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トラの生息国が取引管理について同調

2010年04月02日
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100321tiger-roger-hooper-wwf-canon.jpg アジア各国政府は、2022年までに野生のトラの数を倍増させることを約束した。©Kevin Schafer / WWF-Canon
【カタール、ドーハ発 2010年3月21日】
  野生のトラ個体群やその他のアジアの大型のネコ科の種をおびやかしている違法取引は、差し迫った懸念となっている。カタールで開催されたワシントン条約の会議で、中国などトラの生息国は、違法取引への取り組みを推し進めることで意見が一致した。13の生息国が、ワシントン条約締約国の支援を受けて飼育繁殖個体の問題へ取り組む対策を続け、体の部分や派生物の取引を目的としたトラの飼育繁殖を阻止することにも合意した。

中国では依然としてトラ製品の市場が根強く存在する。しかし中国政府や中国伝統薬の組合の協力が得られることで、消費者の需要を減らし、違法な取引を止めるために効果的な介入できることが期待できる。

 今年の1月には、現存するトラ牧場に関係する活動の規制を含む、トラの保護やトラ製品の規制に関する政策を再確認するよう、中国の国家林業局(State Forestry Administration)が指示を出した。

 カタールでの会議の直前には、世界中医薬学会連合会(World Federation of Chinese Medicine Societies (WFCMS))が北京でトラ保護へ関与していくことを宣言した。57ヵ国に195の会員組織を持っているWFCMSはその会員に対し、トラやその他絶滅のおそれのある野生生物種を伝統薬として使用しないよう呼びかけた。

 ドーハでのトラ生息国とEUの間の実質的な協議の後、トラ生息国はトラやその他アジアの大型ネコ科動物の違法取引を管理するための基盤の強化についても合意した。

  EUから提出されていた文書では、アジアの大型ネコ科動物の取引に関するワシントン条約の現行の決議を強化することを求めていたが、その文書を修正したものでは、生息国がアジアの大型ネコ科動物の保全や取引に関する報告の改善をすること;地域法執行ネットワークを設立すること;アジアの大型ネコ科動物の取引のデータベースを設けること、などが述べられている。

 改正された決議はまた締約国に対して、生息国が決議を施行できるよう、財政的、技術的な支援を提供することを求めた。

 加えて、ワシントン条約締約国は、まだ効力のある一連のワシントン条約の「決定(Decision)」の下、2007年の第14回締約国会議で始められた活動を続けることに合意した。もっとも重要なのは、この決定には、いかなる商業的飼育繁殖であってもその規模は野生のトラ保護を支援できるレベルのみに限定することとし、部分や派生物の取引のためのトラの飼育は阻止することが盛り込まれていることである。また、地域の法執行ネットワークを支援し、改正決議とトラ取引の国内管理政策との結びつきを進展させる「決定」の期限が、全会一致で延ばされることになったことも重要な点である。

 第15回ワシントン条約締約国会議においては、締約国は重要な事項であるグローバル・タイガー・イニシアティブのような国際的な保護プログラムへの支援や参加を奨励された。グローバル・タイガー・イニシアティブは、ロシア政府と共に、2010年9月にウラジオストクで開かれるグローバル・タイガー・サミットを支える原動力となっている。密猟、生息地の喪失や人の侵入、違法取引に対抗する断固としたトラ保護の取り組みを推し進めるため、サミットには生息国や関心の高い支援国の代表が集まる。

 「ワシントン条約の枠組みの強化が、中国政府やその他の生息国による協力と合わさることで、グローバル・タイガー・イニシアティブの潜在能力を果たせる基盤を提供することになる」とトラフィックのパウリーン・ヴァーヘイジは言う。

 「もし国際社会がトラを絶滅から救おうとするなら、わたしたちは中国や他の生息国と共に活動し、違法なトラの部分や製品への需要を減らし、最後に残されたトラの生息地を密猟や人の侵入から守り、トラや他のアジアの大型ネコ科動物の違法取引から利益を得ている人々に法の裁きを受けさせることが必要である。」

2010年04月02日
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