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「ルーツをたどれ!ワイルドライフ」開催報告:種の保存法改正の必要性についてなげかける

2010年01月04日
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28日の東大で開催されたシンポジウムの様子©TRAFFIC East Asia-Japan
28日の東大で開催されたシンポジウムの様子©TRAFFIC East Asia-Japan

 世界での有数の野生生物の輸入国である日本。たくさんの野生生物を世界の国々から持ち込んでいる日本は、世界の生物多様性の保全に対して大きな影響力を持ち、大きな責任を負っている。来年名古屋で開催される生物多様性条約の締約国会議を前に、日本が世界の生物多様性を守るリーダーシップをとるにふさわしい体制を整えるにはどうしたらよいか、法律整備の面から考えるセミナー(11月27日)とシンポジウム(11月28日)を開催した。

 輸入される野生生物の国内取引に焦点をあて、野生動植物の取引に関する日本の法律「種の保存法*」の改正の必要性について確認する会議となった。


米国の野生生物に関する法体制や執行の実例を紹介する米国政府・魚類野生生物局・管理当局部門長のクレイグ・フーバー氏 c TRAFFIC East Asia-Japan  
米国の野生生物に関する法体制や執行の実例を紹介する米国政府・魚類野生生物局・管理当局部門長のクレイグ・フーバー氏 c TRAFFIC East Asia-Japan  

 講演は、トラフィック、環境省から、問題提起と日本の現状報告からはじまった。続いて、米国魚類野生生物局から、ユニークな考え方をもとに、海外から輸入される野生生物に対しても独自の法体制整備についての報告があった。

 東南アジアのIUCN環境法委員会のメンバーであるアズリナ・アブドゥラ氏からは、日本と野生生物の取引上強いつながりのある地域として、また、守るべき豊かな生物多様性を保有する地域として、その法体制と施行状況についての報告があった。

 また今回は、米国のジャーナリストで世界の爬虫類の取引の事情通であるブライアン・クリスティ氏(『Lizard King』著者)からの、世界の爬虫類取引表事情・裏事情についても報告があった。

 さらに日米の環境法を研究する上智大学の畠山教授による日本の野生生物法に関する発表があり、最後にWWFジャパンの草刈が、法改正の必要性について体系的に説明がされた。聴講者には改正が必要だという強い印象を残した。


 
  シンポジウムの質疑応答では、「野生生物取引」「生物多様性」「法体制」についての活発な質問が途切れることなく出され、発表者と参加者とで具体的な情報を交換することができた。

 シンポジウム出席者の声(アンケート)からは、野生生物取引に関する法律について知ることができた、種の保存法改正が必要であるとの意見が多かった。そしてまた、情報入手だけではなく、会場の熱意に影響を受けた、という声も多く聞かれた。

 トラフィックでは、この2日間の結果をまとめ、日本の野生生物の取引が、種の存続にとって有害なものにならないよう、世界の生物の多様性を守る役割を担えるものとするための実質的な一歩にしたいと考えている。


ブライアン・クリスティ氏のビデオによるプレゼンテーション
c TRAFFIC East Asia-Japan 急遽司会者として参加し、場を盛り上げてくれた吉本芸人の井上マーさん
c TRAFFIC East Asia-Japan
ブライアン・クリスティ氏のビデオによるプレゼンテーション
c TRAFFIC East Asia-Japan
急遽司会者として参加し、場を盛り上げてくれた吉本芸人の井上マーさん
c TRAFFIC East Asia-Japan

*正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」。




**************************************************
【シンポジウムではこんなことが話された】


 ここでは、シンポジウム当日の講演者の内容について、少し詳しく説明する。

 
  シンポジウムの様子cTRAFFIC East Asia-Japan
 
  ペットとして取引される爬虫類cTRAFFIC East Asia-Japan
 
  講演者の発表cTRAFFIC East Asia-Japan
 
  ブライアン・クリスティ氏によるビデオ・メッセージcTRAFFIC East Asia-Japan
 
  米国魚類野生生物局のクレイグ・フーバー氏cTRAFFIC East Asia-Japan
 
  質疑応答が活発におこなわれた
cTRAFFIC East Asia-Japan

■「日本の現行法体制への提言」
石原明子
(トラフィックイーストアジアジャパン代表)

