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違法な象牙取引に注がれる世界の目

2013年02月21日
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タイの業者が、アフリカから密輸した象牙を販売するために国内法の抜け穴を悪用している ©Dan Stiles

【2013年2月21日】

 野生生物取引を規制する国際機関は、毎年最大3万頭におよぶアフリカゾウを死傷させている象牙の違法取引に大きく加担している国々に対して、制裁を課すための手続きを開始するべきである。

 WWFとトラフィックは、違法な象牙取引の凶悪な犯罪者に対して、厳しい取引制限につながるような正式な手続きをはじめるため、ワシントン条約(CITES)の会議の下、来月のはじめ、バンコク(タイ)に集まる177ヵ国政府に呼びかけている。 

 無規制の象牙販売を禁止するワシントン条約の規則にもかかわらず、タイ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国が、蔓延する国内象牙市場に対する規制に繰り返し失敗している、という証拠がある。条約の規則の下、ワシントン条約加盟国は、木材からワニの皮革まで様々な、条約で網羅されている35,000種について、規則を遵守しない国との取引を止めるように勧告することができる。

 「これらの国は、違法な象牙取引に大きく関与している国として、過去10年間の象牙取引の分析すべてにおいて特定されている」と、トラフィックの事務局長であるスティーブン・ブロードは言う。「蔓延している密猟の危機の原因となっている象牙の需要のために、ワシントン条約加盟国は、国際法の遵守を要求しなければならない」。

 ワシントン条約の会議の開催国であり、世界で最大の無規制の象牙市場のひとつであるタイでは、犯罪者が、国内のゾウからの象牙の販売を許可する、というタイの法律を都合よく利用している。タイ国内の小売店を介して、大量の違法なアフリカゾウ象牙を合法的に見せている。この象牙の多くは、外国人観光客が購入している。

 「タイは、国のすべての象牙販売を禁止することによって、この状況を簡単に修正することができる。そうすることによって、取引の制裁措置の必要性を取り除くことができる」と、WWFのグローバル種保全プログラムのダイレクターであるカルロス・ドリューは言う。「WWFは、象牙取引の即時禁止をタイの首相に請願している。野生のゾウの未来を望むタイ国民と、世界中から約40万人がこの呼びかけに参加している」。

 「象牙取引が制御不能に急増しているため、ゾウは、アフリカで多くの場所から姿を消している。ワシントン条約を締結したすべての国は、この致命的な取引への関与について責任がある加盟国政府を保有していることで、ゾウを保護する責務を負っている」と、ドリューは言う。

 WWFとトラフィックは、合法的な国内象牙市場の執行上の重大な問題を是正するために、中国にも呼びかけている。ワシントン条約は、中国産の製品を改善するように命じるべきであり、意味のある進展がなされない場合、翌年には強力な取引制限を検討するべきである。

 全ての国が、ゾウの密猟に対処するために取り組めるいくつかの対策もある、とWWFとトラフィックは語っている。それは、世界的な象牙の保管在庫を追跡するための仕組みの設立、大口の象牙の押収すべての記録を必須にすること、各国の法執行官による所定の科学的調査と追跡捜査の協力を含む。

 「近年、大規模な象牙の押収から得られる重要な情報が、失われているか、うまく機能していない。それぞれの貨物に誰が関わっているのか、どのような輸送手段が使われたのか、その貨物から恩恵を受けるつもりだった人は誰なのかが、捜索されていないか、もしくはそうした情報がうまく活用されていない」と、ブロードは言う。

 アフリカのサイに関する窮状も、WWFとトラフィックにとって心配の種である。昨年、668という数を記録した南アフリカのサイは、角の利用のために殺された。ベトナムは、犀角において密売人たちをまだ止められずにおり、その主要な消費国として認識されている。

 ベトナムと、犀角の密輸の拠点であるモザンビーク両国は、今後1ヵ月、もしくは将来の活動へ向けて、進展を示すことを、ワシントン条約締約国会議で、強調しなければならない。

2013年02月21日
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