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【英国、ケンブリッジ 2007年3月7日】
最新レポートは、天然サケと養殖サケの市場での競合について初めて包括的に調査したもので、養殖と天然のサケを取り巻く賛否両論のある複雑な問題について新たな観点から検討している。
野生生物取引監視ネットワークであるトラフィックが発表した「The Great Salmon Run: Competition Between Wild and Farmed Salmon (The Great Salmon Run:天然と養殖のサケの競合)」では、過去25年間にサケ業界を一変させた2点の重要な傾向が指摘された。まず、1980年に世界供給量のわずか 2 % だった養殖サケの割合が、2004年には65%を占めるまでに拡大した。今や米国で消費される生と冷凍のサケの約4分の3が養殖である。そしてその結果、北米の天然サケ漁業の価値が急落し、例えば、アラスカのサケの年間漁獲高は、1980年代後期の8億米ドル強から現在の3億米ドル弱まで減少した。天然サケの価値の低下は、天然サケ漁民と漁村に対し、幅広い経済的社会的影響を与えてきた。
「養殖サケが満たしている市場の需要は、天然サケでは決して満たせない。レポートで指摘した要点は、天然対養殖という論争ではなく、それぞれの生産方法が適正かどうかを議論すべきだということだ」と、調査報告書の執筆者のひとりであるアラスカ大学のグンナー・クナップ経済学教授は語る。
今回の調査では、養殖サケの急増により、サケの供給量全体が激増し、入手可能なサケ製品の種類も変わり、生産時期も変わり、市場の品質基準が引き上げられたことが判明した。これらの変化は、経済と環境と取引に関する疑問を提起する。例えば、もはや北米ではサケの大半の供給源ではなくなった天然サケがどうしたら競争力を維持できるか。
レポートで提言されているもののひとつとして、アラスカのサケ生産業者に対し、持続可能な漁業により供給された天然サケであることを消費者に伝える海洋管理協議会(MSC)のラベルの使用を拡大することがある。
「消費者はラベルを見て、十分な情報に基づく選択をすることができる」と、この調査報告書の共同執筆者であるロードアイランド大学のキャシー・ローハイム経済学教授は述べている。
このレポートでは、食品安全基準による規制との調和も提言している。
*養殖と天然両方のサケの生産による環境への影響を認識し、軽減すること。
*サケの問題に関する、正確でバランスの取れた情報を提供すること。
*海産物市場と消費者に関するより良いデータの収集。
*天然サケ生産における孵化場の役割を考慮すること。
「このレポートは、人と環境の両方に対して重大な影響力を持つ非常に複雑な業界に光をあてた」と、トラフィックノースアメリカのジル・ヘップは言う。「わたしたちの目標は、多くの人々が依存する天然サケ資源とサケ漁業を守るために、このレポートが業界と政策決定者により活用されるようにすることだ。」
◆ レポートの概要については、こちらから
The Great Salmon Run:
Competition BetweenWild and Farmed Salmon
◆レポート全文については、トラフィックノースアメリカにお問い合わせください。
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