
![]() タイ税関はスワンナプーム国際空港にて押収された800kgの象牙を公開した。©Richard Barrow / Paknam.com |
【タイ、バンコク発 2009年9月24日】
トラフィックによると、タイ政府による違法象牙取引の取り締まりに対する意欲の向上が、最近の目立った象牙の押収事件や国内法の見直し、政府担当者や象牙取引業者への研修プログラムの開始などからうかがえる。
タイのワシントン条約管理当局によると、王立タイ税関局(Royal Thai Customs Department)が、8月21日にスワンナプーム国際空港で、カタールから違法に輸入された未加工の象牙316個(812.5kg)を押収したという。
昨年8月、タイ国内の象牙取引を管理するために、当政府は象牙取引業者に在庫の台帳を常に維持・更新し、それを当局が必要な時に確認できるようにする法律を導入した。
政府はまた、Wildlife Animal Reservation and Protection Act(WARPA 1992)の見直しを始めている。この法律には抜け道があり、違法取引がはびこる原因となっている。
この法律の不備については、2006年と2007年におこなわれた象牙の市場調査の結果と共に、最近のトラフィックのレポート『The elephant and ivory trade in Thailand(タイにおけるゾウと象牙の取引)』で取り上げられている。
「まだ満足のいく制度の実施には遠いものの、タイ政府は象牙違法取引に取り組む姿勢をはっきりと示している」とトラフィックサウスイーストアジア事務局長代理のクリス・R・シェファードは言う。
最近、国立公園・野生生物・植林局(Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation (DNP)) は、タイが現行の国内法とワシントン条約の下で象牙取引の規制や管理をしなければいけないことへの関心を高めるための一連の研修プログラムを、職員向けに始めた。タイは1983年にワシントン条約の締約国となった。
最初の研修は北部のナコーンサワン県で行われ、民間部門からの関心を得るために、象牙取引業者の参加も募った。トラフィックは局職員に象牙識別講習をするために招かれた。
「参加者の熱意や、8割以上の象牙と象牙の代替品が局職員によって正確に識別されたことは、とても励みになった」とシェファードは言う。
3日間にわたる2度目の講習は、各執行機関にワシントン条約の下でのタイの義務と象牙の押収を報告するための効果的な調整システムを開発する重要性への関心を高めるために、中部のサラブリー県で行われた。講習には執行担当官が、象牙が本物か偽物(大抵は骨とプラスチック樹脂)か、ゾウ(ワシントン条約掲載種)かマンモス(ワシントン条約非掲載種)かを区別できるようにすることも含まれていた。
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執行担当官が象牙の識別能力を審査されている。 © TRAFFIC |
トラフィックはワシントン条約事務局と協力して、世界中で報告されるあらゆる象牙の押収事件の記録を照合できるデータベース、ゾウ取引情報システム(ETIS)を作った。
ETISの記録を分析することは、ゾウの生息国が、どのように条約の下での義務を果たしているかの評価に役立ち、その分析によればタイが変わらず象牙の違法取引に関係している国の上位5ヵ国のひとつだと特定している。
象牙や他のゾウ製品、そしてまた深刻な問題となっている生きているゾウの取引において、その地域にある国々の中でもタイは一番重要な役割を果たしている。
タイにおいて象牙やゾウ製品の取引の記録はスコータイ王朝(1238年~1376年)まで遡れる。このように象牙やゾウ製品の取引は新しい出来事ではないとはいえ、アジアゾウはその生息域全体で減少していて、象牙の違法取引が大きな一因となっている。
トラフィックは、タイがワシントン条約やETISの下での義務を果たし、強化された国内法の執行ができるように、技術的な支援をおこなうと申し出た。
タイは、来年3月にカタールで開かれる、次のワシントン条約締約国会議に出席する予定の175締約国のひとつで、その議題として、象牙とゾウ製品の取引に対する懸念について再度取り上げるだろう。
■レポート(英語)のダウンロードはこちらから
『The elephant and ivory trade in Thailand(タイにおけるゾウと象牙の取引)』(PDF, 800KB)
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