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グリーンEXPOで「野生の薬用植物の持続可能な採集」のコンセプトや認証制度を紹介

2009年07月27日
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トラフィックのブースの様子
© TRAFFIC East Asia-Japan
   
 
 

 
トラフィックイーストアジアジャパンは、7月4日~5日にパシフィコ横浜で開催されたグリーンEXPOに出展し、ISSC-MAP*のコンセプトやフェアワイルド(FAIRWILD)という認証制度を紹介した。まずは関心の高い消費者や、関係者にこの新しいコンセプトを知ってもらい、一消費国として持続可能な採集に関する活動を支援していけるような基盤作りを目指している。

 グリーンEXPOには、エコやロハスといったコンセプトに関心の高い3万人以上の来場があり、「地球の薬箱を救え」と題したトラフィックのブースにもたくさんの人が訪れた。ブースに訪れた人々は、ISSC-MAPのカザフスタンのプロジェクトで採取された植物のハーブティーを飲みながら、スタッフからコンセプトや現状についての説明を受けたり、フェアワイルドに関するアンケートに答えていた。会期中はひっきりなしに人が訪れ、来場者の関心の高さがうかがわれた。

 またグリーンEXPO内と会期直後に、関心の高い消費者や関係者に向けたセミナーをおこなった。そこではISSC-MAPやフェアワイルドの立ち上げに関わってきた英国のハーブ療法士や、実際のプロジェクト実施に関わっているトラフィックの中国スタッフが現地の状況も踏まえて、ISSC-MAPやフェアワイルドに関する話をした。セミナーには総勢100名以上の方々に参加いただき、みなさん大変熱心に耳を傾けていた。

 トラフィックでは引き続きこの問題に取り組み、こうした中で築かれた情報のやりとりや人とのつながりを、今後の日本でのISSC-MAPの考え方やフェアワイルドの普及に繋げていきたいと考えている。


グリーンEXPOでのアンケートについて

グリーンEXPOでは、ブース来場者やセミナー参加者対象にフェアワイルドや野生の薬用植物に関するアンケートをおこない、220人に回答いただいた。質問は全5問で、以下は回答の一部です。


Q. 商品に「FAIRWILD」の表示、マークがついていたら、買うときに参考にしますか?

Q. 商品に「FAIRWILD」の表示がついている商品をどの程度高くても購入しますか?

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*「薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採集に関する国際基準 International Standard for Sustainable Wild Collection of Medicinal and Aromatic Plants (ISSC-MAP)」

 

 

**************************************************
【セミナー開催のご報告】
地球の薬箱を救えーISSC-MAPとフェアワイルド-

 
   
 
グリーンEXPOでのセミナーの様子© TRAFFIC East Asia-Japan


グリーンEXPOの会場(2009年7月5日)とWWFジャパン(7月6日)にて薬用植物の野生からの持続可能な採集に関するコンセプトやプロジェクト、認証制度を紹介するセミナーを開催した。以下、2人のプレゼンターの話の概要をご紹介する。

1.地球の薬箱を救え
英国のハーブ療法士、エレノア・ガリア

 最近の健康志向から、日頃、アロマやハーブに親しんでいる方が多くなっています。あるいは、健康面に不安のある人なら、漢方薬などの薬用植物を口にされていることでしょう。
でも、アロマのかぐわしい一滴がどこからやってくるのか、考えてみることは意外に少ないものです。
農作物のように、田畑で栽培されているなら、計画的に再生産ができます。でも、実は、薬用植物やアロマ製品の大半は野生にあるものを採取しているのです。
したがって、薬用植物などの原料は「限りある資源」という見方が必要になります。つまり、過剰な利用は避けて、「持続可能な利用」を心がけなくてはいけないのです。

 そうしたところから生まれてきたのが「フェアワイルド(=FAIR WILD)」です。持続可能で、原産地の住民の生活にも配慮した形で、野生の薬用植物を利用していこうというものです。

  薬用植物を救おうという考えは、実は1988年のチェンマイ宣言まで遡ります。「Save the Plants that Save Lives(私たちの生命を救ってくれる植物たちを守ろう)」という言葉が生まれたのもこのとき。そのあと1993年に薬用植物ガイドラインが国際的に合意され、 2004年には「薬用・アロマティック植物の野生からの持続可能な採集に関する国際基準=ISSC-MAP」が策定されました。そして、2008年に誕生したのがフェアワイルド基準です。

