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南アフリカ、サイ密猟数二年連続で減るも危機的状況は続く

2017年03月01日
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クロサイ:アフリカの中でも
絶滅の危機に瀕している2種のうちの1種
© Martin Harvey / WWF-Canon

【南アフリカ共和国、ヨハネスブルク発 2017年2月27日】

 南アフリカは、2016年に国内で違法に殺されたサイの個体数が1,054頭であったとの公式データを発表した。2014年には1,215頭、翌年には1,175頭に減少を見せ、そこからさらに若干減少したことを意味しているが、依然としてその数は許容できないほど高い。

 「密猟の傾向は確かに良い方向に向かっていると言えるが、毎日3頭ものサイが密猟され続けているという事実を考えると、危機的状況が続いているとしか言いようがない」と、トラフィックのサイのプログラムリーダーであるトム・ミリケン(Tom Milliken)は述べた。

 サイの生息国の中には密猟数の公式データがまだ公開されていない国もあるが、非公式のデータから推測すると、他の諸国でも減少傾向にあるようで、特にナミビアでは2015年には94頭であったが2016年には60頭に減っている。

 意味深いことに、アフリカ全土における2016年の密猟数は2015年に記録した1,342頭を下回るとされている。これは南アフリカの減少率が、近隣であるジンバブエとナミビアにおける絶滅が危惧されている2種類のクロサイ密猟数増加傾向を相殺する以上の効果を発揮したことを意味している。

 以前、密猟による個体減少数の最多を記録したクルーガー国立公園でのサイ密猟数は、2016年には662頭であり、2015年の826頭から顕著な減少を見せた。

 「密猟発生が多いと考えられてきたクルーガーで昨年サイの喪失を抑制出来たことは良いことであるが、クワズール・ナタール州(Kwa-Zulu Natal)や他の場所での急増が目立ち、止まらぬ減少に関して内部での汚職の影響を再検討する必要がある」と、ミリケンは述べた。

 Ezemvelo KZN Wildlife(南アフリカの政府機関)の最高責任者であるDavid Mabunda氏によって書かれ、昨年の2月に発行された記事は「...私たちの高官や警察、移民当局の職員や他の法執行機関、また獣医などの専門職の間での汚職の増加。野生生物管理における数々の汚職は、私たちが目標を達成することをより難しいものにしている」と強調している。

 2016年一年を通じて、アフリカの生息諸国においてパトロールや、密猟対策のための法執行組織による努力を強化しようと様々な試みがなされてきたが、密猟者の捜査、逮捕と告発の強化/向上、そして角の主な輸出先となっているアジア、特にベトナムでの需要の抑制に向けた努力はまだ改善点が多い。

 2016年9月に開催されたワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)第17回締約国会議では、焦点が犀角(サイの角)の違法取引に深く関与していると思われる2か国として経由地や輸出地として犀角を国外に流す地点となっているモザンビークと最終消費地であるベトナムの2か国に絞られた。それらの国々では刑法の改正を効果的に実施し、国内市場における犀角需要も抑制するため手を打つよう指示された。

 「2016年がアフリカのサイの運命を左右する転換期となるかは歴史が語るであろうが、現段階ではモザンビークとベトナムいずれの国においても密猟を食い止め、消費を抑制するための有効な手が打たれているという証拠はほとんどない」と、ミリケンは述べた。

 ワシントン条約の常設委員会は今年末、これらの問題を解決するため、モザンビークとベトナムによる進捗を評価するため集まることになっている。もしもそれが不十分であると判断されれば、委員会は厳しい取引制裁を荷すであろう。

 「全ての国はこの国際的な問題を解決するために同じ土俵に上がる必要がある。まだまだ成すべきことはあり、現状に満足しているわけにはいかない」と、ミリケンは述べた。

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