ホーム野生生物ニュース水産物ニュース>カムチャッカでは違法なサケが主な収入源に

野生生物ニュース

カムチャッカでは違法なサケが主な収入源に

2009年01月29日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 

© Dmitry Shpilenok /WWF Russia
© Dmitry Shpilenok /WWF Russia
 

【ロシア、モスクワ 2009年1月29日】
 カムチャッカ半島の村人は、ほぼ唯一の収入源としてサケの密漁に依存している、ということがWWFロシアとトラフィックが今日発表した新しいレポートによって明らかになった。

 このレポートでは、5種のサケ(カラフトマス、 シロザケ(サケ)、ベニザケ、 ギンザケ、マスノスケ)のカムチャッカにおける密漁(いわゆる違法、無規制、無報告(IUU)漁獲といわれる)の程度を評価し、この地域における各国のこれら5種の輸入について分析した。

 このレポートの中では、ロシアのベニザケのほとんどが日本に輸出されており、日本がロシア産の最大のマーケットとなっていることが指摘されている。

 「サケはカムチャッカの経済にとってかかせないものだが、資源量は持続可能でない違法な漁獲によって脅かされている」とこのレポートの著者でWWF-トラフィックコーディネーターのナターリア・ドゥロノヴァは言う。

 彼女は、「この欠くことのできない経済資源の将来を保証するためには、今日どうこれらを取り扱うかにかかっている」と言う。

 サケは主に、キャビアの安価な代用品として販売される魚卵(卵)を獲るために密漁される。

 このレポートによれば、産卵域でのサケの密漁がかなり増加しており、これらは道路事情がよくなったことでその場所にアクセスしやすくなったことや、ロシアの経済状況、そしてサケに対する取引規制が緩和されたことを含み、様々な要因によって引き起こされている。例をあげれば、2003年から2006年には、シロザケの実際の漁獲量は公式に報告された量の平均して1.5倍であった。

 「技術的な難しさや汚職などのために密漁と闘うことを困難にしている。そしてなぜなら違法なサケの漁獲が、カムチャッカの村人たちにとってのほぼ唯一の収入源であるからである。」

 現在のところ、合法的な漁業団体が存在している川において、密漁は家計の約30%の収入となっている。しかし合法的な漁業事業体によって使用されていない川においては密漁によって得られる収入が家計の90%あるいは100%にも及んでいる。

 このレポートでは、サケの合法的な加工という選択肢を向上させ、さらにその地域への観光事業を増やすことなど別の形態の雇用を提供することが、サケの違法漁獲の程度を抑えることになるだろう。地方や連邦政府の法執行活動の改善もまた、サケやサケを基盤としたカムチャッカの人々の暮らしを守る手助けとなるだろう。

 このレポートは、ゴードン&ベティ・ムーア基金(Gordon and Betty Moore Foundation)の支援により、『カムチャッカのサケとその生息域の保護』"Conservation of Kamchatka salmon and its habitats"プロジェクトの一部として委託を受け作成されたものです。

 

レポート(英語)のダウンロードはこちらから
『Illegal, Unreported, and Unregulated Pacific Salmon Fishing at Kamchatka(カムチャッカにおける違法、無報告、無規制の太平洋サケ漁業)』

**************************************************

■詳細に関するお問い合わせ

Masha Vinokurova mvinokurova@wwf.ru +7 495 727 09 39 or +7 903 273 60 79 (mobile)

Daria Kudryavtseva+7 495 727 09 39 or +7 916 545 29 86 (mobile).


2009年01月29日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

20170715c.jpg

香港で史上最大級7.2tの密輸象牙を押収

2017年07月18日

2017年7月4日、香港税関は葵涌(クワイチョン)でコンテナに隠された7.2tの密輸象牙を押収した。年に2万頭を超えるアフリカゾウが密猟されている中で起きた今回の摘発は、過去30年で最大級の規模と見られており、象牙の違法取引をめぐる国際的な組織犯罪の深刻さを物語っている。こうした一連の野生生物の違法取引に問題に対し、各国政府は今、強く連携した取り組みを進めようとしている。合法的な象牙の国内市場を持つ日本にも、この流れに参加する積極的な姿勢と取り組みが強く求められている。

©Keiko Tsunoda

170710_elephant.jpg

楽天がオンライン店舗での象牙製品販売を停止

2017年07月10日

楽天株式会社が楽天市場での象牙製品の販売行為を今後認めないことが明らかになった。現在、日本国内で合法的に販売されている象牙製品は、近年のアフリカゾウの密猟とは因果関係がないとされている。しかし、トラフィックの新たな調査でも、急成長を続けるeコマースを通じた象牙取引については、法律の整備が追いつかず、対応しきれない状況が続いていることが明らかになっており、トラフィックとWWFジャパンも厳しい措置を求めていた。日本のe-コマース企業の判断としては、大規模な今回の楽天の決定が、他企業にもより厳しい対応を迫るものとなることが期待される。

©Steve Morello / WWF

170622_elephant.jpg

日本国内での象牙取引で違法事例
古物商ら27人が書類送検 

2017年06月22日

2017年6月20日に象牙18本を違法取引した容疑で、都内の古物商と従業員、その顧客ら27人が書類送検されるという大規模な事件が報道された。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内の違法取引が意味するところとは何か。国内市場管理の問題点と、トラフィックとWWFジャパンが提言する国内違法象牙ゼロに向けた課題を紐解く。

@Martin Harvey / WWF

関連出版物

17_SBT_Market_in_China.jpg

The Southern Bluefin Tuna Market in China

発行:TRAFFIC Hong Kong【2017年6月】 著者:Joyce Wu【英語】50pp

17_The_Shark_and_Ray_Trade_in_Singapore.jpg

The Shark and Ray Trade in Singapore

発行:TRAFFIC,Malaysia【2017年5月】 著者:Boon Pei Ya【英語】59pp