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メロの対策 ワシントン条約の保護が欠如したまま何年も経過

2016年09月25日
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ライギョダマシ © Stuart Hanchet, NIWA, New Zealand

【南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ発 2016年9月25日】

 漁業管理機関は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」の事務局に対し、多くの締約国が取引規制に協力せず、その国の水域においてマジェランアイナメおよびライギョダマシを漁獲する違法船舶に許可さえ出していることを報告した。

 違法漁獲は、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)によって規制されている深海で漁獲されるマジェランアイナメおよびライギョダマシの両方を危険にさらしている。

 今回、CCAMLRは、同委員会の漁獲証明制度の利用に非協力的な21の非加盟国と、違法船舶に許可を発出した11の国を名指しした。前者の非協力的な国々と違法船舶に許可を発行した一カ国を除くすべての国々がワシントン条約の締約国である。

 2002年にメロ類の両方がワシントン条約に掲載提案されたが、締約国がCCAMLRの規制を遵守することを誓約したために、提案は撤回された。

 それからほぼ15年が経ち、CCAMLRは、ワシントン条約の多くの締約国からの協力が欠如しているという深刻な状況を説明した。

 「メロの違法取引をなくすために、ワシントン条約の下で取り交わされたCCAMLRと協力するという約束が反故にされたのは、国際的に不名誉なことである」と、トラフィックのシニア・プログラム・オフィサーであるマーカス・バーグナー(Markus Burgener)は述べた。

 トラフィックは2002年に、取引されるメロの少なくとも半分以上が違法に漁獲されたものであると報告した。その後、違法漁獲の水準は大幅に低下したが、違法漁獲は現在もこれらの種の保全にとって大きな脅威である。

 特に懸念されることは、一般に、違法船舶が深海の底刺し網を利用することである。底刺し網は、サメやエイなど過剰漁獲の影響を特に受けやすい種に深刻な脅威となることから、CCAMLR水域では2004年から使用が禁止されている。巨大な網はしばしば100kmを超える長さであり、海面から1.5km以上の深さまで下される。

 「南アフリカとその近隣諸国を含む多くの国は、メロの違法漁獲および違法取引の削減に向けて辛抱強く取り組んできた。これらの国によるプラスの効果にもかかわらず、CCAMLRの報告書で特定された国による不履行には失望を禁じえず、メロの合法で持続可能な取引の側面において悩みの種であり続けている」と、WWF南アフリカのHead of Environmental ProgrammesであるTheressa Frantzは述べた。

 今日の会議では、メロを漁獲、取引しているすべてのワシントン条約締約国に対し、CCAMLRの規定に沿って行動することを促す決定案について、ニュージーランドとEUが賛同を示した。決定案には、第18回締約国会議において、CCAMLRの施行の改善に関する勧告を提供することも含まれる。

 「我々は、メロを2002年にワシントン条約に掲載していれば、違法取引および取引を止めるためにより効果的な取り組みを促すことができたのでは、と疑っている。そのため、トラフィックは、25日の会議において、将来的にメロをワシントン条約に掲載することのメリットについて検討するよう締約国に呼び掛けたのである」と、バーグナーは述べた。

メロは一般的にマジェランアイナメとして売られている。
ワシントン条約に提出された報告書

 CCAMLR非加盟国で、メロの違法漁獲に従事している可能性のある違法漁船に許可を出していると報告されたのは、カンボジア、赤道ギニア、ホンジュラス、イラン、北朝鮮、モーリタニア、ナイジェリア、パナマ、シエラレオネ、タンザニア、トーゴである。北朝鮮を除くすべての国がワシントン条約の締約国である。

 CCAMLR非加盟国で、CCAMLRの漁獲証明制度に協力していない国として挙げられたのは、アンティグア・バーブーダ、ブルネイ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、エクアドル、ジャマイカ、ケニア、マレーシア、メキシコ、モロッコ、ナイジェリア、フィリピン、シンガポール、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、タイ、トリニダード・トバゴ、UAE、ベトナムである。これらのすべての国がワシントン条約の締約国である。

 CCAMLRは日本を含む25のメンバー国で構成されている。アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、チリ、中国、EU、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、ナミビア、ニュージーランド、ノルウェイ、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、ウクライナ、英国、米国、ウルグアイ。

2016年09月25日
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