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【CBD-COP10】日出ずる国から一筋の光明

2010年11月08日
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101030nagoya-cbd.jpg 歴史的な「名古屋ABS議定書」の最終的な交渉に真剣に耳を傾けるトラフィックとIUCNの代表©TRAFFIC

【名古屋発、2010年10月29日】
 トラフィックはABS(利益の公平な配分)に関する新しい議定書が採択されたことを歓迎している。

 まさに閉幕という時になり、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)に参加した代表者らは、生物資源の保全に関する世界的な枠組み条約の前向きな結論をはばむ3つの障害を片付けた。

 土曜日の未明に、名古屋に集まった締約国は「遺伝資源へのアクセスおよびその利用から生じる利益の公平で公正な配分に関する名古屋議定書」略して「ABS議定書(名古屋議定書)」の合意に達した。

 ABSの問題をめぐる膠着状態は、条約が署名されてから今までの18年間続き、結論を出すのを拒み続けてきた。

 名古屋ABS議定書は、野生生物の多様性豊かな国々がこうした資源へのアクセスを提供する代わりに適切な利益を得ることができるようにするための極めて重要な要素である。

 初めてABSの新体制は、国際的に拘束力のある枠組みを提供し、例えば、民間分野の企業が積極的に薬や生化学の分野および香料や食糧資源のための生物資源探査をおこなう際に適用されることとなる。

 しかし、ABS議定書は過去にさかのぼっては適用されない。

 代表らは、生物多様性の損失を止めるためのポスト2010年の新しい戦略計画や、財源を結集するための戦略に合意した。

 トラフィックはこれらの前向きな結果を歓迎している。「これは名古屋における、世界各国の政府にとっての歴史的な日である」とトラフィックの事務局長スティーブン・ブロードは言う。「この交渉の末のABS議定書は、生物多様性保全、貧困軽減、開発の間の隔たりを埋める助けとなる画期的な合意である。」

 193の締約国はさらに、生物多様性の損失をさらにくい止めるための20の意欲的なターゲットにも合意した。

 「書面上のこうした約束は意欲的であり、歓迎すべきことであるが、今度はこれらが2020年までにしっかりと施行されるよう相当な努力が必要となる」とブロードは言う。

 まだ2020年までの目標リストを実施するために必要な資金について明確にするという課題が残っている。年間300億米ドルから3000億米ドルの幅がある数値が言及された。

 2012年にインドがホスト国となり開催される次の会議の時までに、締約国は、生物多様性のさらなる損失をくい止めるために、いくつの基金がすでに使用され、まだどれだけ必要であり、特にどこから追加資金が提供されるのかを確定しなくてはならない。すでに日本は次の3年間の間に生物多様性の保全や持続可能な利用のための20億米ドルを保証した。

 
101030nagoya_cbd2.jpg 会議中のトラフィックイーストアジアジャパン代表の石原明子©TRAFFIC

 トラフィックは、特に生物多様性の持続可能な利用に関する決定、および世界植物保全戦略(GSPC)の成功した、新しい工程表への合意といった交渉において貢献してきた。

 2020年までの次の10年に延長されたこの戦略があることで、持続的ではなくかつ違法な取引を含めた過剰な利用によって野生植物が引き続き失われていくことをくいとめるための世界規模での努力が続けられるだろう。

 CBD-COP10最初の週には、トラフィックは、違法で持続可能でない野生生物の採取やその結果おこなわれる取引による悪影響がどのようにして大きく軽減されうるかについて、締約国にその解決策やモデル事業について示した。こうした事例については、野生植物の持続可能な利用や取引を確保するためのフェアワイルド基準の活用や、野生生物取引に関する法執行ネットワークでの東南アジアの締約国の経験について語られた中で示された。さらにトラフィックはまた、締約国会議と会議の間におこなわれるさまざまなプロセスにおいて貢献するためCBD締約国によってに選任されており、とりわけ、関連する基準や指標の審査を含め持続可能な利用のベストプラクティスをまとめることに貢献していくだろう。このプロセスの結果が次のCBD-COP11に先だっておこなわれるCBDの科学技術助言補助機関(SBSTTA)に報告されることになる。

2010年11月08日
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