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【ボツワナ、カサネ発 2015年3月25日】
25日カサネ(ボツワナ)に会した首脳や大臣を含む31カ国の政府代表は、世界的な密猟の危機への対策強化の決意を新たにするとともに、かつてない程に急増する違法な野生生物取引に対抗するための重要な施策を新たに採択した。
この会合の中で参加国政府は、昨年2月に開催された「野生生物の違法取引に関するロンドン会議(London Conference)」以来の進捗状況を報告した。ロンドン会議では、ゾウ、サイ、トラといった象徴的な種の存続のみならず国家安全保障や持続可能な開発までも脅かしている野生生物犯罪と闘うため、41カ国(+EU)が緊急かつ断固たる行動を取ることに合意している。
昨年の主な成果としては、特にアフリカ地域での法執行活動の強化により象牙の押収件数が上昇したことのほか、いくつかの国々が野生生物に関する国内法の改善に着手していることなどが挙げられた。先月は、アジアのトラ生息国13カ国が、密猟ゼロ政策の枠組みとツールキットの活用を約束した。これらは、密猟を抑制するための青写真として世界中で利用可能なしくみとして重要なものだ。
「各国政府は、どのようにロンドン宣言の誓約を具体化し、また、任務をやり遂げる決意を強めているかを、ここカサネで表明した」と、トラフィックの代表スティーブン・ブロードは言う。
カサネ声明は、ロンドン宣言の誓約にもとづいてつくられ、違法な野生生物製品の市場を根絶し、効果的な法的枠組みや野生生物犯罪に対する抑止力、法執行の強化、持続可能な生計の支援を目指している。
参加国は、マネーロンダリングと野生生物犯罪における資金の流れに焦点を当てた多数の追加施策も採択した。
「犯罪資金面の対策における誓約は大きなものであり、資金の行方を突き、密売組織を打倒するためのメカニズムとなる革新的なステップである。それは、執行活動をしばしば弱体化させる汚職を一掃するのにも役立つはずである」と、ブロードは言う。
声明は、関連するコミュニティの参加や、現地の人々による野生生物資源から得られる利益の適切な保持の必要性も訴える。また、参加国は、物流や輸送関係の企業を含む民間セクターとのさらなる連携も合意した。物流・輸送企業は、違法な野生生物の流れを阻止できるユニークな立場にある一方で、多くの場合、意図せず違法な野生生物取引の媒介役となってしまっている。
トレードチェーンの消費側においては、違法な野生生物製品の利用者の動機や行動を理解することに注力することが、対策のさらなる推進力になる。
「野生生物の犯罪者は、長年、非常に小さなリスクで多大な利益を得てきた。ロンドンとこのカサネで合意された誓約は、密売人へのリスクを劇的に増加させると同時に報酬を減少させることによって、こうした環境に変革することができる」と、WWFグローバル種保全プログラムのディレクター、カルロス・ドリューは言う。「カサネ声明は、期待の寄せられている野生生物犯罪に対する国連総会決議の採択に向け、重要な支持をもたらすものでもある。決議は、この問題の緊急性をより一層高め、国際的組織犯罪に対抗する協調した世界的な動きを促すものとなるだろう」
強力な国連総会決議は、ロンドンとカサネで得られた誓約の実施をモニターし報告する理想的なメカニズムとなり得る。違法な野生生物取引の削減に向けた国際的な取り組みを長期的に成功に導くためには、不可欠な要素である。
「ロンドンから1年が経ち、その流れはゆっくりと野生生物犯罪者に不利に動いているが、密猟のレベルは未だに極めて高く、さらなる対策が緊急に必要とされる」と、ドリューは言う。「重要な進展が見られる一方で、各国政府が対策の拡大を継続し、これらの誓約を明確な結果につなげるために協調して取り組まなければ、違法な野生生物取引との闘いに勝つことはないだろう」
カサネ会議参加国:アンゴラ、オーストリア、オーストラリア、バングラデシュ、ベルギー、ボツワナ、カメルーン、カナダ、中国、コロンビア、エチオピア、フランス、ガボン、ドイツ、日本、ケニア、マダガスカル、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、オランダ、南アフリカ共和国、スイス、タンザニア、アラブ首長国連邦、ウガンダ、英国、米国、ベトナム、ザンビア、ジンバブエ
【ロンドン会議(The London Conference)】
英国政府が各国の政府関係者に呼びかけ、違法な野生生物取引を撲滅させ、世界で最も象徴的な種を絶滅の脅威から保護するための対策を話し合う国際的な会議をロンドンで開催した。(2014年2月12日、13日)
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