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キャビアの割当量に疑惑

2007年03月12日
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070208sturgeon.jpg © WWF-Canon / Thomas NEUMAN
【ロシア、モスクワ発 2007年2月8日】

 ワシントン条約はオオチョウザメ(ベルーガ)とアムール川流域原産のチョウザメ2種から採れるキャビアの1年間輸出禁止措置を解除した。トラフィックとWWFは、この決定がロシア連邦が設定した2007年の漁獲割当にもとづいていないことを憂慮している。

 トラフィックとWWFは、漁獲割当が設定された的確な科学的・法的根拠が明らかになるまでは、これらのチョウザメ資源から採れるキャビアを輸入しないように諸国に働きかけてきた。

 「オオチョウザメとアムール川原産のチョウザメ類の漁獲割当は科学(調査)目的や生息域に戻す目的のためにのみ設定されたものであり、ロシア連邦からの商業目的の輸出割当量が何の数字を根拠としているのか明確ではない」とロシアにおけるトラフィックプログラムのシニアプログラムオフィサー、アレクセイ・ワイズマンは言う。

 たとえば、近年は、ダウリチョウザメ(カルーガ) Huso dauricus またはアムールチョウザメ Acipenser schrenkii のいずれにも商業割当はまったく設定されていなかったが、2007年には科学(調査)目的のための捕獲についてはそれぞれ 14 t と 13 t と設定された。これはダウリチョウザメのキャビア約1,120 kgとアムールチョウザメのキャビア約300 kgに相当するが、申告された輸出割当はそれぞれ2,560kgと1,900kgであった。

 これら割当に、前年に採取されたキャビアあるいは加工されたキャビアが含まれているのかどうかさえも不明である。いずれもワシントン条約の下では認められていない。

 TRAFFICとWWFは、ロシアチョウザメ Acipenser gueldenstaedtii のロシア連邦からの輸出割当量が2005年の14,000kgから今年は20,000kgにまで増加したこと、しかし一方ではこの種の漁獲割当量(魚の水揚げ量)が2005年の 230 t から2007年には 110 t に減少していることにも注目している。2007年のキャビア輸出の著しい増加は人工繁殖用の孵化場に使用される魚卵の量を減らすための様々な計画によるものだと考えられる。

 「これは、種の存続をほぼ完全に人工繁殖に依存しているロシアチョウザメにとっては深刻な懸念となるだろう」とワイズマンは言う。「放卵場の半分以上がダムによって遮断されている上、ボルガ川下流では違法漁業のため成熟したメスはほとんどいない。」

 トラフィックとWWFはまた、ロシア連邦がキャビア輸出に標準のラベリングシステムをまだ実施していないことについても懸念している。ワシントン条約では、締約国はキャビアの国際統一ラベリングシステムの規定を遵守していなければキャビアの積荷を受け入れるべきではない、と勧告している。

 カスピ海周辺の生息国―アゼルバイジャン、イラン、カザフスタン、ロシア連邦、トルクメニスタン―はベルーガキャビアの2007年の総合輸出割当量を 3,761kgとすることで合意したが、これはこの製品の取引が最後に許可された2005年よりも29%低いものとなっている。

 ロシア連邦産のキャビアの2007年輸出割当量は、オオチョウザメ(ベルーガ) Huso huso 700kg、ロシアチョウザメ(オシェートラ)20,000kg (2005年の14,000kgから増加)、ホシチョウザメ(セブルーガ) Acipenser stellatus 3,500kg、ダウリチョウザメ(カルーガ) 2,560kg、アムールチョウザメ 1,900kgとなっている。これら 5 種すべてが国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種(EN)に分類されており、ワシントン条約はチョウザメ資源の適切な監視を確実におこなうこと、また、チョウザメおよびヘラチョウザメ漁の持続性を促進することを全生息国に強く要請した。

 提案されているオオチョウザメおよびアムール川のチョウザメの取引レベルは、他のチョウザメ種のものよりも低いが、これらの種の少なくかつ減少しつつある。現在の生息数を考慮すると、かなり高い割当となっている。

 「このように高い割当量はこれらの種の存続に破滅的な影響を及ぼすだろう」とワイズマンは警告する。

 「キャビア1kg は、生きた魚10 kgに相当する」。

2007年03月12日
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