
![]() ラザロ・ニャランドゥ天然資源観光大臣 ©TRAFFIC |
【タンザニア発 2015年6月】
タンザニアのLazaro Nyalandu(ラザロ・ニャランドゥ)天然資源観光大臣は、自国のゾウ個体群の最新の推定値を発表した。2009年に10万9,051頭と推定されてから、2014年には4万3,330頭まで急落し、過去10年間で壊滅的な減少を示した。政府の発表は、この減少が象牙目的の密猟によって引き起こされた可能性が高いと結論づけた。
「政府のデータは、タンザニアが過去10年間に何万ものゾウを失ったことを示している」、「そのような産業的規模での密猟が確認され、これまでに対処されていないことが信じられない」と、トラフィックの代表Steven Broad(スティーブン·ブロード)は述べた。
このニュースは、莫大な量の象牙の主な出所としてダルエスサラームとザンジバル(タンザニアのインド洋側)の港に、象牙密輸ルートが移っていることを指摘した「ゾウ取引情報システム(ETIS)」の2013年の報告書の中で、トラフィックが示した懸念を裏付ける。
押収記録からトラフィックがまとめた最新の情報は、2009年以来、少なくとも45t以上の象牙が、タンザニアから、アジアの国際市場に流れていることを示している。これは他のどのアフリカの国からよりも多い。犯罪科学的分析により、ウガンダとケニアでの押収にタンザニアが出所の象牙も含まれていたことが確認された。
ニャランドゥ大臣によって示された全国のゾウの数の詳細において、いくつか小さな個体群では、個体数が顕著に増加した。特に有名なセレンゲティでは、3,068頭から6,087頭に増えたことが示された。しかし、もっとも多くの人々が訪れる北部の周遊観光地以外では、象の数は、大幅に減少した。
特に懸念されるのはルアハ/ルングワ動物保護区(Ruaha-Rungwa ecosystem)で、政府のデータによると、2009年に3万4,664頭を数えたのに比べ、2014年には8,272頭であった。驚くべきことに、この減少を説明するための調査中、減少に比べ少数の象の死骸しか発見されず、野生生物当局職員は、この差異を解明するのに途方に暮れた。
ニャランドゥ大臣は、国の象を保護するための一連の措置を発表した。
◆天然資源観光省によって2014年既に雇われた追加の500人に加えて、今年、500人のレンジャー追加募集する
◆既存のレンジャーに対するより良い支援をおこなう
◆ルアハ/ルングワの主要なゾウの避難(生息)場所でのレンジャーを倍増する
◆密猟対策において、隣接するザンビアと緊密に協力する
タンザニアは、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)から、ゾウの密猟や違法取引に対処するようにと、既に圧力を受けていた。他のアフリカとアジアの国々と共にタンザニアは、その保護と執行の努力を導くために象牙取引の行動計画を構築することを要求された。
「タンザニア政府が今週発表した措置は歓迎するが、いくつかのゾウの個体群にとっては、あまりにも遅く、ほとんど効果のないものである危険性がある」と、ブロードは述べた。
「タンザニアは、中心地となっているルアハ/ルングワの象牙を放出し続けており、誰も警報を鳴らせていない。政府は、制御可能な状態にするための緊急かつ厳格な行動をとりながら、なぜこのような状態が許されていたのかをはっきりさせることが絶対に不可欠である」。
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