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【オーストラリア、キャンベラ発 2007年10月23日】
みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の第14回年次会合が閉幕したが、この会合で委員会は設立目的である水産資源や他の海洋生物の管理や保護にあたって意義のある行動をとることができなかったと、トラフィックは指摘する。
「委員会では、ミナミマグロThunnus maccoyii を絶滅に追いやる要因となっている過剰捕獲を防ぐためのいかなる進展をみることもできなかった」とトラフィックのグローバル海洋プログラムのリーダーであるグレン・サントは言う。
「会議では、議論が堂々巡りを繰り返し、どこにもたどり着けず紛糾した」とサントは言う。
ミナミマグロの資源量は手つかずのときの資源量の10%以下しか残されていない、歴史的にみても低いレベルにある。委員会によっておこなわれたレビューでは、加盟国による大量な過剰漁獲が示された。しかし日本は、これらの責任への指摘について秘密を保持し続けている。
この会議に先駆けて公表されたWWFのレポートはまた、操業中に偶発的に混獲される種をいつもきまって取り扱えないやり方についても委員会を激しく批判している。
「委員会はまた、アホウドリ類やミズナギドリ類やウミガメ類の混獲に関係することについては合意を得られなかった」とWWFオーストラリアの持続可能な漁業に関するスポークスマンであるロレイン・ヒッチは言う。「彼らは、データ収集のような混獲の管理のもっとも基礎的な側面にすら合意できなかった。」 「これらの種について規制のない、非持続的な漁獲の継続を認めることは受け入れられない。なぜなら、日本は、CCSBTによる拘束力を持つ、混獲を減らすために策定されうる対策について考慮していないからである。これはただ行動する必要がないとするための妨害作戦である」と彼女は言う。
NGOのオブザーバーがCCSBTの討議内容を見ることがはじめて許された。
「NGOのオブザーバー参加を認めることは、ミナミマグロの管理をとりまく秘密主義のベールを取り去る上での前向きな一歩であった」とサントは言い、それに14年もかかったとは信じがたいと言い添えた。
「少なくとも現在どんな人でも、何が問題で、誰がその問題に取り組むための行動を取り損ねているのかを見ることができる。」
トラフィックとWWFは、より幅広い保護の団体が、過剰漁獲や海洋での混獲に取り組み、ミナミマグロ資源の持続可能性を確保するための政府や産業界のリーダーによる行動を求めていくべきだとしている。
* みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)のレポート全文はこちらでダウンロードできます。(CCSBTのサイトへ)http://www.ccsbt.org/docs/pdf/meeting_reports/ccsbt_14/report_of_CCSBT14.pdf 生態学的に関連する種の管理についてのセクションは28ページから
* レポート「Behind the facade: A decade of inaction on non-target species in the southern bluefin tuna fisheries」はこちら(WWFインターナショナルのサイトへ) http://www.panda.org/about_wwf/what_we_do/marine/index.cfm?uNewsID=115601
* CCSBTの加盟国と協力的非加盟国には、日本、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、勧告、EU、南アフリカが含まれる。インドネシアとフィリピンはオブザーバーとして参加している。CCSBTの年次会合が2007年10月16日~19日にオーストラリア、キャンベラにて開かれた。
■本件に関するお問合せ先:
Richard Thomas, Global Communications Co-ordinator, TRAFFIC International,
Tel. +44 1223 279068, email richard.thomas@trafficint.org
Glenn Sant, Global Marine Programme Leader TRAFFIC International,
Tel. +61 (0) 418 416 030, email GSant@traffico.org
Lorraine Hitch, Sustainable Fisheries, WWF-Australia, + 61 (0) 428 626 552, e-mail lhitch@wwf.org.au
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