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アフリカの象牙の国内取引の取り締まるための行動計画には大きな後押しが必要

2005年07月06日
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050627Ivory3.gif エジプトの象牙加工者、2005年
© Esmond Martin

【ジュネーブ、スイス】

 アフリカの国々が大陸規模の行動計画を発表したのち8ヵ月が経った。この計画は国際的な象牙取引の管理のうち、各国内の象牙市場を厳しく取り締まるためにもっとも重要なものである。しかし、アフリカ全土で規制がない市場が開かれ、象牙が取引され続けていることがトラフィックの新しい調査で明らかになった。

 トラフィックとWWFは、6月27日~7月1日の間ジュネーブに集まるワシントン条約の常設委員会のメンバーが行動計画を強化しアフリカゾウ保全を大きく支援することを期待している。この行動計画は昨年10月にバンコクで開かれた締約国会議の中で合意されたものである。

 アフリカの地元の象牙彫刻家の年間生産量を満たすためには、4,000~12,000本のゾウの牙が必要とされる。また実質的にはこの象牙のすべてが違法で非持続的な出所からきている。ワシントン条約の行動計画は、すべてのアフリカゾウの生息国に対し、彫刻家や製造者から小売業者を通じて最終消費者への流れを厳しく管理するか、あるいは完全に取引を中断させることを求めている。

 
050627Ivory4.gif カイロのハンハリーリ市場では、エジプト内でもっとも多くの象牙の品が売られていた。その数はおよそ4,000点。エジプト人がこれらを買うことはめったにない。© Esmond Martin

 エジプトには野生のアフリカゾウはいないが、過去にはアフリカでもっとも大きな国内市場のひとつを抱えていた。7年前よりはその象牙市場の繁盛ぶりもおさまってきたが、効果的にゾウの保全をおこなおうとする努力にとってはいまだ大きな脅威である。トラフィックが新しく公表したレポート「No Oasis: Egyptian ivory trade in 2005」によると、2005年3月~4月エジプトの3つの都市で合計10,000以上の加工された象牙の製品が入手可能であったことを報告している。これは1998年の半分のレベルである一方、この取引でもまだ310~875頭のゾウに相当する。

 エジプトは、アフリカゾウの生息国ではないためワシントン条約行動計画の対象となっていない。しかしトラフィックとWWFは、ワシントン条約常設委員会に対し、行動計画の対象とする国の一覧にエジプトを加えるよう提案している。

 「エジプト政府は確かに自身で改善してはいるが、ワシントン条約の監視プロセスへ参加し、説明責任を果たすことが、事態を早期に改善するにあたって重要なステップになるだろう」とアフリカのトラフィック・プログラムの事務局長、トム・ミリケンは言う。「エジプトの法執行データによると、2,000を越える押収された生牙と加工象牙の80%以上がスーダンを出所としていることを示している。スーダンは、今年はじめに象牙の国内取引が増えていると報告された国である」

 
050627Ivory2.gif エジプト政府の保管室に保管されている押収された象牙製品や象牙、2005年 ©Tom Milliken

 トラフィックとWWFはまた、モザンビークが自国の象牙市場を効果的に管理する対策がとれないなら、モザンビークとのすべてのCITES対象種の輸出入を一旦停止することを求めている。トラフィックの調査員は今月のはじめ、マプト国際空港の出発ラウンジにある免税店で500以上の象牙製品が売られていることを記録している。こういった取引はあからさまなワシントン条約違反であり、過去にモザンビーク当局は行動に失敗している。

 「モザンビークは、このワシントン条約違反を止める機会がたくさんあったにもかかわらず、これらを無視してきた。何のとがめもなく象牙の違法取引を許しつづけてきたのである。いまこそ断固たる行動をとり、真実のメッセージを送るときである」とミリケンは言う。

 今春、トラフィックがエチオピアでおこなった調査で、象牙取引の規模が大幅に縮小していることがわかった。82店のうちわずか5店だけが計78の象牙製品を売っていた。これは注目に値する。なぜならエチオピアはアフリカのもっとも大きな無規制の象牙市場であったし、昨年トラフィックは3,500以上の象牙製品が売られているのをみているのである。

 
050627Ivory.gif 象牙でできたツタンカーメン王の胸像©Tom Milliken

 「エチオピアは、国境地点や市場内での法執行の強化やETISへの報告や参加状況の改善など、一連の行動への着手をゆだねるに値する。」

 「2004年初頭からの国内取引の取り締まりをおこなうという一致団結した努力は、能力強化に対する比較的小さな投資でいかにして有効な執行努力のてこ入れに手助けできたかということを実証している。エチオピアがとった協調的な行動は、続く国々にとってすばらしい見本である」とWWFアフリカゾウ・プログラムのピーター J. スティーブンソン博士は言う。「トラフィックとWWFは、ワシントン条約の行動計画を施行し、違法な国内象牙市場をなくすための能力強化へ支援が必要なほかの国々にも同じような支援をしていく。」

●レポート「TRAFFIC Online report No10 titled No Oasis: Egyptian ivory trade in 2005」の全文がダウンロードできます。

◆詳細に関するお問い合わせ
・Tom Milliken, Director of TRAFFIC East/Southern Africa: 27 June 05 onwards (during the CITES Standing Committee), mobile: +44 777 582 7343 (or in Harare, Zimbabwe tel. +263 4252533, email: traffic@wwf.org.zw)
・Maija Sirola, TRAFFIC International, tel. +44 (0)1223 277427, email: maija.sirola@trafficint.org

2005年07月06日
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