ホーム野生生物ニュース動物ニュース>南部アフリカからの象牙のワンオフ「one-off(一回限り)」販売

野生生物ニュース

南部アフリカからの象牙のワンオフ「one-off(一回限り)」販売

2008年10月29日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
©TRAFFIC
 
©TRAFFIC
【スイス、グラン/英国、ケンブリッジ発 2008年10月28日】

 アフリカ4ヵ国で、2週にわたって「一回限り」の象牙の競売がおこなわれている。南アフリカ、ナミビア、ボツワナとジンバブエは政府が管理している象牙の在庫については、厳しい条件下で日本と中国へ販売することが、ワシントン条約の加盟国政府によって承認されていた。

 ワシントン条約の締約国はこの販売について、2007年に承認し、日本と中国は象牙の競売について厳格な法執行管理の要件を満たしたことに合意したのだ。最初の競売は28日にナミビアでおこなわれた。日本からのバイヤー3者と中国からのバイヤー3者が総額118万米ドルで7.2tの象牙を購入した。提供されている9 t のうち残りの1.8 t は地元の職人に利用される。

 南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエのアフリカゾウの個体群はすべてワシントン条約の附属書IIに掲載されている。そのため、もしいくつかの条件が満たされれば、許可制のもと商業取引をおこなうことができる。特に象牙の観点からみれば、販売される象牙は密猟されたゾウからきたものではないこと、すべての在庫が厳しく管理されていること、輸入国では厳格な管理システムが実施されていること、収益のすべてが輸出国でのゾウの保護プログラムと地域開発プログラムにあてられることなどが証明されていなければならない。

 WWFとトラフィックは、関係国で活発なプログラムを持っており、販売が許可される以前に各国が満たす必要がある厳しい基準を作成するにあたって重要な存在であった。わたしたちはすべての国々が基準を満たしたと確認している。WWFとトラフィックはまた、日本と中国で実施されている適切な管理機構を見直し、検討してきた。わたしたちは(象牙の)積み出しの後もこれらの管理についてしっかりと監視していく。

  象牙販売と密猟:関係は?
  トラフィックがワシントン条約締約国の代表としてとりまとめているETISからのデータによれば、1999年の日本への前回の「ワンオフ」販売の後、象牙の違法取引が減少していることを強く示唆している。

 「私たちは、この一回の販売が密猟や象牙の違法取引を活性化させるという証拠を持ち合わせていない」とWWF インターナショナルの種保全プログラムのディレクターであるスーザン・リーバーマン博士は言う。「この主張を指示する証拠はないが、WWFとトラフィックはこの問題について厳密にモニターを続けていく。」

 1999年に日本に向けておこなわれた、前の一回限りの象牙の販売に続いておこなわれたゾウ取引情報システム(ETIS)の分析によると、その後の5年間は違法な象牙取引量が減少したことを示した。ETISは、世界最大のゾウ製品の押収データ集積であり、ワシントン条約の締約国に代わってトラフィックがデータ収集をおこなっているものである。

 トラフィックの事務局長、スティーブン・ブロードによれば「ETISのデータは前回の「一回限り」の象牙販売を受けて違法な象牙取引のレベルが下がったことを強く示唆している。これらに因果関係があるのか偶然なのか、わたしたちにはわからないが、トラフィックとWWFは今回の競売がおこなわれたら象牙の押収やゾウの密猟のレベルになにが起こるのかをしっかりと見張っていく必要がある。」

 中央アフリカでは、いまだ重大な密猟が存在し、そこから(象牙が)アフリカでの国内の象牙市場に流入しており、中央アフリカは保護活動を集中させる必要がある地域である。中央・東アフリカでの密猟は、アフリカ南部の合法的な販売が促進しているのではなく、むしろ西アフリカ、エジプトや他の国の国内市場の規制の不備によるものである。

 「WWFとトラフィックはこれらの市場について、また実際のところ何が密猟を誘発し、違法な象牙取引を誘発するのかについては、憶測よりむしろ事実に注意を集中させるべきだと信じている」とリーバーマン博士は言う。

**************************************************

■詳細に関するお問い合わせ

Sarah Janicke: tel: +41 79 528 8641, email: sjanicke@wwfint.org

Richard Thomas: tel: +44 1223 279068, email: richard.thomas@traffic.org

2008年10月29日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170830ivory.jpg

国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年08月30日

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。

©Martin Harvey / WWF

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

関連出版物

17_Online_Ivory_Trade_in_Japan_JP.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引 アップデート

発効:トラフィック【2017年8月】 著者:北出智美【日本語】Briefing Paper

17_Briefing_CHI-World_Rhino_Day.jpg

Chi Initiative BRIEFING PAPER World Rhino Day 2017

発行:Chi Initiative【2017年9月】 著者:TRAFFIC【英語】24pp