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FRAMING THE PICTURE: インドネシア、マレーシア、シンガポールのラミン取引の評価

2004年08月19日
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Courtesy of FRIM-UNDP/GEF Peat Swamp Forest Projec

【マレーシア、クアラルンプール発 2004年8月19日】

 世界中で違法木材貨物の押収が続いているため、主に東南アジアから得られる熱帯の硬材であるラミン取引の合法性が国際社会の監視下におかれることになる。トラフィックが発表した報告書では、主要なラミン取引国であるインドネシア、マレーシア、シンガポールの最近の状況について検討し、この価値あるアジアの木の国内および国際取引の管理を強化するためには 3 国間の協力が重要性であることを強調している。

 トラフィックサウスイーストアジアの報告書『 Framing the Picture :インドネシア、マレーシア、シンガポールにおけるラミン取引の評価』は、合法・違法取引の両方がこの種の生育地である泥炭湿地や、この種が支える脆弱な生態系に脅威をもたらす原因となっていることを示している。ラミン( Gonystylus spp. )の保護状況の悪化は、インドネシアのラミンの年間生産量が、ピークの 1970 年代の 150 万平方 m から 2000 年には 131,307 平方 m に減少し、一方マレーシアでは、 1989 年の 60 万平方 m をピークに 2000 年には 137,512 平方mまで減少し ていることから推察される。

 2004 年 4 月にトラフィックによって召集された 3 国間ワークショップでは、インドネシア、マレーシア、シンガポールからの参加者は現在の状況を改善するために重大なイニシアチブをとることに合意した。報告書はこのワークショップの成果にもとづいているが、その中の提言には、ラミン取引についてワシントン条約の条項による法施行についての 3 国間のタスクフォースを設立するという合意も含まれいる。

 「トラフィックはラミンの保護と持続的な管理のために活動しているすべての組織と同じように、ラミン取引にかかわる主要な 3 国が違法取引と闘うための問題に取り組む意欲を示したことに勇気づけられている」とトラフィックの Senior Forest Trade Advisor でこの報告書の共著者でもある Chen Hin Keong は述べている。「提案されたこの 3 国のタスクフォースが作業を開始するのが早ければ早いだけ、国際社会はいくつかの効果的な改善策が進行中であることを確信するだろう」

 
040819_port_Kelang.jpg Courtesy of FRIM-UNDP/GEF Peat Swamp Forest Projec

 ラミンはその汎用性によって価値が高い材で、 ダボ(合わせくぎ)、成型材、額縁から家具、ビリヤードのキューにいたる様々な加工生産物の形で主に取引されている。入手可能な国際ラミン取引の統計を分析したが、そこからは報告された輸出量と輸入量に重大な矛盾があることがあきらかになり、インドネシアで違法に伐採されたラミンが世界の市場に広がっていることが確認された。

 この違法取引の多くは、インドネシア、マレーシア、シンガポールにおいてワシントン条約施行のシステムが弱いことによるものである。 2001 年に、インドネシアはラミンをワシントン条約の附属書 III に掲載し、他の締約国にインドネシアからの違法な貨物の管理を支援するよう要請した。それにもかかわらず、インドネシアからマレーシアとシンガポールを経由して密輸されるラミンに関する非常に多くの疑惑があった。そして、 3 国すべて、さらに仕向先である英国、米国、カナダ、イタリアの市場で押収されている。

 この報告書の成果は、この 10 月にバンコクでおこなわれ、インドネシアがラミン(Gonystylus spp.)の条約附属書 II への格上げを提案する第 13 回ワシントン条約締約国会議での討議に、価値ある背景説明を与えるだろう。提案では、このタスクフォースの活動を含み、締約国にラミンという資源の管理を支援するための管理や手順、手段について提案している。

 世界でもっとも取引の盛んな航路のひとつであるマラッカ海峡における海賊行為の抑制に焦点をおいた最近のインドネシア、マレーシア、シンガポール間の保安に関する取り決めは、タスクフォースでの検討事項と似ている。これらのパトロールによる抑止効果は、 3 国間の法の執行が可能であることをすでに示し、ラミンタスクフォースによる施行が現実に可能であることの前例である。

 「手続き手順を明らかにし、ラミンに関する情報をこれら主要 3 ヵ国で共有することによって、違法取引を完全防止とはいわないまでも最小にすることができ、他のワシントン条約締約国に地域的な解決が可能であることを実証できる」と、 Chen Hin Keong は述べている。


※レポート全文がダウンロードできます。
●英語原文(個人コピー用)
Framing the Picture: an Assessment of Ramin Trade in Iindonesia, Malaysia and Singapore. トラフィックサウスイーストアジア作成

●日本語版(個人コピー用)
FRAMING THE PICTURE: インドネシア、マレーシア、シンガポールのラミン取引の評価(pdfファイル:3MB) トラフィックサウスイーストアジア作成/トラフィックイーストアジアジャパン訳

■詳細に関するお問い合わせ
Chen Hin Keong, Senior Forest Trade Advisor for TRAFFIC, Tel:60-12-234-0890, email:hkchen@pc.jaring.my
Maija Sirola, Communications Co-ordinator for TRAFFIC, Tel: 44-1223-277427, email:maija.sirola@trafficint.org


編集者へのノート
3 月のワシントン条約の第 50 回常設委員会でラミンの問題が持ち上がった後、ワシントン条約事務局は、第 51 回常設委員会- 2004 年 8 月に第 13 回ワシントン条約締約国会議に先立ってバンコクでひらかれる-で提出する違法なラミン取引に関する報告の準備を課された。この報告書は現在、ワシントン条約のウェブサイト( www.cites.org )で見ることができる。
トラフィックサウスイーストアジアの、過去 18 ヵ月にわたるラミンに関する仕事は、英国の Foreign and Commonwealth Office 環境基金の寛大な支援に支えられてきた。

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