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【中国、北京 2015年10月12日】
北京森林公安支局は、コードネーム「5月21日 (May 21)」と呼ばれる大規模な野生生物の違法取引事件で16人の容疑者の逮捕を発表した。これにより、804.4kgの象牙と11.3kgの犀角、35個のクマの掌を含む野生生物製品が押収された。
北京森林公安支局は、今回の押収が、密輸活動の規模においてこれまでで最大であったと記者会見で語った。公安支局は、押収品の価値の合計は、2,400万人民元(およそ4億5千万円)相当であると述べた。
違法取引の背後にいる犯罪組織は、独自の加工工場や倉庫、輸送車を所有すると言われている。この3ヶ月の捜査は、日本から香港を通って中国本土までつながる組織の密輸網を明らかにした。この組織は、広東省から山東省そして北京まで広がるネットワークを介して活動していると言われており、アンティークショップを隠れ蓑にしたり、輸送のために違法なオンライン取引や宅配便業者を利用したりした。
「トラフィックは、違法取引組織全体とそのインフラの解体を促した今回の捜査の成功について北京森林公安支局を称賛する」と、トラフィックの中国プログラム代表のZhou Fei(ゾウ・フェイ)は述べた。
「北京森林公安支局の捜査は、違法な野生生物取引を厳重に取り締まるための中国政府の誓約を明確に証明しており、絶滅のおそれのある種を保護するための国際的な取り組みを支援するものである。中国の諺"行動は言葉よりもはるかに強力(Action is far more powerful than words)"とはまさにこのことである」と、ゾウ・フェイは語った。
本件のすべての野生生物製品は、日本から密輸された可能性がある。日本では、1980年代やそれ以前から合法的に所有されている象牙や犀角といった製品の人気が急落し、人々は、家宝やその他の品々を市場へ販売している。
トラフィックが、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の締約国に代わって管理しているゾウ取引情報システム(ETIS:Elephant Trade Information System)のデータによると、日本と中国間の象牙取引は、2005年にはじめて記録され、2009年から本格的に増え始めている。2014年には、56件の押収事例の中に、「t(トン)」単位に近い象牙や、犀角が含まれ、少なくても二度、クマの毛皮が押収されている。
記者会見で発表された情報によると、2013年以来、北京森林公安支局は、違法な野生生物取引関連の事件222件を取り締まり、108人の容疑者を逮捕した。1,527kgの象牙を含むおよそ700万ドル(およそ8億4千万円)相当の野生生物製品1,321個が押収された。その(1,527kg)中で804.4kgが、今回の違法取引組織からの押収であった。
「違法なオンラインを含む野生生物市場におけるトラフィックの長年のモニタリングを通じて、われわれは情報とトレーニングを森林公安支局へ提供している。われわれは、中国政府とその国際的なカウンターパートの法執行努力への支援を喜んで継続していきたい」と、ゾウ・フェイは述べた。
北京森林公安支局は、違法な、また絶滅のおそれのある野生生物の製品を消費しないことや警察や森林公安支局に不審な活動を報告することを一般の人々に呼びかけている。また、違法な野生生物販売のオンラインを含む市場のモニタリングと、密猟と違法な搾取・過剰利用を防止することへの彼らの責任を確かにした。
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