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天然アワビの商業的漁獲を2007年11月1日から禁漁とするという南アフリカ政府の決定は、アワビの密漁を減らすことにつながらないと、トラフィックは指摘する。
「その決定は誠実におこなわれたが、その産業に影響を及ぼしている真の問題は天然アワビの違法漁獲や違法取引である」とトラフィックのシニアオフィサーのマーカス・バーグナー氏はいう。
何年かにわたり、高い水準で違法に漁獲、取引されたアワビは、その資源量を減らし、結果として合法的に漁獲していた漁民に対する年間の割当量を減少させる結果を招いた。
「南アフリカのアワビ漁業が危機的なのは明らかである。しかし禁止することが必ずしも解決策となるわけではない」とバーグナーは言う。さらに、1990年代の3年間のチリのアワビ漁の禁漁は、闇市場でのアワビの価格を上げ、違法漁業を悪化させたと加えた。
禁漁は、包括的な法執行、調査および社会経済的取り組みが整備され、将来のアワビ管理計画に直接かかわる利害関係者がいるところにおいてのみうまくいくだろうと、トラフィックは警告している。
南アフリカ環境・観光省の声明のなかで、シャルクヴェイク大臣は、その産業で生計を立てているたくさんの人々や家族に影響を及ぼすため、下すことが難しい決定であったと言った。
「仮に大臣の目的をアワビ資源の保護とするなら、彼は誤った決定をしたことになる」とケープタウン大学の環境評価ユニットのシニアリサーチャーであるマリア・ホーク氏は述べた。彼女は10年以上もの間、アワビ漁業の社会経済問題を研究してきている。その研究結果は明らかに、産業が枯渇する危険にあり、かつ悪影響が残る結果になるだろうと指摘している。
「大臣は合法的な漁師達を遠ざけている。彼がその産業を保護する戦略を作り上げるために協力しなければならないのは、まさにこの漁師たちである。」
バーグナーはこう言う。「大臣が、その部門での監視と管理の拡大について言うことは私たちにとって励ましとなる。しかし、何年もの間資源を脅かす主な要因が密猟であるとき、なぜ禁漁ということだけが起こるのか疑問である。」
ホーク氏は「法執行の取り組みは、漁業を保護するために施行されるべきである。そしてそれはアワビの違法取引に対抗する多くの戦略のひとつとして考えられるべきである」と指摘し、似たような問題について発言した。
2007年6月にバーグナーとホーク氏による共同声明では、漁の禁止について大臣に警告し、結果として多くの悪影響が起こりうるだろうと強調した。
彼らは「長期にわたる持続可能な漁業...実施されるべき管理の観点から」ということを主張した。
さらに、「すべての利害関係者が関与し、彼らの支持のともなった統合戦略」が、アワビ漁業の将来を守るために必要だと主張し、かつその禁漁が実はさらに現状を悪化させるかもしれないと警告した。
■詳細に関するお問い合わせ
Markus Burgener, Senior Programme Officer, TRAFFIC East/Southern Africa.関連ニュース
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