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取引される生き物図鑑:チベットアンテロープ(チルー)

中国のチベット自治区、青海省、四川省、インドのカシミール地方東部の3,700~5,500の高原のステップ地域に生息している。20世紀初頭には約100万頭いたものが、1990年代後半には推定個体数は75,000頭以下となった。その後150,000頭という数も報告されているが、推測によるものであり、依然としてチベットアンテロープの生息域全体での正確な推定個体数の調査が必要とされている。ワシントン条約によって国際取引は禁止。また、中国やインドでは法的に保護されている。

cMartin Harvey / WWF-Canon
(c) WWF-Canon / Ronald PETOCZ
分類 偶蹄目ウシ科
学名 Pantholops hodgsonii
IUCNレッドリスト 絶滅危惧種(EN)
ワシントン条約 1975年に附属書IIに掲載され、
1979年より附属書Iに

■チベットアンテロープの利用
チベットアンテロープの毛は、シャトゥーシュとよばれる高級毛織物に利用されている。チベットアンテロープの毛は人間の毛髪の5~7分の1の細さで、大きなショールでも、 指輪を楽に通り抜けるほど滑らかである。このためかつては年間2万頭のチベットアンテロープが、 密猟の犠牲になったと言われている。

■取引の規制
チベットアンテロープを使ったシャトゥーシュなどの製品は輸入が禁止されている。おみやげなど海外旅行先で購入したものも持ち込み禁止。規制を知らないで購入しても罪に問われる。また、国内での売買等も「種の保存法」によって原則禁止されている。ワシントン条約適用前に取得したものなどで輸入が認められたものでも環境省への登録が義務づけられている。

■日本のシャトゥーシュの輸入
経済産業省がまとめているワシントン条約の年次報告書によると、1994年~2007年の間に日本に商業的に輸入された記録はない。

■シャトゥーシュの違法取引
世界各国での違法事例のほかに、日本国内でも2001年にシャトゥーシュのショールが都内のブティックで販売され、「外為法」および「種の保存法」違反で関係者が逮捕されている。

参考資料
UNEP-WCMC CITES Trade Database, 2010年4月10日閲覧
Mallon, D.P. 2008. Pantholops hodgsonii. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.1. <www.iucnredlist.org>. Downloaded on 13 April 2010.