてあげることもできるようになっています」。この発表は、村の植物学者である Muthaiah氏と共に、順応的管理の方法を開発した数種の植物種そのものの見本を見せながらおこなわれた。この実演部分はカンナダ語でおこなわれ、アーユルヴェーダ・総合医学研究所/地域伝統医療振興財団(I-AIM/FRLHT) のJagannatha Rao氏により通訳の支援を受けた。

  インド森林職(公務職)、マディヤ・プラデーシュ州特用林産物担当の高官(Additional Managing Director, Madhya Pradesh Minor Forest Produce, India Forest Service)であるGiridhar Kinhal氏が、イベントで話し、「フェアワイルド基準がユニークであるのは、経済的な側面とフェアトレードの原則の双方を用いていることです。野生採取の持続可能性における大きな効果を、政府の方針の中にフェアワイルドの原則を融合させることによって実現させることができます。マディヤ・プラデーシュ州では、薬用・アロマティック植物と非木材の林産物の収入は、採集者に帰属します。わたしたちは、州のあらゆる場所で、持続可能な利用の事例を紹介・普及することに力を注いでいます」

  発表に続く討論の中で、持続可能性に向けビジネス様式を変えたインド企業について、消費者の行動の変化、フェアワイルド認証ラベルはどの程度好まれるか、などの質疑応答があった。インドの薬用植物の大手業者のひとつであるダブール(Dabur)の代表は、製品の持続可能性のための様々なビジネス活動についてコメントした。会場からの懸念事項として、インドの森林実施計画(Forest Working Plans)へのフェアワイルド原則の融合、コミュニティへの追加の能力開発の必要性、フェアワイルドの影響評価の重要性、コミュニティ間で互いに学びあうことへの支持の意見などが出された。

  また、このイベントでは、持続可能な調達への努力が、愛知目標4とGSPCの個別目標IIIの達成に貢献し、名古屋議定書の原則を支援することを強調した。

  フェアワイルド基準は、目標12の達成のためのベストプラクティスとして、また愛知目標4の達成への貢献の手段として、GSPCの施行のための新しく作られたツールキットのなかに含まれている。トラフィックは、植物保全に向けたグローバル・パートナーシップ(GPPC)のメンバーとしても、GSPCの施行に貢献している。

フェアワイルドとは

フェアワイルド基準

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