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スローロリス密輸事件

2007年06月01日
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070601slowloris.jpg スローロリスNycticebus coucang
© WWF-Canon / Mikaail KAVANAGH

【トラフィックイーストアジアジャパン発 2007年6月1日】

 2007 年 5 月、タイから日本へスローロリス属 Nycticebus のサルを違法に持ち込もうとし、東京税関成田税関支署で押収されるという事件がおきた。持ち込まれた 40 頭という頭数は、スローロリスの日本への密輸として一度にみつかった頭数では最多である。

 スローロリス属のサルは、南・東南アジアに生息する夜行性の小型霊長類である。野生の生息数など明らかにされていないことも多いが、同属で 3 種知られているうちの 1 種、ピグミースローロリス(レッサースローロリス) Nycticebus pygmaeus は IUCN のレッドリストで VU (危急種)に分類され、絶滅が危惧されている。

 スローロリスを海外から日本へ違法に持ち込もうとする事件は、 2006 年以降目立っている。トラフィックイーストアジアジャパンの調べで、 2006 年以降に日本向けに密輸しようとして日本や出発地の空港などで押収されたスローロリスは、今回の事件を含めわかっているだけで約 140 頭に達している。また、それらのケースすべてにおいて、輸出国はタイとなっている。スローロリスは日本国内でペットとして販売されており、 1 頭あたりの小売価格は、スローロリス N. coucang で 10 万円~ 40 万円、ピグミースローロリス N. pygmaeus で 15 ~ 38 万円である(トラフィックイーストアジアジャパン調べ)。

 本年 6 月 3 日よりオランダで開催される第 14 回ワシントン条約締約国会議で討議される議題のひとつとして、スローロリス属全種を、従来までの附属書Ⅱからもっとも厳しい附属書Ⅰへの掲載へと改正する提案がカンボジアから提出されている。附属書Ⅰへの掲載が採択されると、原則的に国際取引が禁止となる。今回の事件はその議論の矢先に起きたこともあり、関係者に波紋を呼んでいる。

 なお、日本では感染症予防のため、ペットとして販売するための生きた霊長類は輸入してはならないことになっている。そのため、附属書Ⅰ、Ⅱにかかわらずペット取引のため生きたスローロリスを海外から日本国内に持ち込むことは認められていない。

2007年06月01日
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