ホーム野生生物ニュース動物ニュース>中国のトラ製品の取引禁止解除に懸念

野生生物ニュース

中国のトラ製品の取引禁止解除に懸念

2007年03月20日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
 
07_Taming_Tiger.gif

【スイス、グラン発 2007年3月13日】
トラフィックネットワークは、新しい報告書『TAMING THE TIGER TRADE -China's Markets for Wild and Captive Tiger Products since the 1993 Domestic Trade Ban』の中で、中国国内での、トラの取引禁止措置の解除、または緩和が、トラを絶滅に導く大きな脅威になることを指摘した。


取引き禁止に踏み切った中国政府

 2007年3月、トラフィックは、発表した新しい報告書『TAMING THE TIGER TRADE』」の中で、中国の各業界が中国政府に対し、トラの部位(骨や毛皮など)の取引を再び認めるよう、圧力を増しつつある現状を指摘。これが実現すれば、残りわずか7,000~4,000頭ともいわれる世界の野生のトラを、絶滅に追い込むことになりかねないと、警鐘を鳴らした。

 トラの骨は、漢方薬など伝統薬の高価な原料として、アジアを中心に高値で取り引きされてきた。中でも、最大の市場といわれたのが中国である。トラは、生きている個体から、毛皮、骨まで、すべてを含め、ワシントン条約によって、国から国への輸出入が禁止されている。

 しかし一部の国では、輸出入は禁じられていても、国内で売買することが法律で禁じられておらず、需要が絶えなかったことから、これがトラの密猟や密輸を呼び、間接的にトラの絶滅の危機を高める、大きな要因となっていた。

  中国でもトラの骨は長く、国内で取り引きされてきたが、トラ絶滅の危機が年々深刻になってきたことを受け、1993年、中国政府は、これらトラ製品の国内売買の全面禁止に踏み切った。
この中国政府による、厳しい規制が効果を奏し、国内のトラ製品の流通量は激減。トラの保護を強力に後押しするものとなり、WWFやトラフィックなどの自然保護団体も高く評価していた。

 

飼育個体の売買

 ところが現在、中国ではトラの取引によって利益を上げようとする業界により、政府に対し、取引禁止の解除、または規制の緩和を求める動きが、強まっている。

 トラフィックの報告書によれば、現在、中国では飼育繁殖のための大規模な「トラ・ファーム(トラ牧場)」への投資が増えているが、そこで飼われているトラは4,000頭にものぼるとみられている。投資家たちは、このような施設から生産されるトラ製品の合法的な取引を求めているとみられている。

 しかし、飼育繁殖されたトラであっても、その取引を認めることは、かつてのトラ消費の巨大市場であった中国に、再び大きな需要を生み出し、結果として野生のトラの密猟や密輸を呼ぶことにつながりかねない。部分的であれ、合法的な市場の成立を認めるようなことをすれば、絶滅寸前の状態に置かれているトラの危機は、より深刻なものとなるだろう。

 100年前、世界に8亜種が知られたトラは、すでに3亜種が絶滅、中国華南地方に生息していた亜種アモイトラも、絶滅が確実視されている。これ以上のトラの減少、絶滅を防ぐため、トラフィックとWWFでは、今回の報告書の内容を世界に発表すると共に、トラの国内取引禁止の継続や、営利を目的としたトラの飼育繁殖を一時停止すること、トラの遺骸の在庫を処分することなどを中国政府に対して求めている。



◆レポート(英文)はこちらからダウンロードできます。
『TAMING THE TIGER TRADE -China's Markets for Wild and Captive Tiger Products since the 1993 Domestic Trade Ban』

2007年03月20日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷
関連キーワード トラ 中国 薬用動物 飼育繁殖

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170830ivory.jpg

国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年08月30日

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。

©Martin Harvey / WWF

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

関連出版物

17_Online_Ivory_Trade_in_Japan_JP.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引 アップデート

発効:トラフィック【2017年8月】 著者:北出智美【日本語】Briefing Paper

17_Briefing_CHI-World_Rhino_Day.jpg

Chi Initiative BRIEFING PAPER World Rhino Day 2017

発行:Chi Initiative【2017年9月】 著者:TRAFFIC【英語】24pp