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【2005年9月6日 インドネシア、カリマンタン発】
野生生物の取引を監視するトラフィックと国際自然保護団体WWFによれば、カリマンタン島(ボルネオ島のインドネシア側)では、多数のオランウータンが 毎年殺されたり、捕獲されたりしている。トラフィックのレポートが本日発表されたのは、ユネスコのキンシャサにおける大型類人猿保護プロジェクトという多 国間会議に合わせるためである。この傾向が続けば、オランウータンたちの絶滅に向かう動きには、歯止めがからないであろう。(注:オランウータンには、ボ ルネオオランウータンとスマトラオランウータンの2種いる)
このレポートによると、野生生物市場などから2年にわたって集められたデータに基づいて言えることは、カリマンタンやジャワ、バリだけをとっても、カリマ ンタン生まれの200~500個体ものボルネオオランウータンが、毎年取引されているという。大多数は若い個体であり、ペット用に捕獲されている。毎年、 死んだり捕獲されたりするオランウータンの総数は多いと思われる。
カリマンタン島のオランウータンの総数はわずか40,000頭と推定されているが、野生のオランウータンを、毎年そんなにも同島から移送してしまうことは、絶滅へ向かわせるものである。
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レポートによると、過去15年間にカリマンタン島におけるオランウータンの取引は減少していない。そしてまた、多くのテナガザルとオランウータンが、この10年間にカリマンタン島で当局によって没収されているが、今日にいたるまで起訴された者はいない。ジャワで売られているオランウータンの価格は、1頭あたり平均して400USドルであり、カリマンタン島のハンターに支払われる引取り価格の2~3倍にあたる。
「これは驚くべき事実である」とトラフィック サウスイーストアジアの事務局長を務めるジェームス・コンプトンは述べる。「政府の野生生物保護法制の目標とするところと、現実に起きていることとの間には大きなへだたりがある」。
トラフィックとWWFでは絶滅の危機に瀕する野生生物種を保護する法制度のより厳格な実行をインドネシア政府に求めている。この法の下では、オランウータ ンとテナガザルは「保護されるべき種」に分類されており、捕獲したり、殺したり、所有したり、取引したりといったことを禁止している。
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「オランウータンのように保護されるべき野生生物を所有しているところが発見されたら、その人は起訴されるべきである。他の者への警鐘となるように、そ のようなことをすれば起訴されるのだとみなに知らせるために」とWWFの野生生物種保護プログラム担当のスーザン・リーバーマンは述べている。「私たち は、法の執行官に至急アクションをとることを要求している。また、一般市民にも、保護すべき野生生物を飼ったり、購入したりすることは犯罪であり、罰せら れずに済むことはないということを広く知らせるべきであると、インドネシア当局に求めている」
オランウータンとテナガザルは、ペットとしての尽きない需要を満たすために狩猟がなされ、取引されるのに苦しんでいる。それに加えて、森林伐採や農地開拓、森林火災による生息地としての森林の喪失という現実にも苦しんでいるのである。
・ レポートダウンロードできます。
「 Hanging in the Balance: An Assessment of Trade in Orang-utans and Gibbons on Kalimantan, Indonesia」
・ 関連レポートもダウンロードできます。
「In Full Swing, An Assessment of Trade in Orang-utans and Gibbons on Java and Bali, Indonesia」 2005年6月発行
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