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ベトナムで違法な象牙の価格が上がり アジアゾウへの脅威となる

2009年02月27日
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ベトナムでの象牙はブタの歯や骨の彫刻品と普通に混じって販売されている。おそらく政府の捜査員の目をだまそうとしているものであろう。© Daniel Stiles
ベトナムでの象牙はブタの歯や骨の彫刻品と普通に混じって販売されている。おそらく政府の捜査員の目をだまそうとしているものであろう。
© Daniel Stiles
 

【マレーシア、クアラルンプール】
 
 トラフィックの新しいレポートでは、ベトナムにおいて違法象牙の価格が急騰していることで、インドシナに残っているわずかなゾウに対する脅威が大きくなっていることが報告されている。

 『An assessment of the illegal ivory trade in Viet Nam(ベトナムでの違法象牙に関する評価)』では、ベトナムの違法象牙の価格は世界でももっとも高いかもしれない。牙はキログラムあたり1,500米ドル(約138,000円)、小さなカットピースはキログラムあたり1,863米ドル(約170,900円)で売られていると報告されている。

 「これはすでに脆弱なアジアゾウの個体群にさらに圧力を加えていることを示唆する心配な傾向である」とトラフィックサウスイーストアジアの事務局長のアズリナ・アブドゥラは言う。

 IUCN(国際自然保護連合)によると、アジアゾウはラオスにはたった1,000頭ほどしか生息していないし、一方ベトナムは150頭未満しかいないと考えられている。2008年12月にトラフィックは、ミャンマーからの生きたアジアゾウや象牙の密輸が広がっている証拠をみつけたというレポートを発表している。

 ロシアからのマンモスの象牙もまた、少量だが使われている。しかし、少なくとも2004年にはベトナムにアフリカゾウが違法に輸入されてきているにもかかわらず、アフリカゾウの未加工象牙はみられなかった。

 ベトナムでは、象牙の取引が1992年に禁止となった。しかし法律には、大きな抜け穴がある。なぜなら店は禁止前の日付のある在庫の象牙を売ることができるからである。このことが最近作られた象牙の彫刻を違法に仕入れ直すことを許してしまっている。

 2008年には、トラフィックはベトナム全域で669の小売店を調査し、73店(11%)で合計2,444の象牙製品を販売していたことがわかった。象牙市場の規模は、以前の調査より小さくなっているものの、需要が増加している兆候がみられたり、職人全体の数も2001年から増えていた。ホーチミンはもっとも小売店(49)や売られていた製品(1,776)も多かった。しかしハノイは小売店はわずか10店であったが、職人の数がもっとも多かった。

 2008年にはみられる象牙製品は2001年より少なくなったが、加工した象牙が小売店を通さずに仲介者またはインターネットによって直接購入者に販売されることがますます増えている」とアブドゥラは言う。

 「違法象牙への需要が続くことで、価格をそれだけ高くしてしまっている」とアブドゥラは説明する。

 ベトナム内外での最近の押収はまた、未加工象牙のほとんどは中国に供給されていることを示唆している。

 象牙の主な購入者を順番にあげると中国(香港や台湾を含み)やタイ、地元のベトナム人、アメリカ系のベトナム人、ヨーロッパ人であった。

 「油断のならない違法取引は、極めて絶滅のおそれの高いアジアのゾウをさらに脅かしており、阻止しなくてはならない」とWWFインターナショナルの種保全プログラムのディレクターであるスーザン・リーバーマンは言う。

 レポートでは、ベトナムは、特に象牙の押収の報告に関して、国内法やその執行を厳しくし、違反者を起訴し、小売店で販売されている象牙は政府によって押収され廃棄されるべきだというワシントン条約における義務に従うべきだと提言している。

 報告ではまた、野生生物の法執行担当官に対するよりよい訓練とASEAN Wildlife Enforcement Network (ASEAN-WEN)*への参加、この地域における象牙や他の野生生物製品の違法取引を取り締まることを目的とした同様の取り組みについても提案している。

 ベトナムでの象牙取引に関する調査はWWFオランダの支援によって行われた。またレポート『An assessment of the illegal ivory trade in Viet Nam』はラフォード・モーリス・レイング基金の支援によって発行された。


*ASEAN-WEN=ASEAN野生生物法執行ネットワーク
ASEAN(東南アジア諸国連合) 野生生物法執行ネットワークは2005年12月に、バンコクで開かれた閣僚レベル会議で正式に発足した。ASEAN 野生生物法執行ネットワークは、野生生物犯罪に対抗すべく機関間の協力を広げるため、ともに活動しているワシントン条約の当局、税関や警察を包含してい る。ASEAN-WENにおける協力機関には、国際刑事警察機構(インターポール)、世界税関機構、ワシントン条約事務局、ASEAN事務局などがある。

 

レポート(英語)のダウンロードはこちらから
『An assessment of the illegal ivory trade in Viet Nam(ベトナムでの違法象牙に関する評価)』

**************************************************

■詳細に関するお問い合わせ

Sarah Janicke, Species Communications Manager, WWF, Tel: +41 22 3649250, Mobile: +41 79 528 8641, E-mail: sjanicke@wwfint.org

Elizabeth John, Senior Communications Officer, TRAFFIC Southeast Asia, Tel: (603) 7880 3940, E-mail: jlizzjohn@yahoo.com

Richard Thomas, Global Communications Co-ordinator, TRAFFIC International, Tel: +44 1223 279068, Email: richard.thomas@traffic.org

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