
日本にとって、中国に次いで第二番目の薬用植物供給国であるインド。
インドから輸出される薬用植物は、9割以上の種が野生から採集されているといわれています。
また、この国ではアーユルヴェーダをはじめとした地域に根付いた伝統医療に、薬用植物が重要な役割を果たしています。
持続可能な野生植物の利用に関心がある、野生植物を取り扱っている日本企業の方々と2012年2月6日〜11日に現地を訪問してきました。
©トラフィックイーストアジアジャパン
最初に訪れたのは、バンガロールから30kmあまり西にいったサバンドゥルガ(Savandurga)という場所です。
ここには野生植物保全区域(Medicinal Plant Conservation Area:MPCA)があります。
この区域の中ではどのような植物も採集してはなりません。近隣の地域で利用されてきた薬用植物として、どのような薬効を持つどのような植物がどこにどのくらい生育しているか、その研究が進められています。
保全区域の入り口には説明書きが掲げられている
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MPCAに一歩踏み入れれば、そこは薬用植物の宝庫です。
歩いていく道すがら、地元で利用される植物にもっとも詳しい専門家の方に案内をしていただきました。地域の200種の植物とその効能を同定した方です。あのつる植物は肝臓の病気に、あの多肉植物は骨を怪我したときに、あの低木はオイルにしてフケ予防、あの木の皮は・・・・など話は尽きません。
いつ、誰が見つけたのでしょうか。途方もない試行錯誤があったのではないかと、想像が膨らみます。
また、どの季節に、その植物のどの部分を、どのように収穫するのが一番効果がある、といったこともこと細かく教えてくれました。
まさに森は植物とともに、伝統的な知識の宝庫でもあると実感します。
上:この地域の薬用植物にもっとも詳しい専門家から説明をうける
下:薬用になるツル植物
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バンガロールに本社を構える、薬用植物の加工、精製、販売や輸出をおこなうナチュラルレメディーズ社(Natural Remedies Pvt. Ltd.)に訪問、、植物を利用・供給する企業のご意見を伺いました。
この企業では、薬用植物を利用した薬、動物薬などを生産しています。また充実した研究施設を保有し、植物からの有効成分の抽出・精製や、関連研究論文の発刊などをおこなっています。
また生産企業側の重要な質問として、「日本の企業は持続可能なかたちで得られた植物に対して、それだけの対価を払う準備があるのですか?」と問いかけられるなど、企業同士ならではの、植物利用に関する現実的な議論もおこなわれました。
上:薬用植物を利用する企業同士の意見交換
下:科学論文なども豊富に出版
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続いてバンガロールの北にあるアーユルヴェーダ・統合医学研究所 (I-AIM)を訪問しました。
ここはインドの伝統医療とそれに用いられる植物に関する情報が集積されています。専門家や伝統医師を擁し、施設内には伝統医療に基づいた治療や処方を行う専門病院もあります。
薬用植物について生物学的・化学的な調査を行う研究所、インド全土から集められた植物の標本保管庫などは圧巻です。
専門家の方々からは、インドの植物流通や伝統の保全への取り組みを紹介してもらい、日本企業からもそれぞれどのような植物を、どのような形で利用しているか、紹介しました。
上:様々な植物標本がインド全土から集められる
左下:植物標本の書庫
右下:I-AIM施設内にある伝統医療に基づいた治療を行う病院
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I-AIMには薬用・アロマティック植物園もあり、薬用植物に関する生態学的な研究もおこなっています。
またI-AIMは地域の人々が庭で薬用植物を育て、健康管理などに役立てることを推奨しており、地域の人々に配るために様々な薬効のある苗を育てています。
植物の利用が地域の人々にとって欠かせないもであるゆえの活動であるといえます。
このような活動を見て、日本からの参加者は感銘を受けていたようです。
(後半へつづく)
上:施設内では薬用植物の苗も育てています
下:苗は地域の人々に配られる
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このウェブページは経団連自然保護基金のご支援により制作されました。
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