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CITES COP14:商業的に取引されている種は敗者となった

2007年06月21日
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070615shark.jpg アブラツノザメSqualus acanthias

【オランダ、ハーグ発 2007年6月15日】
第14回ワシントン条約締約国会議は6月15日に閉会した。トラフィックとWWFはいくつかの保護に関する適切な決定を賞賛する一方、その他については機会を失ったことを悔いている。

 「いくつかの観点からみれば、この会議は成功であった。それは、ヨーロッパウナギやノコギリエイ類、アフリカゾウやトラである。しかし商業的に取引されている数種の保護を支援する機会を各国が逸したことは深刻な問題である」とWWF野生生物保護プログラムのディレクターであるスーザン・リーバーマン博士は言う。

 「トラフィックとWWFはこのワシントン条約会議でおこなわれたいくつかの決定について喜ばしく思っている」とトラフィックの事務局長のスティーブン・ブロードは言う。「しかし附属書に掲載することは始まりでしかない。ここでおこなわれた決定の成功を支えることは、強い政治的意志と適切な法執行が必要だということだ。」

 違法な野生生物取引と立ち向かい、野生生物を輸出する国々をサポートするための欧州連合(EU)の執行行動計画のお披露目は、正しい方向に向かう前向きな一歩であったとトラフィックとWWFは言う。しかし、トラフィックとWWFはまた、世界規模でおこなう執行にはお金が必要であることを警告し、締約国諸国が条約を施行するに十分なさらなる資金を工面することができなかったことについて失望している。

アフリカゾウに関する譲歩

 通常通り、アフリカゾウの議題は会議における議論の多くを占めた。このワシントン条約会議の直前に、南部アフリカ3ヵ国の象牙の限定的な売買が正式に認められた。締約国会議の最終日の前日に、いくつかの緊迫した交渉がおこなわれた後に、ザンビアとチャドがすべてのアフリカゾウの生息国の代表として妥協案の文書を提出した。

 全会一致で採択されたその文書では、2002年から蓄積してきたボツワナ、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエの在庫象牙を含めた象牙の一回限りの売買への追加増量を認めている。売買の後は、未加工象牙(raw ivory)のさらなる売買については9年間一旦停止される。

 「対立する派閥が象牙の議論を前に進めるために声をそろえて発言するのは、ほぼ20年間ではじめてのことだ。しかし象牙の密猟や、アフリカやアジアの違法な国内象牙市場にどのように取り組むかというカギとなる問題については答えはまだ出ていない」とリーバーマンは言う。

トラ牧場(タイガー・ファーム)に対抗する強い決定

 保護に関して注目に値する成果として、全会一致で採択されたワシントン条約の「決定」がある。これは、トラの部分の取引のためのトラの飼育繁殖を拒絶し、大規模な商業的なトラ牧場を徐々に廃止していくというものである。その間、突然の発表があり、ワシントン条約事務局が、トラ牧場が違法なトラの肉の売買に荷担していることについて調査するよう中国政府に求めていたと述べた。

 「世界は明らかに中国に対し、トラの部分のいかなる取引も再開しないよう、野生のトラに対する保護を強化するよう強く要請している」とリーバーマンは言う。

サイ類に関する提言

 会議で提出された新しいトラフィックの調査によれば、2000年から違法に取引されるサイの角の量に、気がかりな増加があることが明らかになった。レポートに書かれたアフリカのサイに対するよりよい法執行や保護対策への提言は、締約国によって採択された。

サメ類にとっては幸、不幸が入り混じる

 WWFとトラフィックは、2種のサメ、アブラツノザメとニシネズミザメが、厳しい条件下での取引を認める附属書Ⅱに掲載されなかったことを残念に思っている。しかし、1種を除くノコギリエイ(エイのようなサメ)を、すべての商業取引をしないようにする附属書Iに掲載したことを歓迎している。この例外の1種は附属書IIに掲載された。

 「アブラツノザメとニシネズミザメを附属書に掲載できなかったことには特にがっかりしている」とスティーブン・ブロードは言う。「今回の会議は、これらの重要な水産種の衰退をくい止める決定的な機会を逃したことで歴史に名を残すかもしれない。」

木材種の提案はほとんどが撤回

 EUは、チャンチン属Cedrela (ラテンアメリカに生育する熱帯樹木種)を附属書に掲載する提案を、ラテンアメリカやカリブ諸国からの敵対的な圧力に直面し、撤回した。WWFとトラフィックは、危機に瀕したこの種の取引について、ワシントン条約の附属書への掲載により、より良い管理と対策をおこなうという絶好の機会を逃したとして遺憾に思っている。

 「もうひとつの熱帯樹種であるオオバマホガニーを附属書IIに掲載するまでに10年かかり、その結果この種は今商業的な絶滅の淵にある」と、WWF野生生物種保護プログラムのシニアポリシーアナリストのクリオナ・オブライエンはいう。「もし現在の伐採のレベルが続けば、同様のことがチャンチン属Cedrela にも起こるだろう。」

 ひとつを除くすべての熱帯木材種に関する提案は撤回された。残ったひとつはブラジルボクで、これは楽器の弓など、製品の種類によっては対象から外す例外を認めるという注釈をつけた上で掲載されることになった。

ヨーロッパウナギのより強力な保護

 ヨーロッパウナギは、分布域のほとんどにわたって衰退していて、過剰漁獲や汚染によって現在生息が脅かされている。ヨーロッパウナギを附属書IIに掲載するということは、このマイナスの傾向が中断されることを意味する、とWWFとトラフィックは信じている。

 「ヨーロッパウナギに関するEUの提案が成功したことで、この種の取引はよく管理され合法的におこなわれるようになるだろう。これはこの種の存続にとっては必要不可欠なことである。それは保護の成果である」トラフィックのステファニー・リンゲットは言う。

ベニサンゴ、モモイロサンゴや他のサンゴ類の取引については保護されないまま

 サンゴ属Coralliumに属するベニサンゴ、モモイロサンゴや他のサンゴ種の附属書IIの掲載は、総会にて覆った。宝飾品製造に主に使われるこれらのサンゴは、国際的な取引管理がなく一貫した管理計画もない結果として過剰に捕獲されていたと、WWFとトラフィックは言う。

 「これらのサンゴは、引き続き自由競争の状態に苦しむこととなるだろう」とスティーブン・ブロードは言う。「この決定は、十分な事実の調査によりおこなわれたというよりむしろ急場しのぎ的な問題である。商業側からのロビー活動が成功したということだ。」

戦略的構想

 締約国会議はまた、ワシントン条約を保護や開発課題により幅広くリンクしていこうとする野心的な新しい戦略的構想(Strategic Vision)を採択した。

 「ワシントン条約の加盟国は今、かれらのために用意されている目標を達成するにあたって必要とされる資源を、特に発展途上国が持続可能なレベルで野生生物取引を管理するために必要としている支援、を確保するための努力をさらに進める必要がある」と、ブロードは言う。


 

◆ 詳細に関するお問い合わせ

Richard Thomas,
Communications Coordinator at TRAFFIC International,
tel +31 634163625 richard.thomas@trafficint.org

Joanna Benn,
Communications Manager, WWF Global Species Programme,
tel +31 634 163140 jbenn@wwfspecies.org

Olivier van Bogaert,
WWF International's Press Office,
tel +41 794773572 ovanbogaert@wwfint.org

TRAFFIC East Asia-Japan,
tel : 03-3769-1716

 

トラフィックイーストアジアジャパンの第14回ワシントン条約締約国会議のページはこちら

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