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メダン:インドネシアの野生生物取引のホットスポットは、国内外の巨大規模な需要にこたえている

2005年05月23日
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050510Medan.jpgメダンで売られていたLorius Lory
©Chris R. Shepherd

【2005年5月10日 ジャカルタ、インドネシア発】インドネシアのスマトラ島は世界的にも「生物多様性が豊かな地域」として認識されている。しかしこのすばらしい自然財産ゆえに、この島は長い間、大量の鳥や爬虫類、哺乳類、木材、そして他の林産製品の供給源であった。これらは、食糧や建造物、パルプや紙、伝統薬、トロフィー、美術品やペットとしての需要にこたえるためである。これまでペット向けの野生動物の取引や採取の特性や程度についてはほとんどわかっていなかった。トラフィックサウスイーストアジアのレポート『Open Season: An Analyses od the Pet Trade in Medan, Sumatra 1997-2001』 は、これらの大量取引に注目し、その多くが違法で非持続可能な状態であるという事実を明らかにしている。

 「津波と続く地震による壊滅的な打撃を受けたのち1ヵ月、メダンはスマトラの救援物資のための中心地としてさらにあわただしい輸送拠点になった」とこのレポートの著者でトラフィックサウスイーストアジアの地域プログラム・オフィサーのクリス・シェファードは言う。「アチェや他の地域の再建に国際的な注目が集まるなか、メダンの野生生物市場は依然として開かれている。トラフィックは先週3日間の調査で、123の異なる種が3,000頭以上売られていたことを記録した。なかにはこれまでこれらの市場ではみられなかった種もあった。」

 近年のメダンにおける野生生物市場を実証したトラフィックの活動は、島のかつては見捨てられた森から採取された種に対する巨大な商業的な需要があることを明らかにしている。そして野生生物の個体群に長期的な影響を与える可能性があることに懸念を抱いている。ペット用に取引される野生生物種の多くはインドネシアの法律で保護されていない。しかしメダンの市場で見られる量からすれば、インドネシア政府当局はいくつかの種の状況を一刻も早く調べなおすべきであることが示唆される。

 「もし野生生物の取引がよりしっかりと規制されなければ、多くの種がごく近い将来あっという間に絶滅に向かうのを目にすることになるだろう」とシェファードはつけ加える。「もしインドネシアの自然財産が保護されるべきであるならば、野生生物にかかわる犯罪は、他の犯罪と同じくらい深刻に扱われなければならない。続けていけるのは、合法的でかつ持続可能な取引に頼っている人々の生計だけである。」

 メダンでの野生生物取引の多くがペットとして地元の需要に供される一方、多くの種が国際的な目的地へも輸出される。それらは違法なこともしばしばである。インドネシアで4番目に大きな都市であるメダンは、インドネシアの重要な玄関口として考えられている。その野生生物市場ではスマトラから捕られたものだけでなく群島中や周辺地域から集まってくる種をも提供している。メダンは近隣諸国や長距離目的地への航路とつながる国際的な空港や港を持っており、国際的な野生生物取引の中継地としても大きな役割を果たしている。

 このレポートの調査は、1997~2001年の間に原則的に月ごとに、トラフィックが都市の主要な野生生物市場でおこなったものだ。これらの調査で合計300種の鳥、34種の哺乳類、15種の爬虫類が記録された。何千もの動物が毎年これらの市場を通過していくことがわかる。これらの取引が現存の野生生物個体群に与える影響をさらに調査する必要があることは明らかだと指摘している。

 1997~2001年に市場で見られた349種の動物のうち70種(20%)は完全にインドネシアの法律(Conservation Act (No. 5) of 1990)によって保護されている。インドネシアの法律はこれらの種に適切な保護を規定している。しかし取引業者や採取者の多くはあからさまにこれらの法律を無視しており、施行効果を上げ、より努力していくことが急務である。

 「こういった市場への取り締まりや、法に違反しているとわかった取引者を起訴することが急務である」シェファードは言う。「もし取引を運営している組織的なネットワークを破壊し、違反者を思いとどまらせるための明確な抑止力や罰則が与えられなければ、状況は変わらないだろう。」

 トラフィックサウスイーストアジアは最近、インドネシアのワシントン条約管理当局であるthe Directorate General of Forest Protection and Nature Conservation (PHKA) と協力に関する覚書(Memonrandum of Understanding)を取りかわした。この覚書では、インドネシアの野生動植物種の取引の管理を改善することに焦点があてられている。

 「インドネシアで野生生物のペット取引をモニターし、違法取引に対する執行業務を強めていくことは依然インドネシア政府にとっての優先課題である」とインドネシアのワシントン条約管理当局のDr. Samediは言う。「われわれは、スマトラのほかの政府担当者とともに取り組み、生物多様性の保護に関するインドネシアの法律に反する取引者への厳重な 取り締まりを続けていく。この点に関してトラフィックサウスイーストアジアとより密接に取り組んでいくことを期待する。」

※メダンの市場をモニターするこのトラフィックの調査は、Leuser Development Programmeの支援によっておこなわれた。この報告書はWildlife Conservation Societyからの追加の資金援助によって発行された。

●レポート「Open Season: An analysis of the pet trade in Medan, North Sumatra 1997-2001」の全文がダウンロードできます。(個人コピー用)トラフィックサウスイーストアジア作成

◆詳細に関するお問い合わせ
・Chris R. Shepherd, Regional Programme Officer, TRAFFIC Southeast Asia, Tel: +60 3 7880 3940 or mobile +60 12 234 0790. Email: cstsea@po.jaring.my

2005年05月23日
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