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インド訪問記 持続可能な採集の現場を訪ねて(後半)

インド訪問記 持続可能な最終の現場を訪ねて(後半) フェアワイルドとは

地域で採集された植物の集積所

場所をバンガロールからマドゥライMaduraiに移しました。

近隣の地域の人々によって採集された植物を集積するのは、コベント開発センター(Covent Centra for Development: CCD)という場所です。

ここに、個人が採集した植物が集められ、一定量がたまった時点で出荷します。日本でいう、農協のようなものでしょうか。

ここは薬用植物の保管場所の提供だけでなく、地域コミュニティへの研修なども行っています。ひとつのコミュニティでの成功事例を、そのコミュニティが主体となって他のコミュニティに波及させていく、というとても良い効果が生まれているそうです。

CCDはその媒体としての役割を担う重要な場所です。

地域で採集された植物の集積所

上:採集してきた植物を天日干し、袋詰め
下:一定量が集まったら出荷
©トラフィックイーストアジアジャパン

CCDは当初は雇用促進や子ども、女性のために設立されたNGOだそうです。今では、人々の健康、そして収入にとって重要な薬用植物の持続的な採集と製品の生産もサポートしています。

CCDには、重要な薬用植物の標本や資料なども保管され、ここに有用な植物が生育していた証を残しています。
また、牛糞からメタンガスを収集する装置を開発していて、ここで集められたメタンガスは料理用の燃料として既に活用されています。

地域で採集された植物の集積所

標本やサンプルを収蔵する倉庫
©トラフィックイーストアジアジャパン

ディンディガル林業管理局への訪問

マドゥライMaduraiの北、ディンディガルDindigul地域の森林管理局を訪問しました。数人のオフィサーに付き添われながら、持続可能な採集が行われている森とコミュニティを見に出かけます。

ディンディガル林業管理局への訪問

林業管理局長より、地域の植物管理について伺う
©トラフィックイーストアジアジャパン

野生植物を採集しているコミュニティでは

ディンディガルDindigulの森林局が管理しているSirumalaiの森林地域を訪問しました。

この地域は完全に保護された森の資源の豊かな地域で、周辺の森林には住人以外が立ち入ることが制限されています。出迎えてくれた、野生植物を採集する女性が制服とおそろいの帽子をかぶっています。
これは、森に入り、管理された持続可能な方法で植物を採集することが許されている、地元コミュニティの人である証です。そんな風にして森を自分たちで管理しているのです。

薬用植物の採集はこの地域の人々にとって重要な収入源。
今の季節には、写真にある5種類の薬用植物が採集できるそうです。枝を注意深く残して葉だけ採取する、花が咲いた後にだけ採集する、など持続可能な採集の「コツ」を教えてくれました。

写真は、Gymnema sylvestre, Cissus quadrangularis, Phyllanthus amarus, Ocimum vasilicum, Andrographis panicalata

野生植物を採集しているコミュニティでは

上:今日採集してきた植物について紹介してくれる地元の採集者
下:見せてもらった5種の植物
©トラフィックイーストアジアジャパン

ラクシュミ・セバ・サンガムLakshmi Seva Sangam
(女性が運営する薬用植物加工センター)

森から集められた薬用植物を加工し、製品にするまでの工程をおこなう加工工場にもお邪魔しました。

Lakshmi Seva Sengamは、女性が運営する薬用植物加工センターです。
一日かけて森でつんできた植物を、乾燥させたり切ったり煮たり、適切に加工します。

ここでは女性が主役。それぞれが得意分野を活かせるよう、個性を活かしながらさまざまな工程を分担していると、案内をしてくれた担当の方が話してくれました。

Lakshmi Seva Sangam

上:新鮮な葉をカットする
下:袋詰め、箱詰めなどの作業
©トラフィックイーストアジアジャパン

加工された薬用植物は最終的に包装され、出荷を待つのみ。製品のバリエーションも豊かです。野生植物からこれだけの種類・量を生産できるとは、森の恵みとは偉大なものです。

品質管理も厳しくおこなわれています。日本企業からの参加者も、その手法や機器に興味津々の様子。

Lakshmi Seva Sangam

多種多様な薬を野生の植物から製造している
©トラフィックイーストアジアジャパン

訪問を終えて

訪問を終えて

コミュニティーの面々と日本企業の参加者
©トラフィックイーストアジアジャパン

野生植物の地域での利用が生活に根付いているインド。薬用植物に実際に関わる人々に直接話を聞き、採集されている植物を見たり触れたり、味わうことにより、野生植物の重要さ、持続可能に利用することの大切さをより実感できました。
日本企業からの参加者も、現地の方々との直接の情報交換に大いに刺激を受け、野生植物の恩恵を受ける消費国としても、生産地域の人々が主体的に力を持つことが重要だということに気づかされたようです。
輸入国、消費者として、この現実に対して何ができるのか、大きなアイデアを得るたびとなりました。消費国日本の企業が主体となり、持続可能な植物を実現していく確実な一歩となりました。

※このフィールド訪問は、経団連自然保護基金のご支援によるプロジェクトの一環として、2012年2月に実施されました。

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