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タイの国内象牙行動計画の施行により、バンコクの象牙市場が大幅に衰退

2016年09月30日
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時間とともにバンコクでの象牙の供給量が減少

【南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ発 2016年9月29日】

 トラフィックが実施した調査により、過去2年の間に、タイのバンコクで公然と売られている象牙の量が大幅に減少したことが明らかになった。2014年には7,421点にのぼった象牙商品の数は、今年6月には283点と96%減少した。

 報告書『In Transition: Bangkok's ivory market(過渡期にあるバンコクの象牙市場)』には、2013年1月から2016年6月まで30か月間に実施した調査のデータが含まれている。レポートは、今日、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約:CITES)」の第17回締約国会議の間に公表された。締約国会議では、象牙の違法取引への対処および象牙の国内市場の閉鎖が主要議題となっている。

 タイは、他の18カ国とともに、ワシントン条約が主導する「国内象牙行動計画(NIAP)」のプロセスの下の進捗について、締約国会議での注目の的となっている。NIAPは2013年に始まったものであり、その際には、タイは無規制の象牙市場としては世界最大の市場を持つ国であると考えられていた。

 「このような劇的な変化は、国内象牙の新たな規制と政府による法執行への公約に対する市場の反応である」と、東南アジアのトラフィックのシニア・プログラム・マネージャーであるKanita Krishnasamyは述べた。

 「タイは、国内象牙行動計画プロセスの対象となったことに、肯定的に反応した国としてとても素晴らしい例であり、公然と道端で売られている合法的な象牙が大幅に減少したことは、ワシントン条約により推進された変化を映し出したものである」。

 NIAPプロセスの対象となって以降、タイは、国内の象牙市場を規制するための象牙法(Elephant Ivory Act)を制定し、アフリカゾウの象牙の販売を違法とするための新たな規制を承認した。タイの象牙市場の変革は、WWFとトラフィックが先頭に立ち、象牙とアフリカゾウの苦境の関連性を強調した3年間のキャンペーンの成功の後に起こったものである。

 この調査は、WWF、米国魚類野生生物局(USFWS)、米国国際開発庁(USAID)の「野生生物の不正取引に関する分析と対応措置の優先順位設定(TRAPS)プロジェクト」による資金提供により実施された。調査は、これらの法制度の改正の前に始まり、施行後も続けられ、その後の動向を分析することが可能となった。

 「バンコクでの象牙店と象牙商品の数の大幅な減少はプラスに聞こえるが、法執行の取り組みにおいて、象牙の違法取引の根絶に集中し続けることが重要である」と、WWFタイのWildlife Trade Campaign LeadであるJanpai Ongsiriwittayaは述べた。「今後の法執行や監視においては、タイの他の市場も考慮すべきであり、それには新たに現れつつある象牙のインターネット市場も含まれる」。

 2016年6月と7月にフェイスブックとインスタグラム上でのオンライン取引を調べたトラフィックの別の調査では、42のサイトやグループにおいて、少なくとも2,550個の象牙製品が記録された。

 報告書では、法執行を強化するための数多くの措置を提言しており、その中には、アフリカゾウに由来するものでないことを確かめるための、登録象牙の抜き打ち検査も含まれる。

 「トラフィックは、新たな政策の枠組みの遵守を最高レベルなものとするため、市場の監視の継続やDNA検査の実施について、タイ当局と連携可能な体制にある」と、Krishnasamyは述べた。

2016年09月30日
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