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第50回ワシントン条約常設委員会についてと第 12 回ワシントン条約締約国会議にて合意された一回限りの象牙売買に関して

2004年04月19日
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(2004. 4.19 更新/2004.9.15 一部訂正)

 これは、ワシントン条約の第 50 回常設委員会( 2004 年 3 月 15 日~ 19 日)開催にさきがけ、 3 月 14 日にトラフィックネットワークが発表したものです。

『A TRAFFIC Network Briefing Document "The 50th Meeting of the CITES Standing Committee and the One-Off Sale of Ivory Agreed at CITES CoP12" (PDF,178KB)』の概要です。

【2004年3月14日】

 「第 50 回ワシントン条約常設委員会についてと第 12 回ワシントン条約締約国会議にて合意された一回限りの象牙売買に関して」

 トラフィック・ネットワーク・説明資料

トラフィック イースト/サザン アフリカ   ディレクター トム・ミリケン 

 2004 年 3 月 15 日~ 19 日、スイスのジュネーブにて開催予定の第 50 回ワシントン条約常設委員会では、数多くのアフリカゾウLoxodonta africana に関する討議がなされる予定である。主要国における国内象牙取引についての審査報告や、承認された象牙取引における「detrimental impact (有害な影響)」の定義と判断基準を定める手順についての討議が議題にあがっている。また、もっとも古く、もっとも大きく、もっとも論議をよぶ、アフリカの象牙の在庫についても議論される模様である。ところが、現在人々の注目は誤って、南アフリカからの未加工象牙緊急取引に関する予測に集まっている。この資料文書にて、トラフィックは論議されている問題を精査し、常設委員会が来たる会議で何をし、何をしない予定なのかを概説する。

1. アフリカゾウのワシントン条約附属書掲載に関して、 2002年11月のワシントン条約第 12 回締約国会議の成果は?

  第 12 回締約国会議では、ナミビアと南アフリカが(ジンバブエは含まない)、それぞれの国内のゾウ個体群の掲載について定めたワシントン条約附属書 II ・注釈を変更し、未加工象牙の暫定的な一回限りの将来的な取引を定めた。この規定は象牙の原産地・大きさ・量、今後の取引相手の認定、取引の時期について制限するものであり、取引を起こすにあたって必要な条件も含んでいる。また取引後の象牙の発送方法および取引によって将来生じるあらゆる利益の分配についても規定している。加えて、この取り決めを管理統制するための検証・承認作業における、ワシントン条約事務局と常設委員会の明確な役割と責任範囲も規定している。しかしながら、ワシントン条約締約国は、未加工象牙取引の年次割当量承認の用意がなく、第 12 回会議ではこれに関する要請は討議からはずされた。

  その他のゾウ製品に関しては、ボツワナとナミビアも注釈の範囲を拡大し、非商業目的の皮革製品の取引およびゾウ皮の取引が認められた。一方で、どちらの国も非商業目的の加工済み象牙製品の取引は認められていない。この点では、ジンバブエのゾウ個体群が、第 12 回会議以前に掲載リストの性格を決定づけていた注釈の変更もなく、附属書 II に維持された。他の進展については、ザンビアが国内ゾウ個体群の附属書 II への移行を拒否し、すべてのゾウ個体群を附属書 I へ戻すというケニアとインドからの提案は取り下げられた。

  

2. ワシントン条約に従ってゾウのモニタリング調査をおこなう 2つのシステム「ゾウ違法捕殺監視システム(MIKE)」と「ゾウ取引情報システム(ETIS)」が、審議において果たした役割とは? アフリカゾウに関して、第 12 回会議でほかに重要な進展や決定はなされたのか?

