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【スイス、グラン発 2007年3月13日】
トラフィックネットワークは、新しい報告書『TAMING THE TIGER TRADE -China's Markets for Wild and Captive Tiger Products since the 1993 Domestic Trade Ban』の中で、中国国内での、トラの取引禁止措置の解除、または緩和が、トラを絶滅に導く大きな脅威になることを指摘した。
取引き禁止に踏み切った中国政府
2007年3月、トラフィックは、発表した新しい報告書『TAMING THE TIGER TRADE』」の中で、中国の各業界が中国政府に対し、トラの部位(骨や毛皮など)の取引を再び認めるよう、圧力を増しつつある現状を指摘。これが実現すれば、残りわずか7,000~4,000頭ともいわれる世界の野生のトラを、絶滅に追い込むことになりかねないと、警鐘を鳴らした。
トラの骨は、漢方薬など伝統薬の高価な原料として、アジアを中心に高値で取り引きされてきた。中でも、最大の市場といわれたのが中国である。トラは、生きている個体から、毛皮、骨まで、すべてを含め、ワシントン条約によって、国から国への輸出入が禁止されている。
しかし一部の国では、輸出入は禁じられていても、国内で売買することが法律で禁じられておらず、需要が絶えなかったことから、これがトラの密猟や密輸を呼び、間接的にトラの絶滅の危機を高める、大きな要因となっていた。
中国でもトラの骨は長く、国内で取り引きされてきたが、トラ絶滅の危機が年々深刻になってきたことを受け、1993年、中国政府は、これらトラ製品の国内売買の全面禁止に踏み切った。
この中国政府による、厳しい規制が効果を奏し、国内のトラ製品の流通量は激減。トラの保護を強力に後押しするものとなり、WWFやトラフィックなどの自然保護団体も高く評価していた。
飼育個体の売買
ところが現在、中国ではトラの取引によって利益を上げようとする業界により、政府に対し、取引禁止の解除、または規制の緩和を求める動きが、強まっている。
トラフィックの報告書によれば、現在、中国では飼育繁殖のための大規模な「トラ・ファーム(トラ牧場)」への投資が増えているが、そこで飼われているトラは4,000頭にものぼるとみられている。投資家たちは、このような施設から生産されるトラ製品の合法的な取引を求めているとみられている。
しかし、飼育繁殖されたトラであっても、その取引を認めることは、かつてのトラ消費の巨大市場であった中国に、再び大きな需要を生み出し、結果として野生のトラの密猟や密輸を呼ぶことにつながりかねない。部分的であれ、合法的な市場の成立を認めるようなことをすれば、絶滅寸前の状態に置かれているトラの危機は、より深刻なものとなるだろう。
100年前、世界に8亜種が知られたトラは、すでに3亜種が絶滅、中国華南地方に生息していた亜種アモイトラも、絶滅が確実視されている。これ以上のトラの減少、絶滅を防ぐため、トラフィックとWWFでは、今回の報告書の内容を世界に発表すると共に、トラの国内取引禁止の継続や、営利を目的としたトラの飼育繁殖を一時停止すること、トラの遺骸の在庫を処分することなどを中国政府に対して求めている。
◆レポート(英文)はこちらからダウンロードできます。
『TAMING THE TIGER TRADE -China's Markets for Wild and Captive Tiger Products since the 1993 Domestic Trade Ban』
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