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アジアの課題:クマノイ取引

2011年05月19日
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110519bear-in-cage.jpg © TRAFFIC Southeast Asia

 東南アジア中心としたアジアのクマノイ(クマの胆嚢、ユウタンとも呼ばれる)取引に関するレポート『Pills, Powders, Vials & Flakes: The bear bile trade in Asia(アジアのクマノイ取引)』を発表した。

 クマノイは伝統薬や民間療法としてアジア地域で利用され続けている。このレポートでは、調査したアジア13の国/領土のうちマカオを除く12ヵ国/領土で、伝統薬としてクマの胆汁製品が販売されていたことが報告されている。調査において販売頻度が高かった国は、中国本土、香港、マレーシア、ミャンマー、ベトナムで、調査した店舗の半数以上で販売が確認された。もっともよく販売されていたのはクマノイ本体および錠剤で、調査した店舗の半数の店舗でみられた。またクマの胆汁製品の出所として多く報告されたのは、中国であった。

 調査でみつかったクマノイ製品の原産地に関する分析からは、輸出入規制が一般的に軽視されていることが明らかとなった。そのため違法なクマノイの国際取引を効果的に阻止し、クマを利用から守るためにワシントン条約で必要とされている要件を施行できていないことになる。

 クマノイの国内取引は、中国本土では厳格な規制のもと合法であり、日本でも合法である。しかしカンボジア、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナムといった東南アジアの国々では違法である。アジアに生息し、調査でも取引されていると報告されたツキノワグマやマレーグマは、ともにワシントン条約の附属書Iに掲載され、その部分や派生物も含めて国際的に商業取引することは禁止されている。

 「ワシントン条約は、国際的な野生生物取引を規制する世界でもっとも力のあるツールである。しかし抑えきれないクマの部分や製品の違法取引は、こうしたワシントン条約の機能を損ない続ける」とこのレポートの著者でトラフィックサウスイーストアジアのシニアプログラム・オフィサーのケイトリン・エリザベス・フォーレイは言う。

 
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■レポートはこちらからダウンロードできます。
『Pills, Powders, Vials & Flakes: The bear bile trade in Asia』

■このレポートに関するショート・プレゼンテーションがこちらから見られます。
http://prezi.com/y_mqfj2c8acx/the-bear-bile-trade-in-asia/
 

 日本は有害鳥獣捕獲や合法的なハンティングによって、過去5年間にも1万2000頭以上*のクマ(ツキノワグマとヒグマ)を捕殺している。また、東南アジアの国々とは異なり、国内でのクマノイの取引は合法とされている。日本にとってもクマとどのように共存していくのか、重要な課題であり、私たちが生物の多様性をどのように考えるかを問われるところである。クマノイの問題はそうした問題の一側面であり、トラフィックイーストアジアジャパンは日本国内でのクマノイの流通管理をめざすことで、この問題へ取り組んでいる。

 クマをめぐる状況はアジアの国や地域によって異なるが、依然として大きな挑戦である。各国それぞれが、クマノイ取引の問題に取り組んでいく必要がある。
 

*2006年度~2010年度3月(速報値)の合計捕殺頭数(環境省の「H22年度におけるクマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]」(H22年3月までの速報値))http://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/capture-qe.pdf(2010年5月16日閲覧)


関連情報
日本におけるクマノイ取引の問題

2011年05月19日
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