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過剰な取引で壊滅的な打撃を受けるマレーハコガメ

2009年03月04日
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無規制の取引によってインドネシアでは絶滅に追い詰められているマレーハコガメ © Chris R Shepherd / TRAFFIC
無規制の取引によってインドネシアでは絶滅に追い詰められているマレーハコガメ
© Chris R Shepherd / TRAFFIC

【マレーシア、クアラルンプール発 2009年2月23日】
合法的な取引の10から100倍ぐらいの規模の違法取引のために、かつてはよくみられたマレーハコガメCuora amboinensis がインドネシアの各地でほとんど姿を消しつつあることが、トラフィックの新しいレポートで明らかとなった。

 このマレーハコガメは食用や漢方薬に使われる。主要な仕向先は香港、中国、シンガポールで、ほとんどがインドネシアから供給されている。また、このカメはペットとして主に米国やヨーロッパ、日本に輸出されている。

 この調査では、ジャワ、スラウェシ、スマトラ、カリマンタンにマレーハコガメを違法に取り扱っている業者が少なくとも18あることがわかった。

 それぞれの業者が扱っているマレーハコガメは平均で週に2,230頭未満だが、それらを合わせると年間で合計210万頭にもなる。この多くが輸出向けであるが、この種に対するインドネシアの公式な年間輸出割当は1万8,000頭(この数値も科学的な根拠なく設定されている)とされている。

 「現在取引されているマレーハコガメの数は、公式な輸出割当量の確実な数としては10倍となっている。そして、おそらく100倍近いだろう」とこのレポート『Status, trade dynamics and management of the Southeast Asian Box Turtle Cuora amboinensis in Indonesia(インドネシアのおけるマレーハコガメ の生息状況、取引動態および管理)』の著者サビーネ・ショップ博士は言う。

 調査された18業者のうち13が爬虫類を取引しているとして、Government's Directorate General of Forest Protection and Nature Conservation (PHKA)の地方事務所に登録されていたが、ハコガメ類の取引の登録はなかった。この登録は、PHKAが爬虫類の業者を定期的に査察するためのものである。トラフィックは前もってPHKAに対してこの調査の結果を提出している。

 リアウ州やスラウェシの採取者は、野生のマレーハコガメの数が急激に落ち込んでいると報告している。登録しているペット取引業者は十年前に比べて採集者がカメを獲るのに苦労していることを語った。

 現在のレベルで違法な採取が続けば、いずれインドネシアの全域のマレーハコガメを組織的に採り尽くしてしまうだろう。それを指し示すものが、採取や取引センターにおいてすでに明らかになっている。

 
090223SoutheastAsianBoxTurtle2.jpg マレーハコガメとホオジロクロガメ。南カリマンタンにて
©Sabine Schoppe/TRAFFIC

 マレーハコガメは2000年に、その国際取引を規制することを意図した対策としてのワシントン条約の附属書 II に掲載された。しかしレポートから、附属書への掲載に続いて取引が増加し、マカッサル、メダン、ペカンバル(Pekanbaru)、テンビラハン(Tembilahan)、バンジャルマシンの港を通して大量に密輸されていたことがわかった。

 「当局は違法取引を撲滅し、安全に採取できる数に基づいた現実的な制限を設定することに集中すべきである」とトラフィックサウスイーストアジアのシニアプログラムオフィサーのクリス・R.・シェファードは言う。

 現行法の執行力が弱いことが重要な問題であり、これは積荷に対する検査がおこなわれていないことや、ワシントン条約の輸出許可書の偽造や執行担当官の訓練不足などと組み合わさったことで生じている。

 レポートでは、例えばASEAN野生生物法執行ネットワーク(ASEAN-WEN)のようなイニシアチブを通じて、違法な野生生物取引に取り組むためによりよい訓練やインドネシアの法執行当局と輸入国の協力関係の強化することや、マレーハコガメの生息状況に関する調査をおこなうことを提言している。

注:

マレーハコガメ(英名:Southeast Asian Box Turtle、学名: Cuora amboinensis)はインドネシアに生息する29種の在来種の一種である。繁殖率が低く、そのため過剰採取の影響を受けやすい。IUCNのレッドリストではVU(危急種)に分類されている。

レポート(英語)のダウンロードはこちらから
『Status, trade dynamics and management of the Southeast Asian Box Turtle Cuora amboinensis in Indonesia(インドネシアのおけるマレーハコガメCuora amboinensis の生息状況、取引動態および管理)』

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■詳細に関するお問い合わせ

Elizabeth John, Senior Communications Officer, TRAFFIC Southeast Asia, Tel: +603 7880 3940, Email: jlizzjohn@yahoo.com

Chris R. Shepherd, Senior Programme Officer, TRAFFIC Southeast Asia, Tel: +6 012 234 0790

Richard Thomas, Global Communications Co-ordinator, TRAFFIC International, Tel: +44 (0) 1223 279068, Email: richard.thomas@traffic.org

Sarah Janicke, Species Communications Manager, WWF, Tel: +41 22 3649250, Mobile: +41 79 528 8641, Email: sjanicke@wwfint.org

 
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