ホーム野生生物ニュース動物ニュース>タイの不十分な法整備、外来霊長類の違法取引対策として機能果たさず

野生生物ニュース

タイの不十分な法整備、外来霊長類の違法取引対策として機能果たさず

2016年12月14日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷


©TRAFFIC

【タイ、バンコク発 2016年11月28日】

 ふたつの新たな調査報告書は、タイ国内の野生生物アトラクションでの霊長類の個体数と出生地についての懸念と、国によるオランウータンと他の外来霊長類(タイに生息していない霊長類)の違法取引阻止の試みが不適切な法規制により妨げられていることを示した。

 タイ国内の57施設を対象とした調査により、51頭のオランウータンが展示されていることが記録されたが、オランウータン各個体の出生地、生年月日、移動と死亡状況について明記された国際血統台帳*にはわずか21頭しか登録がなされていなかった。

 さらに、タイでの調査で確認された外来霊長類の個体数も合法に輸入されたとされる記録を上回るものであった。ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)のデータベース**の記録によると、1975年以降タイに輸入されたオランウータンの個体数はたったの5体であり、調査中に存在が目撃された1頭のニシゴリラや14頭のテナガザルに関しては全く記録を確認することが出来なかった。

 この調査『Apes in Demand for zoos and wildlife attractions in Peninsular Malaysia and Thailand(マレー半島とタイの動物園や野生生物施設における霊長類の需要)』の結果によると、「少なくとも何体かは違法な形で持ち込まれた」と示唆され、これはワシントン条約附属書Ⅰ掲載種の厳格な規制に反することを意味する。

 報告書は、この原因が外国から持ち込まれる野生生物を十分に守ることのできないタイの法規制にあると指摘している。

 例えば、野生動物の保全と保護に関する法であるWild Animal Preservation and Protection Act B.E. 2535 (1992)(WARPA)は、ワシントン条約掲載種である6種の大型霊長類と11種のテナガザルを法的保護の対象としていない。

 大型霊長類、テナガザルとその他のワシントン条約掲載種を管理するタイの法制度に関する別の分析をした報告書『A review of the legal regime governing the trade in great apes and gibbons and other CITES-listed species(大型霊長類・ギボンおよび他のワシントン条約掲載種の取引を規制する法体制のレビュー )』によれば、「現状ではこれらの野生生物を所持するいかなる人もその入手経緯を特に示す必要がなく、強制措置に持ち込むにはむしろ国側に動物が違法に輸入されたと証明する義務が生じる」。

 こういった法の抜け穴は、法執行機関がオランウータンやチンパンジーといった外来霊長類の所持を発見した際、またはこれらの種が違法に輸入された後に国内取引を十分に管理する際に、大いに困難な事態を招く。

 この法の抜け穴はタイ国内で全ての外来種の違法取引に対する法執行を困難にしており、いかにしてこの状況を改善させるかという議論は長期間に亘りなされている。アフリカゾウの象牙違法取引に関しても同様に執行が不可能であったため、2014年12月にこの外来種もWARPAの対象に含める改正がなされた。法は現在も抜本的な改正に向けて検討がなされている。

 「違法取引に関与する人々は、タイが彼らの違法行為をおこなう上で安全な隠れ家であることをよくわかっている。これらの法の抜け穴を閉じない限り、この状況は改善する余地はないだろう」と、Arcus財団の資金提供によりなされたふたつの調査書報告書の著者であるトラフィックのクレア・ビーストール(Claire Beastall)は述べた。

 この調査と法制度レビューにより、タイにおける野生生物の法規制を強化するには、罰則を重くすることや押収された野生生物の所有者不明の場合にその管理を5年間政府が負担するよう課している状況の見直しなど、多くの処置をとる必要性が勧告されている。

 しかしながら、ふたつの報告書が何より求めているのは、現在法的保護の対象となっていない、全ての霊長類やその他タイに生息しないワシントン条約掲載種をより確実に保護するためにこの対象範囲を拡大することである。

 これに加え重要なのは、動物園や野生生物アトラクションの霊長類の出生、移動および死亡を追跡することが可能な、信頼性と透明性のあるシステムの構築である。こうしたシステムがない場合、違法に入手された動物の所持を隠す機会を多く与えてしまうことになる。

 「トラフィックはタイ国内で飼育されている全ての霊長類の由来を明確にし、その出所が法に抵触していると発覚した場合、それら施設は許可証とライセンスを取り上げられるべきである」と、ビーストールは述べた。


*オランウータンの国際血統台帳は世界動物園水族館協会(WAZA)によって管理されている

**国際連合環境計画(UNEP)のプログラム:ワシントン条約事務局のための世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)によって管理されている、ワシントン条約取引データベースの記録

2016年12月14日
ソーシャルブックマーク はてなブックマーク yahooブックマーク livedoor del buzzurl
ツイート ツィート
Buzz GoogleBuzz
印刷 印刷

関連ニュース

20170909_event_2.jpg

【セミナー開催報告】ペット取引される爬虫類
-上野動物園×WWF・トラフィクセミナー-

2017年09月25日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催しました。生息地の開発や、ペットにするための捕獲、密輸により、絶滅の危機に瀕しているカメやトカゲなどの爬虫類。これらの動物は、密輸される途中で保護されても、多くは生息地に帰ることができません。なぜでしょうか?こうした日本のペットショップで販売される爬虫類の取引の現状と問題について、専門家が解説。参加者の疑問に答えました。

©トラフィック

170830ivory.jpg

国内での象牙取引で違法事例再び
古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年08月30日

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道された。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となる。さらに29日には、不起訴処分となったことが明らかになった。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっている。

©Martin Harvey / WWF

170909event.jpg

【セミナー開催のご案内】上野動物園×WWF・トラフィックセミナー
-ペット取引される爬虫類-

2017年08月23日

2017年9月9日、トラフィックは、上野動物園にて「ペット取引される爬虫類」についてのセミナーを開催します。動物園で飼育されている爬虫類の生態やペット人気の陰で絶滅の危機に瀕している種を守るための取り組みと、日本のペットショップで販売されている爬虫類の取引を巡る課題などを専門家が分かりやくお話しします。

© Michel Terrettaz / WWF

170808elephant.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引、最新報告書発表

2017年08月08日

2017年8月8日、トラフィックは、日本の主要eコマースサイトでの象牙取引を調査した報告書を発表した。調査の結果、オンライン店舗のほか、ネットオークションや個人向けフリマサイトでも活発な取引が行なわれる中、現状の規制に大きな課題があることが明らかになった。今回の調査で、これまで不明瞭だった、特にインターネットを通じた象牙取引の一端が明らかになったことから、日本政府にはあらためて、違法取引を許さない包括的な規制措置を求めていく。

©Martin Harvey / WWF

関連出版物

17_Online_Ivory_Trade_in_Japan_JP.jpg

日本におけるインターネットでの象牙取引 アップデート

発効:トラフィック【2017年8月】 著者:北出智美【日本語】Briefing Paper

17_Briefing_CHI-World_Rhino_Day.jpg

Chi Initiative BRIEFING PAPER World Rhino Day 2017

発行:Chi Initiative【2017年9月】 著者:TRAFFIC【英語】24pp

pagetop