
ホーム>人とクマとクマノイと
日本は豊かな森に恵まれてきました。しかし、近年は自然林や広葉樹林の割合が減ったこともあり、第二次大戦後の拡大造林政策で、生き物にとってはすみづらくなってきました。そんな中にクマがいるということは、まだ豊かな森が残されている証拠。クマがいれば、森がある。森があれば、他の生き物もいる。もちろん人も。クマ一頭の後ろには実に豊かな自然の営みが見えかくれしています。
● 野生のクマを管理する新しいシステムをつくろう。 |
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→たとえば、住民、ハンター、地方行政担当者、環境省(保護などの関係)、農林水産省(農作物被害などの関係)、厚生労働省(薬事法などの関係)、クマ研究者、自然保護活動家の代表が集い、クマを捕殺した数が把握できるシステムや、クマノイを業者や消費者が売ったり買ったりするまでの動きがわかるようなルールと仕組みを作る。
● クマの部分製品(主にクマノイ)の国内の取引をチェックし、必要に応じて規制しよう。 |
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→たとえば、日本でハンティングや有害駆除で捕殺されるクマも「種の保存法」のリストに加える。さらにクマノイを「種の保存法」の「器管」「加工品」に指定し、クマノイの取引チェックを法的におこなおう。そして密輸や密猟されたものを市場からなくす。取り引きされる以上はクマノイが公正に利用されるようにしよう。
● クマとクマをとりまく自然と人々の生活の関係についてもっとよく考えよう。 |
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→たとえば。森とクマは切っても切れない特別な仲ですが、森の恵みを受けるのはクマだけではありません。かつては森の恵みを分け合うパートナーだった人間とクマですが、いまや共に生きていくことが難しくなっています。現状をよく理解し、これから共存していくために何が必要かみんなで考えてみませんか。
トラフィックジャパンはいろいろな提言を日本政府におこなっていますが、とくに大きな柱のひとつとして、クマノイの取引のルールをきちんとつくることにより、クマを守る手段にしたいと考えています。
クマを取り巻く現状は厳しいです。でも同時に、クマによる農作物の被害を受けたり、からだを傷つけられたり、子どもの通学路にクマが出やしないかと心配している地元の人々も、かなり困っています。
「クマなんて、いても価値がない。クマなんていらない」
そう思いたくなる気持ちも、その人たちの立場に自分を置き換えてみたら、十分わかります。
でも、そう思われてしまうと、クマは日本で生き残っていけません。
野生生物のクマを、ただのクマノイ製造工場として考えるわけにはいかないけれど、クマと生活圏が密着している地元の人々や、昔からクマノイを売買しているのが当たり前だった人や、薬として大切に使っていた人みんなから「やっぱり日本に昔どおりクマがいてくれた方がいいな」と思ってもらえることが、共存のための第一歩だと考えます。
そのためにも、クマノイを正しく管理し、公正に流通させる。反対に、闇ルートでは取り引きさせない。それが、クマにとっても、ヒトにとっても、よい結果をうむことにつながるでしょう。クマとヒトが、地元で支え合っていけるような日本に変えていきましょう。