  第 12 回会議では、公式議題として MIKE と ETIS の両システムが取り上げられた。当時はまだアフリカの一部の地域で MIKE が十分機能しておらず、またアジアでの進行状況も最低レベルであったため、最新の進展現況とシステムを実施していくための将来的な意向を発表するにとどまった。 ETIS については、モニタリングシステムについての決議 10.10 に明記されているすべての目的と要求を満たす最終分析レポートが提出された。 ETIS による押収データの統計的分析から、大規模かつ規制を受けない国内での象牙売買市場の存在と、多数のアジア・アフリカ諸国において法的な処置が貧弱であることが、直接的に象牙の違法取引に関係する主なものであると明確に示された。この ETIS のレポートではこの点に関して、注意を集中させるべき重点国を特定している。さらに ETIS の分析は、中国市場が出現した影響で、 1998年以降象牙の押収量が増加傾向にあることを示している。 ETIS は、常設委員会の指揮下で正規の機構を設立し、象牙の国際取引に関するワシントン条約の要求事項に照らし合わせ、主要な国内象牙売買における規定遵守を評価するよう勧告している。

  ETIS の分析結果を受けて、ワシントン条約会議直前に開催された第 5回アフリカ・ゾウ生息国対話会議(African Elephant Ranges State Dialogue)は 2件の提案を第 12回会議に提出し、両件とも採択された。決定 12.36 となった提案は、締約国、援助者および組織に向けられたものであり、ゾウ生息国における社会的な認知、対応能力の強化、法の強化および国際的な象牙取引の管理を援助する目的で財源についての規定を設けるよう求めている。決定 12.39となったもう一方の提案は、ワシントン条約事務局に対し、 10 の重点国の国内象牙市場に関して決議 10.10 (COP12改正)にあるワシントン条約要求事項の実施状況を調査するよう求めている。これらの決議にもとづいた事務局による進行状況調査は、まもなく開催される常設委員会の議題にあがっている。関連する対策となる決定 12.37 は、常設委員会に対し、第 50回会議にて事務局レポートを評定するよう指示し、規定が遵守されていないケースに対しては、関係する締約国を行き交うワシントン条約掲載種標本の商業取引の制限も盛り込まれている。

  MIKE に関連して、ゾウに関するほかの決議では、常設委員会に対し、第 49回会議までに「地理的範囲(geographical scope)」の正確な定義と「基本情報(baseline information)」となるデータの種類を統一させるよう求め(決定 12.33)、さらに象牙産出国と象牙輸入国との間での法的処置の連携を改善する対策をとるよう勧告した(決定 12.35)。加えて常設委員会は、認可された象牙取引の結果、他のゾウ個体群に対して「有害な影響(detrimental impact)」が発生したかどうかの判断に利用できる判定方法を決定するよう求められた(決定 12.34)。

  その他の進展事項として、締約国は決議 10.10 (第12回締約国会議で改正)を改正した。基本的な変更は、国内象牙売買を管理監督する要求を強化した点、加えて国内での象牙取引を認める国々の規定遵守を評価するために、常設委員会の指揮下で会議間期に実施する行程を確立した点である。さらに締約国は ETIS と MIKE の 2 つのモニタリングシステムの権限を強化することに同意し、 ETIS のサポートを目的に技術顧問グループ(TAG=Techincal Advisory Group)を設立するよう要求した。

  

 
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3. 未加工象牙の一回限りの取引に関して、第 50 回常設委員会は第 12 回締約国会議で成立した規約が同意を得たと認定する予定か? またこの会議では、南アフリカの 3 国に対し、ワシントン条約が認める象牙取引業務の再開を許可するのか?

  そのような予定はない。第 50 回常設委員会ではこの問題に関する議題はなく、象牙の国際取引の再開を認める決定は切迫したものではない。

  多くの規定が同意を得られておらず、ワシントン条約事務局も提案国自身も今回の常設委員委員会においてこうした審議を請求していない。象牙の一回限りの取引を規定する規約が同意を得られたものかどうかを話し合う討議は、今後の常設委員会にて、ワシントン条約事務局が請求した時点で公式議題として扱われることになる。

2004年04月19日
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