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【英国、オックスフォード発 2007年2月22日】
過剰漁獲により海洋性のサメの個体数が減っており、数種が国際自然保護連合(IUCN)の絶滅のおそれがある種のリスト(レッドリスト)に追加される。
「外洋性のサメは動作が素早く、力強く、分布域が広いという特徴により、漁業による圧力に対して抵抗力があるとよく誤解される」とIUCNの種の保存委員会(SSC)サメ専門家グループ(SSG)の共同議長であるサラ・ファウラー氏は言う。
しかしサメはほとんどの種は成長が遅く、成熟するのに時間がかかり、繁殖力が低く、過剰漁獲の影響を受けやすい。
地中海に生息するニシネズミザメとアオザメはひどく過剰漁獲されており、欧州連合(EU)は今年6月にオランダで開かれるワシントン条約締約国会議においてニシネズミザメを附属書に掲載することを提案した。
外洋性のサメは遠洋でのマグロやメカジキの漁でよく混獲されており、サメの肉を扱う新しい市場が開拓され、高価なヒレの需要が高まっているのでますます注目されるようになっている。サメのフィンニング(サメのヒレだけを切って捨てる)はほとんどの公海で禁止されているが、それに対する有効な法執行はおこなわれていない。ヒレだけを切り取られたサメの身体はよく海に捨てられ、しかも生きたままということが多い。アジアでのごちそうであるフカヒレスープの材料としてヒレが珍重されているアカシュモクザメ は、近危急種(Near Threatened = LR/ntまたはNT)から絶滅危惧種(Endangered = EN)に引き上げられた。
「国際的な漁業委員会が、影響を受けやすい種の漁獲を制限し、ヒレだけを切り取る浪費的な行為に対する規制を強めることが急務だ」とSSGの副議長 と the Shark Alliance のPolicy Directorであるソニア・フォーダム氏は言う。
鎌状の長い尾を持つことで知られるオナガザメ類は3種すべてが危急種(Vulnerable= VU)に分類された。ほかにも商業的にも釣りを楽しむ人にもよく捕獲されるアオザメは近危急種から危急種に格上げされた。世界でもっとも個体数が多く、漁獲量も多い外洋性のサメであるヨシキリザメについては、北大西洋で50~70%減少していることに科学者たちは注目しており、この種を保護する対策がとられていないことを危惧すると表明したにもかかわらず、近危急種のままである。
このサメの記載が改定されたレッドリストは、IUCNのサメ専門家グループが招集した国際的な専門家のワークショップの直後に発表された。このワークショップは、Lenfest Ocean Series Programmeから資金提供を受けて開催された。ワークショップには、英国、米国、カナダ、EU、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、クロアチア、エクアドルの政府機関、大学、NGO、民間団体から専門家が出席した。
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