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【開催報告】野生植物原料の持続可能な利用について考える

2014年04月08日
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©トラフィックイーストアジアジャパン

 トラフィックイーストアジアジャパンは、3月26日、植物原料の利用に関わる日本企業を対象に、野生植物原料の持続可能な利用と保全について考えるセミナー※を開催した。

 自然資源の持続可能な利用の重要性については、環境保全の議論の枠を超え、近年、企業が原料調達の中で主体的に取り組むべき課題として、林産物や水産物などをはじめとした関連産業で認識が広まってきている。今回のセミナーでは、これまであまり語られてこなかった植物原料、中でも薬用・アロマティック植物などで野生から調達される植物に焦点を当て、参加企業と持続可能な利用の必要性につき意見交換をおこなった。セミナー参加企業は、化粧品や食品、アロマ、製薬、小売りなどの幅広い業界にわたり、植物原料の利用形態の多様さと本テーマへの関心の高さが伺えた。

 セミナーに先駆けてトラフィックが実施した、植物原料を利用する日本企業を対象にしたヒアリング調査※では、資源の枯渇による植物原料の安定的調達への影響を懸念している企業が多いことがわかっており、実際に調達リスクを経験した事例もあった。また、一方で、多くの企業で植物原料のトレーサビリティの確保ができていない、また、野生資源に関する知識が少ないという現状も明らかになっている。

 野生資源の過剰な利用は、現在、植物種の絶滅の大きな要因のひとつとなっており、生産地で野生植物の採集を収入源としている地域社会への影響も危惧されていることから、これらの植物を原料として利用する立場の日本企業にも、責任のある持続可能な利用が求められている。

 セミナーでは、参加企業への情報提供と率直な意見交換を目的に、トラフィックから、野生植物資源の利用と保全に関する動向、サプライチェーンを生産地まで遡ることで見えてくる環境面・社会面の問題、そして、野生からの持続可能な利用を実践するツールとしての「 フェアワイルド基準」と認証制度について、世界の最新の事例と共に紹介した。

 意見交換では、様々な視点からアイデアが活発に飛び交い、特に、生産地の環境保全や生産者の生活への関心は参加企業の間でも高く、フェアワイルドのような基準が果たし得る、果たすべき役割について濃厚な議論がおこなわれた。加えて、生産地の環境を守っていくために、野生採集と栽培の両方を包括的に持続可能かつ社会に配慮したものとしていくことの必要性や、行政の後押しの有効性などについても、有意義な質問やアイデアが出された。

 また、フェアワイルド基準・認証の詳細についても、対象となる生産形態、種のリスク分析や認証・登録のしくみ、費用、採集者に支払われるプレミアム基金の使途など、実践的側面に関する様々な質問が寄せられ、フェアワイルドの活用に関する具体的な関心が高いことも伺えた。

 
認証を取得した製品に付けられるロゴ

 フェアワイルド基準は、野生からの持続可能な採集と公正な取引に特化した唯一のスキームとして、2010年に制定され、生産地や企業による取り組みは世界で徐々に広がりつつある。セミナーでは、基準を調達方針に取り入れた原料会社や、マルチステークホルダー間の取り組み、また、認証制度を活用している欧米企業の事例などを紹介した。

 トラフィックでは、引き続き、野生の薬用・アロマティック植物の持続可能な採集と利用、そして保全について、採集地、消費地の双方で推進していくと同時に、日本企業による植物原料のトレーサビリティの確保やフェアワイルドの活用に向けた取り組みを支援していく。

※経団連自然保護基金のご支援により実施されました。


【関連情報】

◆ニールズヤードレメディーズ社(自然化粧品製造販売/英国)の事例[英語]
http://www.traffic.org/home/2013/7/2/fairwild-certified-frankincense-makes-its-debut.html
◆パッカハーブス社(お茶を中心としたハーバル製品製造販売/英国)の事例[英語]
http://www.traffic.org/home/2013/7/11/consumer-campaign-marketing-fairwild-product-wins-sustainabi.html
◆中国の伝統薬(TCM)産業の取り組み[英語]
http://www.traffic.org/home/2013/12/18/green-growth-for-the-tcm-industry-in-china.html

2014年04月08日
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