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中国のトラの取引の再開は大惨事をもたらす

2005年10月25日
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【2005年9月26日 中国、北京発】
 中国ではトラとその部分の国内取引は1993年から禁止されていたが、再開に向けての可能性を試すために考えられている計画ですら、すでに絶滅のおそれのある危機的な状況にある種にとって最悪の事態をまねくことになるだろうと、WWF(世界自然保護基金)とIUCN(国際自然保護連合)の野生生物取引監視ネットワークであるトラフィックはいう。

 世界規模の自然保護機関であるWWFとトラフィックは、「トラ牧場」の飼育繁殖したトラを中国の市場で伝統薬向けに販売するといった取引再開は、世界に残存する野生のトラ個体群を脅かすことになると確信している。トラの骨はリューマチや関連の病気の治療のためアジアの伝統薬として何千年も使われてきた。

 「これはトラを絶滅に向かわせる最後の行為となる。私たちは、世界で最後となるトラの個体群の近くに住む密猟者たちが、違法な市場へ出すために彼らを殺し、これらの市場が同時に新しい合法的な市場に発展することを恐れている」とWWF野生生物種保護プログラムのスーザン・リーバーマン博士は言う。

 取引の再開はまた、消費者に誤ったメッセージを送るだろう。消費者は中国東部でのトラの骨だろうが中国西部のトラの皮だろうがトラの部分を買うことが認められるものだと考えるだろうと、WWFとトラフィックは考える。

 世界のトラは最低の記録で5,000頭前後。中国での国内取引は1993年に禁止され、インドやネパール、ブータンやインドネシアなど他の生息国からのトラ製品への需要を抑制することによってトラの保護にとって歓迎すべき後押しとなった。

 「もしこのまま進むと、中国政府が過去12年にわたっておこなってきたすばらしい仕事のすべてがなかったこととなるだろう」とトラフィックイーターナショナルの事務局長スティーブン・ブロードは言う。「中国は過去に、決然とした施行対策を通し、野生生物取引の犯罪に厳しい罰を科すことによってみずから実例を示しリードしてきた。これらすべてを翻すことは、特に伝統薬としての利用で代替品がある場合、まったくつじつまが合わない。」

 アジアのトラやチベット地域のヒョウの皮の市場が急激に成長しているために、アジア産大型ネコ種への圧力がまた増大している。また、この市場の需要を満たすため、彼らの生息域を通じて、毎年違法に捕獲されている。8月、チベット自治区の首都ラサで、トラフィックの調査員は町の中心広場で、23の店がトラやヒョウの皮や一部を公然と販売しているのを見つけた。

 WWFとトラフィックはまた、アジアの中継市場と市場でのアジア産大型ネコ種の皮や部分の需要に歯止めをかけ、取引のルートに沿った施行強化について当局に呼びかけている。

2005年10月25日
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