
ホーム>野生生物ニュース>ワシントン条約・法律ニュース>【CITES-CoP17】ワシントン条約締約国会議:一週目のハイライト
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【南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ発 2016年10月2日】
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約:CITES)」の第17回締約国会議の一週目が終わり、数多くの重要な課題について顕著な進捗がみられた。しかし、他は最終週に持ち越され、忙しい週となることは疑いない。
多くの決定について合意がなされたものの、締約国会議の最後に開かれる全体会合(プレナリー)での正式な採択を待つ必要があることに留意しなければならない。
第一週は、締約国会議前の常設委員会の開催とともに始まり、ベトナムが犀角の違法取引に対処する努力を強化するためのプロセスに関する合意がなされた。また、マダガスカルは木材の違法取引を封じる取り組みに関する報告について、今年の終わりまで猶予が与えられ、ラオスは、野生生物の違法取引への対処に失敗しているとして、注目を集めた。ラオスはそれに応えるため、トラ牧場を段階的に廃止する提案を公表した。週の後半にはトラの繁殖施設の再調査に関するワシントン条約の決定が合意された。この動きは、トラフィックの報告書『Reduced to Skin and Bones Re-examined(皮と骨に成り果てる:再点検)』の公表を受けてなされたものである。この報告書では、飼育下繁殖施設に由来するトラの押収数の増加が示されている。
正式な委員会会合では、第16回締約国会議で掲載されたサメとエイの種の附属書Ⅱの規制の施行について、好意的な報告がなされた。また、締約国会議では初めて、人工の、あるいは生物工学によって作られた野生生物製品の取引規制の必要性が議論された。これらは、絶滅のおそれのある種の野生個体群に影響を与える可能性がある。需要削減も議題に上った。需要削減は、いくつかの課題について、長期的な解決策が担保されるかどうか重要な問題となる。
ウナギの個体数や関連する法規制に関する重要なデータを収集するためのEUの提案は好意的に受け入れられた。また、「アフリカのサイの生息国の保全計画(African Rhino Range States Conservation Plan)」が、サイの保護にかかる多額の費用を支援するための「アフリカサイ基金(African Rhino Fund)」の概念を盛り込んだうえで正式に始動した。
南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)は、ワシントン条約の多くの締約国が同委員会の取引規制に協力せず、マジェランアイナメおよびライギョダマシを水域で漁獲する違法船舶に許可さえ発行していると報告した。トラフィックは、締約国に対し、メロ(マジェランアイナメ、ライギョダマシの流通名)に対する将来的なワシントン条約の規制措置の導入について検討するよう呼びかけた。メキシコは、トトアバの違法な国際取引を即座に止めるための断固たる措置を求め、賛同を得た。トトアバは、希少なクジラ目のコガシラネズミイルカという最小のネズミイルカの種と生息地を同じくしている。
附属書改正提案に関連しては、ローズウッド全種が附属書Ⅱに掲載されることが合意された。また、ブビンガとアフリカンローズウッドについて、最終製品に関する除外なしで附属書Ⅱに掲載する提案も同意された。しかし、ハヤブサ Peregrine Falcon を附属書Ⅱにダウン・リスティングする提案については、承認に必要な3分の2以上の賛成が得られなかった。
最後に、バンコクの象牙市場に関するトラフィックの調査により、過去2年間の間に、公然と売られている象牙の量が96%も減少したことが明らかとなった。これは、タイがワシントン条約の「国内象牙行動計画(NIAP)」プロセスの対象となってからの注目に値する変化である。来週には、NIAPプロセスが他の国でどのように進んでいるのかということについて議論がなされる。
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