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ニュースで見るけど、最近どうしてクマは人間のいるそばに出てくるの?

 2004年は、ツキノワグマとヒトの遭遇事故が、頻発した年でした。噛みつかれたり、引っかかれたりするケガの事故だけでなく、死亡事故も起きてしまいました。2004年の6月~11月初旬までに日本全国でクマによる人身事故は100件以上。目撃情報も前年に比べて増加しました。そして、2004年の1年間だけで、約2,200頭のツキノワグマが有害獣として捕獲され、そのほとんどが殺されました。その後の2006年もまたツキノワグマとヒトとの遭遇事故が100件以上起き、約4,800頭以上が有害獣として捕獲され、その約9割は殺されました。


予想される出没理由その1

《異常気象や台風、害虫などの影響でその年の食べ物が不作だったから》

 ツキノワグマの主食であるブナやミズナラの実(ドングリ)が不作になると、冬眠を前にして、食べ物に困ったクマ、とくに山でじゅうぶんに食べ物をとることがまだ上手でない若グマや行動的なオスグマが人里に降りてきてしまうことが多いといわれます。ちなみに今回実際に捕獲されたクマは、8割程度が成獣で、若い個体は少なかった。



予想される出没理由その2

《近年、里山の荒廃により、クマとヒトの生活圏が隣り合わせになりつつあるから》

 里山とは、山村の集落や田畑周辺の山林のことで、かつては薪をとるためなどに利用していた場所。下草刈りや木の間伐など適度に人の手によって管理されていたので、見通しがよく、基本的に臆病なクマはわざわざ危険を冒してまで、里山には入ってこなかった。このようにクマとヒトのすむ場所のちょうど中間に位置していた里山が、お互いの緩衝地帯になっていたため、クマは里山を越えてまでヒトのすむエリアに近寄らなかった。けれども、近年、山村の高齢化や、薪の需要がなくなったことなどから、里山を従来のように管理する人間がいなくなり、荒廃。人里ぎりぎりまでうっそうとした森でひと続きになってしまったので、すぐそばまでやってくるようになり……すると民家のカキや、トウモロコシ畑、養蜂家の育てている蜂蜜箱など、クマが簡単に採れる、おいしい食べ物がひとところに集まっていることを知ってしまった。



予想される出没理由その3

《ヒトもクマのエリアに容易に入るようになったから》

 基本的に、天然の広葉樹林は、開発などにより全体的に減少していたのに、さらにもともとクマが多くすんでいた山林の中を宅地化したり、山菜採りやハイキング、観光、キャンプなどで、ヒトがクマのエリアに容易に入ることが多くなった。そのうえ先人であれば、その地にクマがすんでいることは承知していたし、クマと出会わないようにする知識を持っていたが、いまは「まさかクマがいるとは」と予備知識も持たずに入山してしまう。


 もちろん、そのほかにも考えられる理由はいろいろありますが、明確な因果関係は明らかではなく、今後の保護管理に向けてその原因究明が求められています。いずれにせよ、クマがヒトのそばに出てくるようになったのは、森の生態系に何らかの変化があったからではないでしょうか。日本のクマや日本の森が「SOS!」を発していると考えられます。

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