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クマの価値って何? いなくなったら何が困るの?

クマは、森が健全かどうかの目印

 大型の野生生物が生きているということは、その生態系がバランスよく成立している証し。クマがいるということは、食べ物となる植物や昆虫などもちゃんと豊かに存在するということであり、ひいては森の土や水、空気も健全な状態を保っているという目印なのです。裏返せば、クマがいなくなった森では、そのほかの小さな野生生物も知らない間に絶滅しているかもしれないし、水源が汚染されているかもしれないし、とにかく生態系に異変が起きている状態が心配されます。
  さらに、クマは、地球の財産でもあります。野生生物の種の多様性を守るために、日本のクマは、日本の森にいるまま、私たちの次の世代に引き継いでいかなければいけません。


熊の胆(クマノイ)は昔から大事な薬でした

 
 日本人は古くから、クマを利用して生活してきました。マタギの文化は有名です。毛皮で暖をとり、肉を食べ、熊油(薬用・食用など)など、捨てるところなく、利用したようです。
  でも、今は時代が変わり……毛皮もさほど価値がなくなり、クマ肉を食べなくてもほかに食べられるものが確保されています。
  けれども、現代になっても、なお高い価値をもつのが「熊胆」(ユウタンと読みます)。一般には「熊の胆(クマノイ)」と呼ばれるもので、クマの胆嚢に胆汁が入ったまま乾燥させたものです。大変、苦い薬ですが、薬効成分があります。

 


●クマノイの歴史

 日本は古くからクマノイを利用してきました。江戸時代に入り、売薬が普及すると、日本でも一般に広まり、需要が増加。クマノイの普及に伴い、日本人とクマのかかわりは強くなっていきました。その後も貴重な漢方薬として利用され続け、クマノイの輸出入も盛んにおこなわれました。

●クマノイの現在の利用

 実物のクマノイを見る機会はほとんどないと思われるかもしれませんが、たまに漢方薬局に陳列していることがあります。また、クマノイの形(袋状のものを干したもの)を残していないものでも、小さな結晶のかたまりとして、また、粉の形で他の薬効成分と一緒に健胃薬などとして販売されています。

 その成分のひとつであるタウロウルソデオキシコール酸はクマ類のみが持っているものですが、現在では化学的に合成できるようになっています。こちらの合成品は一般的な市販の胃腸薬に配合されており、かなり身近な存在です。クマがいなければ私たちはこの恩恵を受けることはできなかったわけです。 

 クマノイを含むクマ製品は、ワシントン条約によって国際取引が規制されています。昔と比べると日本の需要は低下していますが、今後も伝統薬としての需要は根強く残っていくでしょう。


●クマノイの効能

 タウロウルソデオキシコール酸を含む。鎮痛、健胃、強心、消炎、胆汁分泌促進などに用いる。富山の猟師の間では、二日酔い、解熱、目薬、歯痛、胃痛など、万病に効くと伝えられました。ちなみにほかの動物の胆に比べて、クマノイの効果はめざましく優れているとのこと。



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