 トラフィックがこれまでに蓄積した野生生物取引に関する調査からの法体制整備支援への取組み、体制や姿勢を説明。またこの会の開催された大きな目的である、種の保存法改正についてトラフィックの提言の発表をおこない、会の皮切りの問題提起とした。


■国内の希少野生動植物の取引規制について
中島慶次氏
(環境省自然環境局野生生物課 課長補佐)

 本シンポジウムの検討・議論の大前提として、野生生物の取引に関わる日本の現行の法体制について解説。ワシントン条約と種の保存法がどのように関わるか、どのような種が規制や管理の対象となるのか、法律の構成や定められている罰則について説明し、検討の土台を提供した。


■日本の野生生物市場とその法体制
金成かほる
(トラフィックイーストアジアジャパン プログラムオフィサー)

 世界の生物多様性に恩恵を受ける日本の市場情報を共有するため、ペットとして取引される爬虫類の事例調査報告を例に、日本の野生生物市場の現状を述べた。東南アジアを原産とする多種多様な爬虫類の販売状況から浮かび上がる問題点を指摘し、その市場を規制。監視している法律の改善の必要について述べた。


■ビデオ・メッセージ
ブライアン・クリスティ氏
(米国ジャーナリスト・世界的に暗躍する爬虫類の密輸業者とそれを追う米国魚類野生生物局のある捜査官の物語を描くThe Lizard Kingの著者)

 ビデオメッセージとして、世界の生きた爬虫類取引の具体例を紹介、生物としての法体制の整備が進まない爬虫類を「合法的」に取引する影に他の生物種の違法取引が潜んでいる危険性や、暗躍する中心人物たちが経済的にも世界に影響を及ぼし、日本もそれに一役買っているという現状を具体例とともに発表した。各国がそれに対して協調して法整備を進めるべきであるなど提言も述べた。


■米国における野生生物取引の法規制
クレイグ・フーバー氏
(米国魚類野生生物局 管理当局 運営部門 部門長)

米国レーシー法、絶滅のおそれのある種の法(ESA)の目的や特性、罰則などを解説するとともに、実際の判例や法執行の実例のエピソードなどを紹介。特に、輸出国の法律をも執行の対象とし、また法律の条文を認知していなくても、その行為を行っているという認知があれば法執行がおこなわれるなど、レーシー法の執行の仕組みに関して具体例をまじえて発表。日本とは異なる法システムの整備について興味深い示唆を提供した。


■東南アジアの野生生物法:法執行と課題

アズリナ・アブドゥラ氏
(マレーシアマラヤ大学マレーシア民俗学センター研究員、IUCN環境法委員会メンバー(法律家))

 日本と野生生物取引で関係の深い原産地域である東南アジアから、タイ、マレーシア、インドネシアの法体制整備状況について報告。近年整備が進められているこれらの国々の野生生物法の仕組み、罰則などを発表した。法律の整備だけでなく、それに対して財政的支援や能力開発支援、市民参加など、効果的な法執行が伴うような施策をとらなければ、片手落ちであるという考え方について各国の実例を基に発表し、効果的な運用について提言した。



■日本の野生生物関連法の可能性と限界

畠山武道氏
(上智大学大学院 地球環境学研究科教授)

 日米の野生生物法の違いからみた、日本の野生生物法の特性について講演。法体制の整備には科学的、生物学的評価の迅速な反映や、地域的な保全体制の検討が必要であると指摘、また市民を含む多様な参加者による法律立案や執行について日本の現行法で改善の余地があるとし、現状の日本の法体制の限界と今後の可能性について示唆した。


■なぜ今、「種の保存法」の見直しが求められるのか

草刈秀紀氏
(WWFジャパン 事務局長付)

 種の保存法は、生物多様性条約の国内措置をおこなう法律の中で唯一、抜本的な見直しがされていない。野生生物の違法な国際取引を削減するという意義においてもより実効性を高める必要があるとの発表をおこなった。2010年の同条約締約国会議(名古屋)の議長国として、生物多様性基本法に基づき同法を改正し、日本が提案するポスト2010年目標を態度で示す必要があるのは今である、との発表をおこない、課題の緊急性を示した。


2010年01月04日
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