 まだ、生まれたての基準を日本にいち早く紹介したのが今回のセミナーということになります。

■ホリスティックなハーブ薬
現代の医療は、患部をみることはあっても、なかなか患者を全体としてみることはありません。そんなところから、「全体的な治療」をハーブ療法では重視するとのことでした。また、症状を軽減するだけではなく、そうした症状を引き起こしている原因にまで行き当たり、根本から治療します。

■エシカルで持続可能な供給源
「流通ルートが明確」であり、適正に採集され、きちんとした流通ルートにのっているという倫理性(エシカル)が求められます。それは、セラピスト、患者、植物、地球・・・すべてのためになることなのです。

■ブラジルのイラカンビでの活動から
実際保全活動に携わっているブラジルのイラカンビは大西洋に近い森林地帯。破壊的な森林の利用ではなく、保全する方が魅力的であるようにと、ISSC-MAP基準の適用されたモデル地区となっています。森林の伐採から得られる利益に代わる選択肢を用意すべく、活動する日々です。

■公正(フェア)であること --fair--
地域にあった伝統医療に光をあて、再びその知恵を取り戻す。そして、人々の健康のため、植物資源のため、環境のためにひとりひとりが責任を持つことが大切です。だれかが一方的に利益を得るのではなく、「公正さ」を織り込んで生きるという考え方の転換が重要な時期に私たちはいます。

■取引 --trade--
薬用植物が適正に採取されたあとは、取引の問題に移ります。つまり、サプライチェーンを通じても公平さが確保される必要があります。採集企業とバイヤーの関係も、ISSC-MAPの基準、フェアワイルド基準にのっとていることが必要です。

■ワイルド --wild--
ブラジルの「Emba-Uba」という樹種は新しく開けた土地にいち早く定着し、ぐんぐん伸びる樹木です。アマゾンを代表する樹種ですが、これを乱暴に片手で引き抜くのではなく、女性が髪をとかすときと同じように、両手をそえてそっと摘み取ってあげる。そんな柔らかで温かな気持ちが必要とされる時代にさしかかっています。

 食品、薬、化粧品、スパイス・香辛料、こうした私たちが生きていくのに欠かせない資源や製品が持続的に利用可能になる。そして、環境への負荷が小さな社会。 これを現実のものとするのが「フェアワイルド」なのです。このロゴのついた製品が今年の秋にもお目見えする予定です。

2.生物多様性に関するもうひとつのアプローチ
トラフィック中国プログラム、リュウ・シュイエン

 
  グリーンEXPOでのセミナーの様子© TRAFFIC East Asia-Japan

 世界中で、50,000 種から70,000種 の植物が、伝統的および現代的な薬として使われています。約3,000種の薬用・アロマティック植物が国際的に、また地域や国レベルではそれ以上の植物が取引されており、薬用植物が健康や暮らしを依存している現地の人々にとっても、世界的な市場においても重要な存在です。そのなか多くの薬用・アロマティク植物が野生から採集され、過剰な採集、土地の転換、生育地の消滅は、約15,000種、もしくは21%でその脅威を増加している現状から持続可能な採集の方法が課題となっています。

 中国は薬用植物の最大の輸出国であり、主に香港を経由して日本、韓国、シンガポール、EU、米国へと輸出しています。図からは、中国では薬用植物の輸出量が増えており、中国にとっても薬用植物の持続可能な利用は大きな課題です。またその相手国として主要な日本もまたビジネス界にとっても重要な問題であり、ISSC-MAPへの取り組みも必要です。

 一例として五味子Schisandra spp.を紹介し、現地中国でのプロジェクトについて紹介します。中国プロジェクトの展望は、中医薬に使われる植物が持続可能な方法で管理され、コミュニティの収入も増え、収入源も多角化していくため、過剰採取による生態系や生物多様性への脅威を最小限に抑えることです。NGOとして、お互いにとって有益な状況を目指しこの問題に取り組んでいます。

 EUからの支援によるECBPのプロジェクトが行われている地域は、ジャイアントパンダの生息域にもあたります。このプロジェクトは中国での汎用性の高いモデルの開発を目指しており、そこでは政策のレビューと分析、効果的な管理と中医薬資源の監視機構、学習と情報交換のネットワーク、主要な関係者への意識の向上、認証または別のマーケット戦略を通じた持続可能な生産と保全、所得創出や中医植物やそれらの生態系の保全などに取り組んでいます。


また、写真を通じて、こうした活動に現地の人々やその他多くの人々が調査や話し合いに関わっている様子も紹介された。最後に、今後活動を進めていくためには時間と資金がまだまだ必要であり、今後も協力を必要としていることを訴えた。

2009年07月27日
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