止まらない密輸 極東ロシア・チョウセンニンジンの押収例


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

ロシアから中国へ向かうバスの荷物から、野生のチョウセンニンジンの根160個が見つかり、ウスリー税関によって押収されました。ロシア沿海地方に自生する野生のチョウセンニンジンは、現在ワシントン条約で商業取引が規制されていますが、密輸は毎年のように摘発されています。国境地帯では、希少な野生植物を違法取引から守る取り組みが行なわれています。

バスで密輸が

2010年6月27日、ロシアのウスリー税関の職員が、国境サービス担当官と協力して行なった捜査で、ロシアから中国に向かうバスから、野生のチョウセンニンジンの根2.5kgが入った2つのポリ袋を発見しました。

チョウセンニンジン(Panax ginseng:朝鮮人参、オタネニンジンとも呼ばれる)は、効能の高い薬の原料として重用される植物。
需要が大きく、過剰な採取が絶滅を招く恐れがあるとして、ロシアに自生する個体群については、ワシントン条約で国際取引が規制されています。

しかし、密輸は跡を絶たず、極東ロシアの沿海地方で取れる野生のチョウセンニンジンは、毎年アジア太平洋各地に売られていると見られています。

「専門家の推定によれば、極東ロシアの南部では、毎年1トン以上の野生のチョウセンニンジンが引き抜かれています」と、極東ロシアのトラフィックプログラムのコーディネーター、ナタリア・ペルブシナは言います。

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極東ロシアの森

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極東ロシアで押収された野生のチョウセンニンジンを調べるトラフィックとWWFの専門家
(C) E.Starostina

不十分な保護措置

国境地帯では、違法に持ち出されるチョウセンニンジンの押収と、それを識別する取り組みが行なわれていますが、問題は跡を絶ちません。

ナタリア・ペルブシナは、現在のチョウセンニンジンの採取率が、持続可能なレベルではない、つまり、いずれ取り尽されてしまいかねない規模になっていることを指摘。さらに、生育地での保全が欠かせないことを指摘します。
「チョウセンニンジンのロシア個体群は、ロシアのレッドデータブックに掲載されていますが、森林(タイガ)地域では、保護されていないままなのです」。

また、WWFロシアのアムール支部で生物多様性保全プログラムのコーディネーターを努める、パベル・フォメンコは、押収されたチョウセンニンジンの処理についても問題があるといいます。
「過去には、お役所的な仕事によって、しばしば押収されたチョウセンニンジンの根が、まだ生存可能だったにもかかわらず処分されてしまったことがありました。私たちは押収された根が素早く野生に返されることを願います」。

今回バスの中で見つかったチョウセンニンジンに関しては、中国人の運転手が事情を説明できなかったことから、刑事罰に問われる可能性があるとみられますが、密輸を水際で取り締まるだけでは、野生のチョウセンニンジンの保護措置としては不十分です。

探知犬の活躍

 厳しい状況の中で、国境の現場では、密輸を防ぐさまざまな工夫も行なわれています。
この6月には、荷物にまぎれて違法に取引される野生生物や、その製品を探し出す助けとなっている、探知犬サービスが2周年を迎えました。

2008年6月、各地域の税関に導入された犬たちは、以来多くの違法な野生生物製品の押収事件に貢献。特別に訓練された犬のおかげで、税関職員たちは、カザンで、ウラジオストクで、そしてブラゴベシチェンで、密輸品の押収に成功しました。

これらの事例で押収されたのは、クマの胆嚢、サイガの角、ジャコウジカの麝香嚢、野生のチョウセンニンジンといった、ワシントン条約にその名が掲載された、取引規制の対象種です。
「ある例では、北朝鮮の男性がジャコウジカの麝香嚢を紙にくるみ、小包にガソリンを振りかけ、それをポリ袋の中に入れ、さらにコンドームに入れていました。しかしそれでも、もっとも嗅覚するどい探知犬の1頭であるグレタを欺くことはできませんでした」とナタリア・ペルブシナは言います。

この探査犬、すでに76頭がすでに現場で活躍しており、さらに26頭が目下訓練を受けています。トラフィックとWWFでは、探知犬プログラムをスタート時から支援、現在も密輸の摘発に協力しています。

 

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